「量を減らして売る者に災いあれ」:社会・経済に対するコーランの警告
イスラム教の聖典・コーランは、ミデヤン人とその街が滅んだのは「量を減らして物を売った」ことが原因だったと説明し、この行為を、全114章のうち6つの章において非難しています。
コーランでは、升や秤をごまかし量を減らして物を売る問題への戒めが繰り返し強調されています。アッ・ラフマン(慈悲あまねく御方 )章の7節から8節では、その遵守は創造された世界での秩序と結び付けられ、「神は天を高く掲げ、秤を設けられた。あなた方が物を量る時に不正を行えないように」と説明されています。
神は、アル・ムタッフィフィーン(量を減らす者)章の1節から5節においても、強く威嚇的に、「量を減らす者に災いあれ。彼らは、自分が買い手の時にはきっちりと計って(商品を)受け取るが、売り手の時には升を小さくし秤を軽くする。彼らは、神が裁きを下す復活の日に甦りたいと考えていないのか」としています。
高価格での販売は、 イスラーム法に合致する「ハラール」な日々の糧を得る上でぶつかる問題の1つであり、意識する・しないに関わらず、バーザールを利用する多くの人々に降りかかっています。高価格販売から得た収入は、イスラーム法に反する「ハラーム」なものであり、正当な価格を超えた額は買い手に返還される必要があります。
シーア派6代目イマーム・サーデグは、次のような預言者ムハンマドの言行を伝承しています:
「商品の価格(および欠陥のなさ)で売り手を信頼している人をだますことは、ハラームにあたる」
預言者ムハンマドはさらに、次のようにも述べています:
「人々が必要とする食料品を大量に買い集め、高値になることを見込んで40日間保管し続けた者は誰でも、罪を犯したことになる。その者がそれらすべてを売った後に代金を寄付しても、その罪が償われることはない」
神はさらに、フード章の84節から86節においても、経済的腐敗が生まれる理由の1つとして多神教と偶像崇拝を挙げ、ミデヤン人の住む街でそのような行為が蔓延していたことを指摘しながら、 「(升や秤の)寸法を小さくしたり量目を軽くしてはならない」としています。
イスラム法学者のモジュタバー・カルバースィー師は、量を減らした販売や高価格販売について、さまざまなケースがあるとし、「たとえば、ある者が何かを生産したがその生産物とその上に書かれた説明が矛盾していたり、事前に説明していたのとは違う商品を納品した場合。または、ある者が何かの仕事をすると約束したが、それを実行しなかった場合。仕事量が少なかったり、量を減らして売った場合も、これにあてはまる」と説明しました。
また、「神はコーランの諸節において、私たちが公平・公正を行えるように、慎重に取り計らってくださった。量を減らした販売や高価格販売の一例には、資産を誰かに売る際、すばらしいもののように説明して倍の価格をつけたり、資産を誰かから購入する際、自分の利益になるようにその資産を悪いもののように言って支払う額を減らすことも挙げられる」としながら、預言者の言行録・ハディースの一文「信頼は日々の糧につながり、裏切りは貧困へとつながる」を挙げました。
そして、「ある社会をこの分野において変革することは、政府や司法の当局者が取り組むだけでは不可能である。神の預言者たちは社会の変革のために人の内面の変革を模索してきたが、そのように、人々の考えを変えていかなくてはならない」と述べました。