12月 09, 2023 20:21 Asia/Tokyo

国連安保理は8日の緊急会合でUAE・アラブ首長国連邦が提出したガザ停戦決議案を採決し、常任・非常任理事国あわせて15カ国のうち13カ国が賛成票を投じましたが、英国が棄権、アメリカが拒否権を発動し、否決されました。

安保理決議は常任理事国が拒否権を発動することなく9カ国が賛成票を投じれば可決されます。今回の停戦決議案は、グテーレス事務総長が国連憲章第99条にもとづいて安保理に行動を要請したことをうけ提出されました。国連事務総長が同条項にもとづく権限を発動するのは50年ぶりのことです。

国連憲章第99条は、国連事務総長に対し「国際の平和及び安全の維持を脅威すると認める事項について、安全保障理事会の注意を促すことができる」と定めています。これまでにこの99条が発動されたのは9回のみで、前回はバングラデシュの独立につながったインド・パキスタン間の危機の最中だった1971年に発動されたのが最後で、今回がおよそ50年ぶりとなりました。

今回の緊急会合の前夜まで、アメリカはグテーレス事務総長の国連憲章第99条の発動について明確な態度を示していませんでしたが、会合で提出された停戦決議案に拒否権を行使しました。

イスラエルによるガザ攻撃は悪化の一途をたどっており、これまでにパレスチナ人1万7500人以上が殉教、4万2000人以上が負傷しています。特に、ハマスとの停戦合意が終了してから攻撃が激化しており、エジプトとガザの境界にあるラファ検問所も封鎖されたままで、人道支援の提供も滞っています。今回の安保理会合はこうした状況下で招集されました。

現在、国連安保理は、世界の平和を守り地域紛争を解決するという本来の役割を果たせていないようにみえます。常任理事国が拒否権を持つ以上、非常任理事国を合わせたすべての国が共通の見解を出すのはきわめて困難です。こうした状況で、アメリカをはじめとする西側諸国がガザでのイスラエルによる虐殺を止めようとしていないのは明らかです。アメリカは停戦決議案に拒否権を行使することで、イスラエルにガザでの虐殺・破壊活動のゴーサインを出したのです。そして、ガザの状況が「人道的悲劇」の段階を越え、「地上の地獄」「終末的状況」などと称される現在になっても、停戦決議案に再度拒否権を行使し、イスラエルにさらなる戦争犯罪の機会を与えています。

イスラエルのエルダン国連大使は、今回の停戦決議案否決をうけ、拒否権を行使したバイデン米政権に謝意を表明し、今回の決議案を「ゆがめられたもの」としました。これに対し、ロシアのポリアンスキー国連次席大使は、アメリカの姿勢を批判し、「アメリカはまたもやガザでの停戦を阻んだ。これは、数千人おそらくは数万人のパレスチナ人に対する死刑宣告だ。安保理の消極姿勢がガザでの破壊活動や人道的悲劇の拡大につながっている」と述べました。

シオニスト政権イスラエルは10月7日にハマスから受けた「アクサーの嵐」作戦で喫した敗北を取り戻そうと、ガザに住む民間人らへの攻撃を続けています。イスラエルは国連安保理の機能不全をいいことにガザで今世紀最大ともいわれる人道的悲劇を生み出しています。そしてアメリカは、停戦決議案への拒否権行使により、イスラエルによるテロを支持し、自らの人権認識に新たな汚点を残しています。

 

 


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