視点、国会の関与を欠いた自衛隊の西アジア派遣
自衛隊の西アジア派遣に関して、国会の関与が不十分であったのではないか、との疑問が出されています。
日本の東京新聞は、4日火曜の社説で、自衛隊の西アジア(中東)派遣に関し、「日本独自の判断だとはいえ、米国の要請を受けた派遣です。国民を代表する国会の議決を経ず、閣議のみの決定でもある。国会の関与が不十分ではないか」との疑問を呈しています。
神奈川県の横須賀基地で行われた護衛艦「たかなみ」の出国行事に、日本の安倍首相が出席し、乗組員約二百人に「中東海域は年間数千隻の日本関係船舶が航行し、わが国で消費する原油の約九割が通過する大動脈・命綱と言える海域だ。日本関係船舶の安全確保は政府の重要な責務であり、必要な情報収集を担う諸官の任務は国民の生活に直結する、極めて大きな意義を有する」と訓示したことが、派遣の持つ意味の重さを物語っています。
西アジア海域で緊張が高まっていることは事実で、原油を中東に依存する日本にとって航行の安全確保が重要であることも理解できます。にもかかわらず、なぜ防衛省設置法の「調査・研究」を根拠とする閣議決定のみの派遣なのでしょうか。政府は今回の派遣が、国民の権利義務にかかわらず、実力の行使を伴わないためと説明していますが、自衛隊の海外派遣は国家意思の表明であり、極めて重い決断です。
PKO国連平和維持活動協力法や、インド洋で米軍などに給油活動するテロ対策特別措置法、イラクでの人道支援や多国籍軍支援を行うイラク復興支援特措法を制定するなど、これまで自衛隊の海外派遣は、その是非は別にして国会の審議や議決を経てきました。今回の派遣をめぐっては、閉会中審査や通常国会での代表質問、衆参両院の予算委員会で質疑が行われましたが、とても十分とは言えません。
「世界中どこでも、いつでも海外派遣できる先例にならないか」との与党議員の質問に、安倍首相は「派遣を一般化することは毛頭あり得ない」と答えましたが、調査・研究を根拠とし、国会の審議や議決を経ない海外派遣が、今後、行われない確証はありません。
4日の衆院予算委員会で野党会派の岡田元外務大臣は、自衛隊の提供した情報が他国の武力行使に使われ、憲法が禁ずる武力行使の一体化につながるのではないかとの質問に、安倍首相は 「今般の自衛隊が実施する情報収集、米国との情報共有は航行の安全確保のための一般的な情報交換の一環であり、憲法上問題は生じないと考えている」と答えています。
安倍首相は、アメリカ軍との情報交換は原則1日1回行うと述べた上で、「自衛隊とアメリカ軍の船舶が近傍で不審船に共同対処することは想定していない」としています。
また、河野防衛大臣は「アメリカ軍の依頼を受けて情報を収集したり情報伝達を行うわけではない」ため、一体化には当たらないとあくまで一般的な情報交換にとどまるという考えを重ねて示しました。
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