視点
軍縮専門家、「広島と長崎の教訓は忘れられている」
世界で初めての原爆投下から78年目を迎えたのに際し、専門家らは、アメリカによる日本の広島・長崎への原爆投下の教訓が忘れ去られており、そのような状況の中で、核保有大国間での緊張の高まりが核軍縮をほぼ不可能なものにしているとしました。
ロシアのスプートニク通信によりますと、VCDNPウィーン軍縮・不拡散研究所のニコライ・ソコフ上級研究員は、「広島と長崎への原爆投下は、核兵器の真の威力を示して見せ、それにより核兵器の使用を控えるという事実上のタブーが生まれた。しかし現在、米ロ間に新たな緊張が再燃したことで、1962年のキューバ危機以来となる危険な状況が生み出されている」と述べました。
続けて、「広島と長崎の教訓を、一部の人たちは忘れてしまっている。核兵器の使用が恐ろしいまでに悲惨な結果を招くものであることは、誰もが知るところではあるが、2番目の教訓、つまり核の使われる危険性を増大させる状況を作り出してはいけないということは、皆が知っているわけではない」と指摘しました。
その上で、「米国とロシアは、政治的理由から未だ核兵器備蓄を削減する準備ができていない。しかしたとえそれを削減しても、依然として他の核爆弾は存在し続けるだろう」と主張しました。
また、ロシアとアメリカの軍縮をめぐり、「冷戦期とは異なり(現在は)、核兵器の大規模使用というシナリオが採られることは、まずないだろう。今日私たちが核兵器の使用について語る時に意味されるのは、一桁台の核兵器だ。しかし、核兵器が大幅に削減されてもその極所的使用が止められるわけではなく、米国とロシアが保有核兵器数を1000や500まで減らしたとしても、核兵器使用というシナリオが可能性の高いまま残されることに変わりはない」と強調しました。
SIPRIストックホルム国際平和研究所の統計によれば、今年1月の時点で世界では計1万2512個の核兵器が保有されています。このうち、9576個は使用される可能性の高い核弾頭です。また、国別の配備核弾頭は、アメリカが1770発、ロシアが1588発、中国が410発など、昨年と比べて計92発増加しています。
一方、カナダのブリティッシュコロンビア大学公共政策・国際問題大学院の教授で、軍縮や世界安全保障の専門家であるM.V.ラマナ氏も、スプートニク通信に対し、「米国が第二次世界大戦の終結に向けて核兵器を使った経過と結果は、大半の国がそのような兵器を求めるきっかけとなった。そこから行われた核兵器開発と関連実験は、(実験場所にされた)南太平洋にあるフランス領ポリネシアなどで、現地の人々に大きな苦痛をもたらすこととなった。広島と長崎の悲劇で、核戦争を止めることはできない。核戦争を阻むことができるのは、このような兵器の撤廃と廃棄だけだ」と語っています。