IAEAの正統性を揺るがすグロッシ事務局長の行動
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ラファエル・グロッシIAEA事務局長
イランは、自国の平和目的の核開発について西側諸国が偏った報告を出し、米国がイランの核施設への武力行使を行ったことを受け、IAEAとの協力を一部停止し、西側の誤りを明らかにしています。
【ParsToday国際】国際原子力機関(IAEA)は、公式には平和的な核計画の技術的かつ中立的な監視を任務としていますが、ここ数週間の出来事は、ラファエル・グロッシ事務局長の下でIAEAが科学的な透明性を追求するのではなく、イランに対する圧力を強化する政治的な道具となっていることを改めて示しました。
ダブルスタンダードな行動や矛盾する報告、不確かな情報源への恣意的な依存、そして最終的にはアメリカとイスラエルの敵対的行動に向けたメディア戦略がグロッシ氏の評価を著しく落としています。
こうした状況下で、イランは傍観することなく、法的、外交的、技術的な手段を駆使して、西側が仕掛けた政治的なゲームに対し適切かつ賢明な対応を行っています。
正当かつ正確なイランの対応
IAEA理事会で出された憶測と偏見にもとづく報告と、イスラエルによるイラン核施設への直接的な軍事攻撃に対する沈黙を受けて、イラン国会は国際法の原則に基づく戦略的な法律を可決し、IAEAに対する自主的な協力を正式に停止しました。
この決定は、2015年の核合意にある第36条および核拡散防止条約(NPT)第19条に基づいており、技術的かつ法的に完全に正当なものです。なぜなら、これらの加盟国は相手側に義務違反があった場合、自発的に負う一部の義務の履行を停止する権利があるからです。
さらに、グロッシ事務局長の役割とイランに対する偏向的な姿勢が問題視され、同氏のイランへの入国禁止の可能性が囁かれました。彼の個人的な行動は中立性を欠くだけでなく、正式な報告書の発表前にその内容が西側やイスラエルのメディアに漏れていたこともありました。これは、グロッシ氏が国際的圧力のシナリオにおけるメディアの駒となっていたことを示しています。
自国の安全保障を毀損する人物の入国禁止は、国際外交法上も多くの前例があり、イランも適切にこの手段を利用しました。 それにより、一部のIAEA査察官の立ち入りを制限または停止しました。この決定も、IAEAの包括的保障措置および規約第9条、特に査察官の身元確認に関する部分に則ったものです。
IAEAはどのようにイランからの信頼を失ったのか?
1.政治的意図に満ちた報告
IAEAが技術的な役割から逸脱した最も明確な例の一つは、科学的・保障措置の基準に基づいていないばかりか、信頼できない情報源、特にイスラエルからの情報に依存した報告が繰り返し公開されたことです。
例えば、イラン国内の複数箇所でウラン粒子が存在するとされた報告は、最初にイスラエルの首相がメディアで主張したものであり、その後現地での詳細な調査なしにIAEAの報告書に盛り込まれました。
2.軍事攻撃のための地ならし
報告書の作成方法やグロッシ氏の発言は、アメリカとイスラエルによるイラン核施設への軍事攻撃の数週間前に、IAEAが単なる技術監視ではなく、軍事作戦の地ならしとして機能していることを明らかにしました。
3.二重基準の行動とイランに対する侵略行為の無視
IAEAの政治的な行動のもう一つの例は、イランの平和的核施設に対する明白な軍事侵略に対し完全に沈黙していることです。イスラエルによつドローンやミサイル攻撃の後、IAEAには中立的な機関としてこのような行為を強く非難することが期待されました。
しかし、グロッシ氏はこれらの侵略に関する声明を出さず、「イランの核計画の危険性」や「迅速な協力の必要性」といった言葉を使い、西側の侵略的行動を事実上正当化しました。これはIAEA規約第2条第4項に違反しており、この機関は加盟国の平和的核施設に対する潜在的または実際の脅威に断固たる対応を取る義務があります。
ゲームの終わり?
グロッシ氏の事務局長就任から5年7カ月が経過し、IAEAはかつてないほど信頼、正当性、中立性の危機に直面しています。この機関はかつて、各国の平和的核計画の科学的かつ技術的監督機関であるべきものでしたが、現在は特に非同盟諸国の多くから、西側とイスラエルの政治的道具とみなされています。
根拠のない報告、機密情報の漏洩、軍事攻撃に対する明らかな偏向、脅迫的な発言は、IAEAの専門的な評価を著しく損なっています。また、法的整合性の崩壊、明白な侵略行為に対する対応の弱さ、専門性の独立性の欠如は、この機関をかつての中立的かつ世界的な監視機関の地位から、政治的圧力のネットワークの一部に転落する要因となっています。
グロッシ氏のイランに対するゲームは終わりに近づいているように見えます。失われた信頼、侵略行為に対する無対応、西側の圧力を調整するプラットフォームへの転換により、IAEAはテヘランだけでなく世界の多くの地域で、独立した公正な技術判断機関とは認識されなくなっています。 この流れが続くならば、圧力対象国は協力レベルを低下させるだけでなく、事実上この機関を世界的監視者の地位から引き下ろし、無能な政治的アクターへと格下げするでしょう。したがって、イランは最近の行動を通じて国益を守るだけでなく、国際秩序の基盤である信頼喪失の重要性と影響について警告を発しています。