日本防衛省が、C2輸送機への長距離ミサイル搭載を計画
日本の防衛省は、航空自衛隊の輸送機「C2」への長距離ミサイル搭載を進める動きをみせています。
C2は、防衛省技術研究本部と川崎重工業が共同開発した輸送機で、2017年に正式配備されました。110人の人員と20トンの物資を積み、7600キロ飛行できる能力があり、日本の最東端・南鳥島と最西端・与那国島を往復しても燃料が余る計算となります。自衛隊は現在、約15機を保有しています。
防衛装備庁は今年2月にも、「C2輸送機用誘導弾等発射システムの開発に係るデータ取得役務」の公募を行い、2023年度は約36億円の予算を計上しています。時事通信も今月6日、複数の政府関係者の話として、C2に長距離ミサイルを搭載する検討に入ったと伝えており、計画は着々に進んでいるようです。
これまでの防衛省官僚の国会答弁によれば、計画は岸田政権が進める「スタンドオフ防衛能力(相手の射程外から攻撃する能力)」の向上の一環で、ミサイルの発射プラットフォームを多様化して、敵の対応を複雑化させ侵攻を阻止することを目的としています。防衛装備庁が公募した業務には、実際にC2からスタンドオフミサイルに見立てた容器を投下する実験も含まれ、データ収集や分析が行われるということです。
C2に搭載するミサイルは、投下後に空中でエンジンが作動するように設計されたものが考えられています。こうすることで、C2自体の改修は最小限に抑えられることになり、この観点から米国も同じような技術を開発中です。
前述の時事通信の報道によれば、現時点では新たなC2専用の新たなミサイル開発・調達は浮上していません。潜在的な候補となりうるのは、戦闘機「F15」に搭載できる射程900キロの空対地スタンドオフミサイル「AGM158」であり、また、射程を1000キロ以上に伸ばした「12式地対艦誘導ミサイル」の空中発射型も開発が進められています。
ミサイルというと戦闘機を連想しがちですが、あえて輸送機での運用を目指すのは相応のメリットがあるためです。C2は通常の戦闘機よりも多くのミサイルを搭載できるうえ、長い滞空能力を持っており、機動力では戦闘機に劣りますが、敵の射程外から発射するのであれば致命的な問題ではありません。
岸田政権は昨年12月、「防衛力整備計画」など新たな安全保障関連3文書を定めました。そこでは反撃能力を保有する必要性が明記され、防衛費は今後5年間で43兆円程度に増額するとされました。そのなかで軸となるのは、スタンドオフミサイルの強化に割かれる5兆円で、これまでの5年間と比べて25倍となっています。