ノーベル賞常連から脱落する日本
(last modified Sun, 12 Mar 2023 11:28:26 GMT )
3月 12, 2023 20:28 Asia/Tokyo
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    ノーベル賞常連から脱落する日本

複数の調査から、日本は徐々にエリート層を失いつつあり、日本人の科学研究への関心が低下しているとともに、著名な日本人学者は中国人科学者にますます遅れをとっていることが明らかになりました。

日本が最先端技術の分野でより多くのスキルを必要としており、研究者が再び自らを世界の権威ある科学雑誌に紹介すべきことは明らかです。

東京大学大学院工学系研究科の相田卓三教授は、「国際的な高度科学研究ネットワークにおいて、日本はもはや発言権を持っていない」との見方を示しています。アメリカの著名な科学誌の校正理事会のメンバーの1人でもある同教授はまた、「日本の査読研究者は2010年代の約6人から1人に減少しており、この数は中国や韓国の学術機関よりもさらに少ないものである」と述べています。 

 

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こうした中さらに、これまで日本の二大得意分野とされてきた化学と原材料の二つの分野における日本の学術的進出・存在感も低下しています。JST国立研究開発法人科学技術振興機構の発表によれば、2019 年の原材料研究学会の国際会議で講演者として招待された人のうち、日本人は4%に満たず、1996年から急激に減少してきていることが判明しています。

ノーベル賞の登竜門とも呼ばれるイギリスの学術情報会社「クラリベイト・アナリティクス」 によりますと、2022年における日本人HCR高被引用論文著者 (過去10年間の研究者の上位 1% に含まれていた人) は54人となっていますが、これは2014年と比べると半分に減少しています。これほど急激な衰退を示しているのは、主要国では日本だけです。

 

日本と対照的な中国

 

日本のHCR研究者の数が過去10年間で急激に減少した一方で、中国のHCR研究者の数は同期間に4倍に増加しました。ちなみに、オーストラリア人研究者は 3 倍、韓国人研究者は2倍となっています。

日本は1980年代前半から1990 年代前半にかけては、論文の被引用数が上位10%以内と非常に優勢であり、アメリカ、イギリスに次いで第3位につけていました。しかし、2019年には約3800件に減少して突然12位に後退しました。つまり、ピーク時に比べて約20%減少したことになります。

科学者が大きな功績を残してからノーベル賞を受賞するまでには、通常20年から25年かかるとされています。日本は主に1980年代と1990年代の学術的業績により、西暦2000年までにアメリカに次いで2位となる19のノーベル賞を受賞しました。しかし、2010年代以降は研究の大幅な不足により、日本のノーベル賞受賞者は2030年代以降は急激に減少すると見られています。

 

科学面での凋落の原因

 

有識者らの間では、日本における学術研究発展の著しい凋落の原因は政府の予算削減にあると見られています。鈴鹿医療科学大学の豊田長康学長の見解では、学術研究への政府支出が増加している国では、被引用回数の多い研究者の数が増加しているということです。

ここで特筆すべきことは、2004年に日本の国立大学は独立行政法人化し、政府は補助金を年間あたり1%削減し、政府が大学の授業内容・カリキュラムや理事・教員人事に介入できるようになった(or国公私立とわず日本のすべての大学は、文部科学省から委託を受けた日本高等教育評価機構の大学評価判定委員会から、7年に1回以上、大学機関別認証評価を受けることが義務づけられた)ことです。この措置は、研究の質を高めるための競争を促進することを目的としていましたが、時間の経過とともにこの方針が完全に失敗したことが明白化しています。

 

若手学者の状況

 

この状況は、日本の若手科学者にとってさらに悪いものです。25歳から39歳までの若年層が大学の役職に占める割合は、1990年代の30%強だったのが、2019年にはわずか22%となっています。実際、雇用機会が減っていることから、若者は博士号取得を希望しなくなっているのが現状であり、実際に2019年に日本で博士課程を修了したのは約1万5100人にとどまっています。

これに対し、米国と中国では過去20年で博士号取得者数が2倍以上に増加しました。

カリフォルニア大学アーバイン校医学部神経科学・解剖学科准教授の五十嵐啓氏は、「日本の若手研究者が独立研究を行う機会と資金は、アメリカや他の国よりもはるかに限られている」との見方を示しています。

有識者らは、「日本は、大学院博士後期課程の修了後に就く、任期付きの研究職ポジション・博士研究員(いわゆるポスドク)の才能をより有効に活用するために、より魅力的な仕事を創出する必要がある」と評しています。

米国や一部の国では多くの場合、博士号取得者は、学士号を持つ人よりも賃金が高く、福利厚生面でもより優遇されています。これに対し日本では、学位が高いからといってキャリアアップを意味するわけではなく、博士研究員職での研究での一時的・条件付きの仕事を受け入れる研究者の数は、学士号取得者よりも多くなっているのが現状です。

 

政府の取るべき解決策

 

この状況を是正すべく、日本政府は、経済対策の一環として日本の大学の研究力の抜本的強化を狙うため、選ばれた大学から年間22億ドルの運用資金を得るべく、730億ドル(10兆円規模)の大学基金を創設しました。

この基金を運営する機関であるJST科学技術振興機構理事長の橋本和仁氏によりますと、この基金は、日本の研究力を復活させる最後のチャンスだとされています。

 


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