米宗教右派を欺くイスラエル考古学のナラティブ
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米宗教右派を欺くイスラエル考古学のナラティブ
研究者らは、イスラエルと米国のイスラエル支持者は、米国内のキリスト教徒を欺くための歴史ナラティブを編み出そうとしているとみています。
【ParsToday西アジア】今月14日、ルビオ米国務長官がイスラエル占領下にあるエルサレムを訪問しました。この訪問の計画は、イスラエル側によって詳細に組まれ、特に考古学に焦点を当てていました。ガーディアン紙によると、訪問初日、ネタニヤフ首相はルビオ氏をエルサレムの西壁近くの地下発掘現場に案内しました。
2日目、ネタニヤフ首相はルビオ氏に、パレスチナ人地区の地下にあるトンネルを誇らしげに見せました。このトンネルは、ローマ時代の「巡礼の道」として知られる通りの下にあり、古代公園「ダビデの街」の中に掘られています。この公園は、入植団体「アル・アド」によって管理されています。 ネタニヤフ首相は、これらのプログラムの目的は、エルサレムのユダヤ的ルーツを強調し、イスラエルの「永遠で分割不可能な首都」としての地位を示すことだと強調しました。
一方で、ルビオ氏がこのツアーに参加していたその間、イスラエル軍の戦闘機はガザの主な考古学的遺物倉庫を爆撃し、30年にわたる考古学的な努力を破壊しました。
歴史のナラティブを巡る戦い
歴史のナラティブを巡る争いは、イスラエルとパレスチナの間の広範な対立の一部として常に存在してきました。イスラエルの考古学管理機関の職員は、占領地で考古学的発掘を行うために軍の部隊を同行させてきました。
この争いは先月、さらに明白なものになりました。ルビオ氏の訪問は、ユダヤ教とキリスト教の共通の歴史を強調し、米共和党の福音派支持基盤をイスラエルと結びつけることを意図していました。
ネタニヤフ首相とルビオ氏は一連のプログラムを、それぞれの妻とともに、駐イスラエル米大使であるマイク・ハッカビー氏と一緒に訪問しました。ハッカビー大使は、イスラエルの領土拡張を強く支持している人物で、「パレスチナは存在しない」と信じています。
物議を醸す考古学プロジェクト
入植団体「アル・アド」は、パレスチナの土地を強制的に接収した上で、ダビデの街遺跡の公園を建設しました。そして、「巡礼の道」を、イエス・キリストの時代にユダヤ人たちが神殿へ向かうために通った道だと紹介しています。 このプロジェクトは、国連によって違法とされており、占領地におけるパレスチナ人を追い出すための一環として行われているとされています。
昨年、国連の委員会は、考古学を政治的目的に利用することを非難しました。 独立考古学者グループ「エムク・シャヴェ」のアロン・アラッド代表は、「巡礼の道」トンネルが、第1次トランプ政権下の2019年に開通したことを指摘しています。
アラッド代表は、この開通式を「完全に奇妙だ」と表現し、次のように述べています。
「入植者、宗教伝道者、米国右派が協力していることは目新しいことではない。しかし、この開通式は単なる弱い考古学的取り組みであり、ダビデの街の公園プロジェクトが考古学や文化遺産と何の関係もないことを示しいる」
ガザの遺産の破壊
エムク・シャヴェは、イスラエルによるガザの考古学倉庫の爆撃も非難しました。この攻撃は、ルビオ氏がエルサレム西壁を訪れていた日と重なりました。戦争が始まって以来、イスラエルは数百の文化遺産や保護された考古学的場所を破壊してきました。この倉庫は、ガザでの30年にわたる考古学的努力の成果を集めたもので、数万点の遺物が含まれていましたが、多くがこの攻撃で破壊されました。
イスラエル軍は、パレスチナの考古学者らでつくる団体「エコール・ビブリック」に倉庫内の発掘物を退避させるためにわずか3日間の猶予しか与えず、すべての発掘物を守るための時間と資源は十分にありませんでした。
エコール・ビブリックの担当者は、「トラックや人手不足のため、2度目の作業に戻ることができず、いくつかの発掘物が失われた」と語っています。
政治的な考古学的ナラティブ
イスラエルの軍当局は、「発掘物の退避作業を支援し、ガザのキリスト教徒社会の貴重な遺物と壺の移動を行った」と述べました。しかしアラッド代表は、これらの遺物がさまざまな時代や文明に属しているとし、この説明は事実を歪曲していると指摘しています。アラッド氏はさらに、「この主張の背後にある動機は分からないが、おそらく米国の福音派との関係を維持しようとする試みだろう」と付け加えました。
これらの出来事は、考古学を政治的目的のために利用する事例を示しています。この動きは、地域の豊かで多様な歴史を無視するばかりか、文化遺産の破壊を助長し、対立をさらに激化させています。