低い日本の食料自給率が安全保障上の脅威に、専門家が警鐘
ウクライナ紛争や台湾海峡危機で世界の安全保障環境が厳しさを増すなか、日本が防衛力の強化に転じています。
アメリカ国際情報サイト・ブルームバーグによりますと、その一方で、有識者らは「日本の食料自給率の低さは今や安全保障上の脅威ともいうべき深刻な状況になっている」と指摘しています。
ブルームバーグなどによりますと、2021年度の日本の食料自給率は、カロリー基準で38パーセントと、過去最低の前年を1ポイント上回る低水準にとどまり、1965年の73パーセントであったのと比べると大きく低下しています。
この背景にはパンや肉といった輸入食品・原料への依存度が高まり、日本人の米離れが進んだことが挙げられます。
この問題について、金沢工業大学の伊藤俊幸教授(地域研究)は「政府は国家安全保障に関して何もせず、経済的効率性しか考えていない」とし、政府の食料政策の甘さを批判しました。
また、「これまで政府が水田やその他の耕作地を見限ってきた結果、食料分野における日本の脆弱性はかつてないほど顕著になっている」と指摘しています。
さらに、ウクライナ情勢を背景とした世界的な穀物価格の上昇、肥料不足、燃料などの高騰はが円安と相まって、日本国内の消費者に打撃を与えています。
しかし、もし台湾危機が先鋭化して中国が海上封鎖を行った場合、単なる値上げでは終わらず、日本は食料輸入が途絶えた場合、頼れるものがほとんどないため、今とは比べものとならない状況に陥るだろう、と見られています。
また、東京大学の鈴木宣弘教授(農業経済学)は日本の安全保障を確保するためには、米と小麦の国内生産量を増やすことが重要であると指摘し、「安全保障の観点からは、食料は武器よりも優先すべきだ。腹が減っては戦はできない」との見方を示しています。
安全保障と食料をめぐっては、これまでに自衛隊の九州・沖縄方面での食料備蓄が全く足りていないとも報じられており、日本にとっては対中有事を見据え、弾薬や燃料とともに食料備蓄を増やし、「継戦能力」を高められるかが課題となっているといえそうです。