4月 30, 2023 19:57 Asia/Tokyo
  • アメリカのホワイトハウス
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ドイツの複数のメディアが、同国国防省に対するアメリカの諜報行為を暴露しました。

ドイツの新聞ディー・ツァイトおよび、同国国営放送ARDは、「米国がヨーロッパの同盟国に対し大規模なスパイ活動を行っていることが暴露されてから10年経った今でも、米国防総省 は、電子機器を使用してドイツ国防省への諜報・スパイ活動を行っている」と報じました。

これらのドイツ・メディアが指摘しているのは、米の情報工学者で米CIA中央情報局員だったエドワード・スノーデン氏が2013年、アメリカ国家安全保障局による同国の同盟国へのスパイ行為を暴露したことです。 

米国防総省から新たに漏洩した文書からは、アメリカの諜報機関がドイツと中国の軍関係者の間の秘密交渉を傍受していたことが明らかになっています。

 

ドイツ当局がこれまで以上に懸念しているのは、これらの交渉の内容ではなく、アメリカの諜報・傍受の手口です。この情報は電子盗聴装置を介して収集されたもので、アメリカの諜報機関がドイツ国防省の電子メールをチェックした、もしくは同省のコンピューターシステムをハッキングしたことを意味しています。 

 

もっとも、アメリカの諜報組織の偵察活動や傍受行為は、アメリカの同盟国や敵に限定されていません。アメリカは実際、こうした枠組みをはるかに超える形で、国連やその当局者に対しても諜報活動を行ってきました。

米国防総省の機密文書からは、米国政府がアントニオ・グテーレス国連事務総長を詳細に監視し、偵察・諜報していることが明らかになりました。米国政府は、国連事務総長がロシアに対して軟弱な姿勢をとり、ロシアの利益・便宜をはかろうとしていると主張しています。 

 

アメリカは、情報収集を目的とした電子傍受の他、他国の政府や軍のネットワークへの侵入など、他国に対する諜報・スパイ行為の長い歴史を有しています。

中でも、2022年5月下旬にはデンマークのラジオ・テレビ局が、米国家安全保障局がデンマークの通信ケーブルを通じて、当時のメルケル独首相とシュタインマイヤー独大統領、およびその他の欧州高官に対するスパイ活動を行っていたことを報道で暴露しました。 

 

ヨーロッパの同盟国に対する米諜報機関のスパイ行為の暴露は、アメリカがパートナー国を信頼していないだけでなく、電子盗聴や電話の通話傍受を通じて重要なヨーロッパ諸国の指導者や政府高官の会話、計画、目標の詳細を常に察知・把握しようと目論んでいることを示しています。

デンマークのメディアのこうした報道からは、ドイツの同盟国で隣国であるデンマークの諜報機関が、アメリカの諜報機関と協力して、当時のドイツの首相と大統領を盗聴とスパイ活動の標的にしたことが明らかになりました。一方、メルケル氏とシュタインマイヤー氏のいずれも、デンマークの諜報機関によるスパイ活動については全く察知していませんでした。

 

米国が自らの同盟国に対する諜報活動を行っていることが初めて明らかになったのは2013年でしたが、現在ではより詳細な情報が明るみになっています。

同年には初めて、NSA米国家安全保障局の元職員でもあったエドワード・スノーデン氏が、この米国諜報機関がアメリカ国民だけでなく、ヨーロッパ諸国の市民やその指導者や政府高官に対しても広範なスパイ活動を行っていることを暴露しています。 

 

アメリカのジャーナリストで作家・弁護士でもあるグレン・グリーンウォルド氏は、「スノーデン氏は、『信じ難いほどの規模での米国政府の不正行為』を世論に知らしめるべく、自らの生命をもあらゆる危険にさらした」と語っています。

NSAによるヨーロッパ当局者へのスパイ行為の暴露は、EU・アメリカ政府間の信頼関係に深刻な打撃を与えました。ヨーロッパの当局者は、自分たちがアメリカから信頼されていないのみならず、自らのすべての言動が厳密に監視されていることを知らされました。

この点に関して、フランスのサイバー防衛司令部の責任者であるアイメリク・ボンメゾン司令官 は最近、ヨーロッパ諸国に対して、米国のサイバー防衛司令部の監視がこれらの国のネットワークに及んだ場合、アメリカからの情報収集の危険にさらされることになると警告しました。

同司令官はまた、「欧州諸国がアメリカのサイバー防御班に対しこれらのネットワークへの監視を許可すれば、米国のスパイ活動のリスクを受け入れたに等しい」と強調しました。

 

こうしたフランスのサイバー防衛司令部のトップの警告は、スノーデン氏の暴露にもかかわらず、アメリカが相変わらずヨーロッパの同盟国に対しスパイ行為をはたらいているということを物語るものです。ドイツと国連に対するアメリカの諜報行為をめぐる米国防総省の機密文書は、これを裏付けるものと言えるでしょう。

 


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