視点;ディーンヤーリヤーン解説員
米フロリダ州での黒人集団墓地の発見、歴史的な苦痛の想起
アメリカ空軍が、同国南部フロリダ州タンパにあるマクディール空軍基地で121基の黒人の墓が見つかったことを明らかにしました。
アメリカにおける有色人種、特に黒人に対する人種差別と暴力は、同国そのものの歴史よりも長いものとなっています。
人種差別と人種主義は常にアメリカ社会の特徴の 1 つとして提起されており、黒人は同国の歴史を通じて常に暴力の標的とされてきました。その証拠にアメリカの歴史は、奴隷制および黒人に対し行われてきた大規模な搾取と、長きにわたり深く絡み合っています。1950年代に黒人の権利主張と人種差別撤廃の分野で波を起こした公民権運動ですらも、これらの不平等を終結させることはできませんでした。
アメリカ当局はこの数十年、黒人を白人と同等の市民として扱い黒人に対する差別と暴力を撤廃すると、盛んに発言してます。しかし、歴史的な証拠やアメリカ当局の現在の措置行動は、同国で安らぎのある生活を送っている黒人がそう多くないことを如実に物語っています。
実際に、現在のアメリカ社会においては黒人の大半が人種的不平等に苦しんでおり、社会、経済、そして保健医療サービスや教育の分野においても、黒人に対する暗黙の暴力と差別が横行しています。彼らの多くは、低所得者層が集中する地域やスラム街に居住しており、白人と同じ仕事に就いていても同等の賃金を得られず、社会サービスも受けられない状態にあります。また、このことは黒人の死亡率を大幅に押し上げてもいます。
この点に関しては、JAMAアメリカ医師会雑誌に掲載された最新の研究の1つでも、過去20年間に米国の黒人の死亡率が白人の死亡率よりも高かったことが認められています。
黒人に対するアメリカ警察の暴力も、アメリカ国内外の世論にとって明白に認識されている事柄です。白人警察官による黒人市民ジョージ・フロイドさん殺害事件は、数百件にも上るアメリカの警察などの組織や司法制度で起きている同国の人種差別的扱いの1例として挙げられます。
世論調査の結果によれば、アメリカの黒人全体の約45%が、「自国内において黒人と白人との間に平等は存在しない」と考えているほか、黒人の約9割が、裁判所や刑事司法制度の一部の改革を求めています。
米ジョージア州アトランタで保健業務を担当するKhaliah Johnson氏は、「我々黒人は、不公正という遺産を背負っている。しかもこの不公正の影響は、我々の暮らしだけにとどまらず、人生における他者との関係にも及んでいる」とコメントしました。
アメリカ当局は特に近年、様々な手段で黒人に対する差別と暴力の削減に努めてきてはいるものの、各種の証拠が物語るのは、黒人が依然として公然・非公然に不平等に苦しめられているという現実なのです。