警護専門家が指摘、安倍元首相の警備体制「非常に手薄」
SAT元警視庁警備部特殊部隊員だった伊藤鋼一氏が、今月8日に奈良市内で発生した安倍元首相銃撃事件に関して、警備体制が「非常に手薄だ」として警護上の弱点を指摘しました。
安倍元首相銃撃事件以来、日本の警察の要人警護体制に対する批判や疑問が高まっています。
事件当日、現場では警視庁から専属のSP(警護官)が護衛し、地元・奈良県警の警察官が警護に当たっていましたが、360度が見渡させる場所に安倍氏を立たせながら後方の警戒は脆弱で、人や自転車などが自由に行き来できる状況でした。
こうした状況について、 I&Kセキュリティ・コンサルタンツ代表でもあり、国賓など要人警護の経験を有し、要人警護に詳しい伊藤氏は演説中の警備体制について「今回の警護失敗の最大の理由は、この演説に先立って警察が適切に配置されていなかった配置上のミスにある。非常に手薄だ。見せる警備、見せない警備の二通りがある。それがなされていないのではと思った」と指摘しています。
また「(演説者の)背後に車が通っている。人通りがあるというのは、本来では考えられない。ある程度規制するのは必要だと思う。さらに、安倍氏の最も近くにいる警察官と地元警察の連携がうまく取れていなかった。様々な負の要因が重なり、今回の事件に至った」と語りました。
さらに、「あの時、現場には約10人の護衛が配備されていた。これらの護衛が自らの役割を理解し、周囲をもっと警戒すべく他の護衛と適切に連携していれば、彼らは1発目の発砲を防ぐことさえできたと思う。致命傷となった2発目までは約3秒あり、確実に事件を回避できたはずだ」と述べています。
日本時間の今月8日午前、安倍元首相(67)が奈良市の近鉄大和西大寺駅前で参院選の応援演説中に背後から銃撃され、同午後5時3分に搬送先の病院で死亡しました。
この事件に関して殺人未遂容疑で元海上自衛隊員の無職山上徹也容疑者(41)が逮捕され、10日午前9時ごろ、奈良西警察署から殺人容疑で奈良地検に送検されました。
なお、同日までに、山上容疑者は「母親が宗教団体にのめり込み破産した。安倍氏が団体とつながっていると思い狙った」という趣旨の供述をしていることも判明しています。