仏パリの街頭世論が欧州の政策の矛盾に抗議する理由とは?
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仏パリで市民らがデモを開催しガザ住民への支持を表明
フランス首都パリで数万人の市民らがパレスチナ人への支持を表明し、「パリからパレスチナへ、抵抗」というスローガンを連呼しました。
11月29日の「パレスチナ人民連帯国際デー」に因んで、パリの街頭ではパレスチナ国民への連帯を示す最大規模のデモが繰り広げられました。パリ市内では共和国広場から国民広場まで、数万人の抗議者らがパレスチナ国旗や「ジェノサイドを止めろ」「ガザよ、パリはあなたと共にある」「パレスチナは解放されるべき」といったスローガンを掲げ、怒りと共感の叫びを世界に轟かせています。このデモは、抗議者らが「米・シオニスト政権イスラエルの偽りの和平案の押し付け」、そしてガザとヨルダン川西岸での犯罪に対する「完全な処罰免除」と称するものに反発した形となっています。
このデモは80以上に及ぶNGO、左派政党、労働組合によって呼びかけられたもので、市民、人権活動家、ジャン=リュック・メランション氏をはじめとする政治家が参加しました。パリでのこうしたデモの開催は、依然として慎重でイスラエル寄りの姿勢を崩さないマクロン現仏政権とフランス社会の深い溝を如実に物語っています。デモ参加者は「パレスチナよ、我々は沈黙しない」「ジェノサイドを止めろ」と書かれたプラカードを掲げました。これらのスローガンは主要メディアでこそあまり取り上げられていないものの、パリの街頭では反響を呼んでいます。
フィガロ紙、リベラシオン紙、リュマニテ紙、フランス24チャンネルTVなどのメディアは「抗議者らの怒りは過去数ヶ月にわたる爆撃だけにとどまらず、去る10月の停戦以来322人のパレスチナ人が殉教している事実、入植地建設の加速、入植者による前例のない暴力、そしてヨルダン川西岸ジェニンでパレスチナ人男性2人が殺害され殉教した路上での処刑行為を非難している」と報じました。公開された動画には、無防備な2人の人物が両手を挙げ、数秒後にその体が地面に倒れる様子が映っています。
国連はこの行為を「性急な処刑」だとして捜査を求めましたが、欧州各国政府は依然として「勧告と懸念の表明」という曖昧な方法に傾いています。
フランス・パレスチナ連帯協会のアンヌ・トゥヨン(Anne Tuaillon)会長はフランス通信に対し「停戦から7週間が経過したが、何も解決していない」と語りました。また、入植地建設が「信じ難いほどの」ペースで続いており、ヨルダン川西岸でのシオニスト入植者による暴力行為が前例のないレベルに達していると警告しています。
また「制裁は必要であり、イスラエルに国際法遵守を促す唯一の方法だ。しかし、耳を傾ける者はいるのか?』との疑問を呈しました。
この疑問はデモ全体を通して見聞きされており、パレスチナ国旗を掲げて群衆の中に立っていた72歳のある女性は「全人類が見ているのに、何もできない」とコメントしました。この単純な文言により、西側諸国の倫理的危機の全体像が浮き彫りになっています。
西側諸国はいわゆる「人道的」戦争に数十億ドルを費やしているものの、ガザの数千人もの子どもたちの殉教を目の前にしながら、政治的な正当化という壁の後ろに隠れています。
デモに参加したある技術者(42)は「虐殺とジェノサイドは続いている」とし、「政治・経済的制裁がなければ、残された手段は『街頭での圧力』と『市民社会の叫び』だけだ」と強調しました。
こうした分析は、ノルウェーのオスロ平和研究センターや欧州政策センターなど、欧州の複数のシンクタンクの調査結果と一致しており、これらのシンクタンクは最近の報告書で「EUは消極的な政策の続行により人権上の義務を怠っている上、地政学的役割も失っている」と警告しています。
チャタムハウス(英国王立国際問題研究所)はガザ戦争の分析において「ヨーロッパはパレスチナ紛争において構造的に無力である。政策変更のコストを負担する意思もなければ、現状維持に伴う結果を受ける能力もない」との見解を示しています。これはまさに、パリの街頭で世論が叫んでいる矛盾だと言えます。
今回のデモには国際人権NGOアムネスティ・インターナショナル、仏市民団体ATTAC、仏NGO・Cimadeなどの労働組合や市民社会団体も参加しています。このことは、フランスにおけるパレスチナ問題がもはや単なる少数派や左派の要求ではなく国民の関心事であり、広範な政治的分裂、つまり人権原則の尊重を要求する国民と「イスラエル支持」と「中立主張」の板挟みになっている政府との間の亀裂を如実に物語るものです。
一方、フランス政府の沈黙とEUの無策ぶりは、抗議活動家のさらなる怒りを煽っています。彼らは「欧州はロシアに対しては迅速に制裁と圧力措置を発動できる一方で、国際法はおろか道義的原則すら守らないイスラエルに対しては強制力のない声明を出すだけで済まされるのか」との疑問を呈しています。
長年にわたりヨーロッパの市民社会を苛立たせ、街頭運動の拡大を促してきたのも、まさにこうしたダブルスタンダードに他なりません。パリ警察は参加者数に関する公式統計を明らかにしていませんが、動画映像には、戦争への抗議だけでなく、不正と偽善に抗議するため集結した群衆が街のメインストリートを埋め尽くしていた様子が映し出されています。
「我々の子供たちはマクロンの兵士にはならない」「包囲を解け」「パレスチナは解放されるべきだ」といったスローガンは、単なる抗議のスローガンではなく、人命よりも無関心を優先する政策に対し、フランス国民が沈黙を守るつもりがないことを示すものでもあります。このデモは事実上、ヨーロッパを映し出す鏡であり、世界の道義的リーダーを自称する欧州に対し、受動的な役割に甘んじ、戦略的沈黙、そして対イスラエル批判への恐怖という不快なイメージを映し出す鏡だったのです。

