欧州が核合意内のトリガー・メカニズムを発動させた場合、イランが講じる一部の措置とは?
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マクロン仏大統領(左)、メルツ独首相(中央)、スターマー英首相(右)
イランのアフマド・ナーデリー議員が、欧州が核合意内のトリガーメカニズム(イランによる核開発の加速や合意違反の際に国連制裁や米国、EUによる制裁が自動的に再発動される仕組み)を発動させた場合のイランの行動について概説しました。
いわゆる欧州トロイカと呼ばれる英独仏は先日、イランに関するこれまでの主張を繰り返すとともに、グテーレス国連事務総長宛てに書簡を送り、イランが核開発計画に関して米国および国際社会との交渉を再開しない場合、いわゆる「スナップバック」メカニズム、あるいはトリガーメカニズムを発動する用意があることを表明しました。では、実際にこのメカニズムが発動された場合、イランはどのような対応を取ることになるのでしょうか?
【ParsTodayイラン】イランのオンラインニュースサイト「ハバル・オンライン」によりますと、イラン国会幹部会メンバーのアフマド・ナーデリー議員はこの問題について「欧州諸国が圧力強化政策を続行するなら、イランも必要かつ適切な措置を講じる」と語りました。
また「こうした措置の1つとして、例えばNPT核兵器不拡散条約からの脱退が挙げられる。したがって、これらの国の指導者は、自分たちが始めたゲームが失敗に終わり、逆にイランは自らが使うための複数のカードを保持していることを認識すべきである」と述べています。
一方、安全保障問題に関する研究や提言で実績を有する米国のシンクタンク、スティムソン・センターは報告書の中で、「アジア傾倒は、イランが西側諸国からの経済的圧力を軽減する上での助けとなりうる」との見解を示しました。
この点に関して、アラーグチー・イラン外相も最近、欧州がトリガーメカニズム発動を示唆していることについて、「欧州には、トリガーメカニズムを含めたJCPOA包括的共同行動計画(通称;対イラン核合意)のいかなる部分についても協議、実施する権限はなく、我々と欧州の間には法的争点がある」と語りました。さらに「これには様々な手段があり、我々は中国及びロシアと協力している。もしこれが機能せず、最終的に彼らが自らの行動に出たとしても、我々は対応策を持っており、それは適切な時期に発表する」と付け加えています。
アラーグチー外相は去る7月のトルコ・イスタンブールでの会合後、英紙フィナンシャル・タイムズに対し、英独仏には核兵器の発動メカニズムを発動する「法的・倫理的根拠」がない、と述べるとともに「もしこのプロセスが進めば、欧州諸国は将来の核交渉から排除されるだろう」と警告していました。
さらに、もう1人のイラン国会議員カームラーン・ガザンファリー氏も、トリガーメカニズムの発動に対するイランの反応について「もしそうなれば、イランはNPTから脱退し、無策ではないことを示すべきだ。最終的に損害を被るのは西側諸国だ。シオニスト政権イスラエルがイランに戦争を仕掛ける前は、彼らはIAEA国際原子力機関を通じてイランの核開発計画を監視できていた。しかし、イランがNPTから脱退し、IAEAとの協力を一切停止すれば、イランの核開発計画の現状は西側諸国には見えにくくなるだろう」とコメントしています。
近年、欧州は反イラン・テロ組織や分離主義組織を受け入れ、法的根拠なくイラン国民を拘束・収監することで、自らイランの報復に晒されてきました。政治専門家は「発動メカニズムを作動させれば、イランは欧州の諜報活動やテロ計画に対しより積極的に対抗すると同時に、緊張を緩和し地域情勢バランスを外交の軌道に戻そうとする可能性がある」と見ています。