イスラムにおける食習慣・ハラール食品
この記事では、イスラム法で許されている、いわゆるハラール食品を利用する必要性を初めとした、イスラムにおける食習慣に関する幾つかの点についてお話することにいたしましょう。
ハラール食品に該当するのは、イスラムの方式にそって屠殺され、宗教上食することが許されている動物の肉などす。またイスラムではそれ以外の果物や野菜、乳製品の摂取も奨励されています。
イスラムは、体の健康を特に重視しています。スポーツに加えて、健康的な食品の摂取や食習慣の原則を守ることは、言うまでもなく人間の体の健康に重要な役割を果たしています。宗教的な教えによれば、人間は、イスラム法で許されているハラール食品とそうでない食物を識別することで、肉類を初めとするたんぱく質やそれ以外の食品を含め、穢れがなく宗教法上許されたあらゆる食品を利用し、宗教上禁止された、体に有害な食物を控えることができます。
体に必要な食物を摂取しないことは、病気の原因になります。それは、様々な食物が体に必要なミネラルやビタミン類をもたらすからです。これについて、イスラムの預言者ムハンマドは次のように述べています。
“健康でありながら食事制限をし、一部の食物を摂取しない者、そして病気でありながら全てのものを食する人は、常に病気である”
中には、宗教上許されたハラール食品をあえて摂取しない人がいますが、これはイスラムでは非難されています。それは、自然界の恩恵は全て、その摂取により丈夫な体を作り、神の僕としての道を歩み、数え切れないほどの恩恵を神に感謝すべく、人間に与えられているからです。コーラン第7章、アル・アアラーフ章「高壁」、第32節では、一部の食品の摂取を禁じる人々を戒め、次のように述べています。
“言ってやるがよい。「神がしもべたちに与えられた飾りや、食料として与えられた清浄なものを、誰が禁じたのか?”
また、コーラン第5章、アル・マーイダ章「食卓」、第87節では次のように述べられています。
“信仰心ある人々よ、神があなたがたに許される、良いものを禁じてはならない”
四足動物のうち、イスラムで食することが許されているのはヒツジ、ウシ、ラクダ、カモシカなどの一部の動物です。鋭い爪と牙を持つライオンやヒョウをはじめとする猛獣や、キツネ、ハイエナ、ジャッカル、ネコなどの動物の肉を食することは禁じられています。さらに、ハラールとされている四足動物といえど、イスラムの方式で屠殺されていなかったり、死肉である場合には食してはならないとされています。また、海産物のうち、イスラムで許されているのはうろこのある魚の肉とエビです。さらに、鶏肉のうち、砂のうやけづめがない鳥、あるいはワシやハゲタカのように、鋭い爪のある猛禽類の肉を食べることは禁じられています。
肉類には豊富なたんぱく質が含まれていますが、これを正しく摂取しない場合には、心と体の双方に病気をもたらします。そもそも、イスラムはあらゆる恩恵の浪費に反対しており、節度を守り中庸であることを奨励しています。イスラムの一部の伝承においても、むやみに肉類を摂取することを禁じています。シーア派初代イマーム・アリーはこれについて、「自らの腹を動物の墓場にしてはならない」とし、イスラムの預言者ムハンマドも、40日間続けて肉を食べると残酷な人間になる、と述べています。
逆に、イスラムでは食生活から肉類を完全に排除すべきだとはされていません。これについて、シーア派6代目イマーム・サーデグは「40日間肉を食べなかった人は、性格が悪くなる」とし、預言者ムハンマドは次のように述べています。エ;“40日間肉を食べなかったなら、借金をしてでも食べるがよい。肉を食べることで、聴力や視力が増す。肉類は現世と来世における食糧のリーダーである”
もっとも、肉類の食べすぎにも注意する必要があります。幾つかの伝承においては、肉類を食べるのは3日に1回が適切であるとされています。肉類の中でも、ヒツジや水生生物、鶏肉の摂取が奨励されています。最もよいとされるのは、新鮮な肉です。また、生の肉や乾燥した肉、塩漬けの肉は摂取してはならないとされています。
食形態においては今日、一部の食物栄養学の専門家は肉食療法を奨励し、また中には菜食主義を強調する人もおり、双方がそれぞれの食事形態の利点を列挙しています。実際に、この2つの食事療法のいずれかを選択し、肉類と野菜類のいずれかを全く食べないようにするというパターンが少なくありません。しかし、イスラムの教えや伝承を研究すると、イスラムは肉類と野菜類のいずれかを全く食べないという方法を決して認めておらず、イスラムの教えが家庭で消費する食材をバラエティーに富んだものにするよう強調していることが分かります。
イスラムの預言者ムハンマドの言い伝えや伝承からは、この偉人が決して特定の食物のみに固執していなかったことが分かります。イランのシーア派の学者タバルスィーによれば、預言者ムハンマドは他の人々と同様に、植物性の食物や肉類までにわたる、ごく普通の様々な食物を摂取していたということです。さらに、イスラムの伝承においては、各種のパンや果物、牛乳、油、ナツメヤシ、ハチミツ、肉類といった、実に多種多様な食物が出てきます。
預言者ムハンマドは常に、果物や植物性の食品の特色を強調しており、自らの教友たちにもそれらを摂取するよう奨励するとともに、菜食主義を勧めることはなく、一部の場合においては肉類の摂取についても触れています。
イスラムの慣習においては、食物の摂取に当たって節度や中庸さを守ることが強調されています。シーア派の伝承学者クライニーは、シーア派6代目イマームサーデグの話として、中庸さについて、次のように述べています。「食生活において中庸であることとは、特定の食物のみを摂取するのではなく、折りあるごとにパンや肉類、牛乳、油や酢など、様々な食品を利用することである」
イスラムは、人間の身体的なニーズや年齢に注目し,適切でバランスの取れた食生活のプランを提唱しており、医学的な理由や特別な条件なしに、特定のグループの食物の摂取を控えることを容認していないのです。