福島原発事故の水産物への影響に関するIAEAの調査に仏独韓が参加
東京電力福島第一原子力発電所の事故による、水産物への影響を調べるため、日本政府とIAEA・国際原子力機関が毎年行っているモニタリング調査に、今年はフランス、ドイツ、韓国の分析機関が参加しました。
NHKによりますと、日本とIAEAのほか、今回はじめて調査に加わるフランスとドイツ、韓国の分析機関の専門家らが10日水曜、いわき市の久之浜漁港を訪れ、水揚げされた魚の中から放射性物質の検査のサンプルを選別する様子を視察しています。
今回のモニタリング調査では、ヒラメやカレイ、アナゴなど6つの魚種について、身の部分を切り分けるなどの処理をしたうえで、各国の分析機関に送り、放射性物質の濃度などをそれぞれ独自に調べることになっています。
日本政府とIAEAは、2年後から海に放出する方針が決まっている、トリチウムなどの放射性物質を含む処理水について、IAEAが選定する専門家らが客観的な立場から安全性を調べるための協力協定を結んでいて、今回の調査もその枠組みを踏まえて行われています。
水産庁の高瀬力漁業監督指導官は「日本の分析能力は、これまでの調査でもIAEAから評価されている。各国が参加して客観的に分析を行うことで、日本の分析結果への信頼性と透明性が高まることを期待している」と話していました。
しかし、ロイター通信によりますと、処理水の海洋放出という日本政府の決定に、中国や韓国の農業関係者らはかねてから不安を示しており、福島原発事故から10年以上がたった現在でも、農作物生産のコスト上昇を懸念しているほか、漁業関係者らも処理水放出に不安を感じているということです。
中国・韓国両政府は今年4月、日本政府が福島第一原発の処理水の海洋放出を決めた際、強い反発や遺憾の意を表明しており、中国は「周辺国との十分な協議の上で、慎重に処理方法を決めるべきだ」とし、また韓国もIAEA総会で処理水放出の再考を呼びかけていました。
また日本政府のこの方針に関しては、すでに福島県内にとどまらず岩手、宮城両県の漁業関係者からも「反対姿勢は変わらない」「風評の怖さを理解していない」、「事故から10年を経てやっと農作物の価格が正常に戻って来たのに、処理水の放出でまた問題が増える」など激しい怒りの声が上がっており、福島県内では農業、観光、経済などの関係者の間で不満と懸念が渦巻いた形となっています。
岩手、宮城、福島3県などで水揚げ・加工された水産物については韓国が輸入禁止措置を続けるなど、食の安全への国際的な関心も高く、福島県や岩手県の漁業関係者らは「海はつながっているので風評被害は必ず起きる。放出する前に補償の枠組みを作るべきだ」、原子力は人間の手に負えないということが原発事故ではっきりした。原発は最終的になくしてほしい」などと訴えました。
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