西側諸国の欺瞞を読み解く:INSTEXと称したメカニズムによる欧州の欺瞞
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西側諸国の欺瞞を読み解く:INSTEXと称したメカニズムによる欧州の欺瞞
2018年5月に米国がイラン核合意から離脱した後、いわゆる欧州トロイカと呼ばれる英独仏およびEUは、イランが核合意に残留することと引き換えに、米国による一方的な対イラン制裁の悪影響の軽減を約束していました。しかし、その約束が果たされることはありませんでした。
【ParsToday国際】これらの欧州諸国は、米国の対イラン制裁復活に対抗する複数の解決策を提示した後、最終的にSPV(特別目的事業体もしくは特別金融ビークル)の設立を提示しました。これは欧州がイランに提示した最後の提案であり、2018年の欧州による一連の約束不履行の最後となったものです。
米ニューヨークの国連総会の傍らで行われた1+4会合で、当時EU外務安全保障政策代表だったモゲリーニ氏は、このSPV案の目的について「イランの輸出(石油を含む)と輸入に関連する支払いの円滑化を図ることである」と述べていました。
英独仏はその後、2019年1月31日の声明で「イラン貿易取引支援機関(INSTEX:企業がドルや米銀を使わずにイランと取引できるようにし、米国による制裁を迂回する仕組み)」の「登録」を発表しました。INSTEXは米国の制裁に対抗し、核合意の恩恵をイランに保持するとされていましたが、英独仏の声明はこの考えが誤りであったことを証明しました。
まず、問題の声明はINSTEXが人道分野の貿易、すなわち食料、医薬品、医療機器のみを対象とした貿易から始めるとしていました。この制限は、米国による制裁の対象品目を輸入できないことを意味します。
第2に、INSTEXが欧州で民間企業として登録されたことは、欧州各国政府がこのメカニズムを政治的に支援する意思がないことを物語っていました。また、INSTEXの立ち上げにおけるもう1つの重要な障害は、イランによる欧州からの購買を決済するための資金確保と資金源の問題でした。欧州は米国の石油禁輸措置を全面的に支持し、イランからの石油購入を停止したため、イラン政府は欧州域内でINSTEX口座への資金チャージを行う資金を持っていなかったのです。
欧州はそれだけでなく、全く役に立つことのなかったINSTEXと引き換えに「金融活動作業部会(FATF:資金洗浄やテロリストへの資金供給を防ぐ対策の基準をつくる国際組織)」行動計画の完全履行をイランに強制しようとしたものの、実際には何の成果も得られませんでした。
イラン国民のにおいてINSTEXとして刻まれているものは、欧州の無力さと欺瞞の象徴です。欧州は米国から独立したことは一度もなく、独立した主体として見ることはできません。彼らがやったことと言えば、イランだけを核合意に留め、イランに対する不均衡な状況を定着させることであり、一方では米国による最大限の圧力政策を補完することでした。
こうした姿勢は今日まで続いており、トリガーメカニズム(2015年の核合意に基づいてイランに国連制裁を再発動するプロセス)を発動させるという示唆・脅迫にも、それが垣間見られます。
2020年7月31日、イラン・イスラム革命最高指導者のハーメネイー師は、米国が核合意から離脱した後の欧州諸国の空約束について「欧州諸国が最近やっていることは、INSTEXと呼ばれる愚鈍なゲームだった。もちろん、これも実現していない。要するに、INSTEXとはイランが他国に持つ債権を欧州諸国に渡すことであり、欧州諸国はそれで好きなものを購入し、イランに送付できる。これがINSTEXの意味だ。これ自体も有害で間違ったものであるが、欧州諸国はこれさえも履行しなかった」と語っています。