SCOへのイランの提案：新たな国際体制への足掛かり

ペゼシュキヤーン・イラン大統領がSCO上海協力機構首脳会合の演説で、欧米主導による一極主義への対抗を目的にSCO加盟国間の協力拡大に向けたイラン解決策案を提示しました。

ペゼシュキヤーン大統領は現地時間の1日月曜、中国・天津で開かれたSCO第25回首脳会議で、「違法な制裁が加盟国の経済交流に及ぼす影響の軽減に向けた金融協力強化の枠組みにおいて、イラン・イスラム共和国は金融協力強化の実際的なメカニズムとして『上海協力機構特別口座・決済』イニシアチブの強化を提案する」と語っています。

続けて「この取り組みは、加盟国間の取引における自国通貨での決済拡大および対ドル依存の削減、共同デジタルインフラの立ち上げ及び中央銀行のデジタル通貨の使用による安全かつ迅速な決済の実施、制裁圧力や流動性危機に瀕している国への支援を目的とした多国間通貨スワップ基金の創設、という3つの主な柱に基づいている」と述べました。

また「平和構築の分野では、加盟国の外相らで構成される委員会を設置して地域の平和と安全を脅かす様々な危機について意見交換や協議を行い、危機管理のための実践的な案を策定し、その後のフォローアップのメカニズムを提示する必要がある」とコメントしています。

さらに「イランはまた、その独自の地政学的および通過ルート上に位置するという立地条件を生かして、地域協力の拡大、そして思惑とする国々へのアクセス提供に必要なプラットフォームを提供する用意もある」と語りました。

イランとSCO加盟国との協力の重要性は、経済、政治、安全保障という3つの主要な分野から考察することができます。これらの協力は、イランの地域的地位を強化するとともに向けた戦略的な機会も創出することになります。

SCOに加盟すれば、世界の総人口の3分の1以上を占める中国、インド、ロシアといった国々との経済分野での連携が可能になります。イランは中国の「一帯一路」構想といった大規模プロジェクトに参加し、交通、エネルギー、技術への投資から恩恵を受けられるようになっています。アジア諸国との協力は、西側諸国による制裁の影響を緩和し、貿易・金融交流の代替ルートの創出に寄与しうると考えられます。

イランはSCO上海協力機構への積極的な参加により、地域の意思決定に大きな役割を果たし、国際会合において自国の見解を表明できるようになっています。SCOは、テロ、麻薬密売、組織犯罪といった共通の脅威に対抗するための情報・安全保障協力のプラットフォームを提供する存在です。イランが近隣諸国や地域大国と安全保障面で連携することは、西アジア・中央アジアにおける緊張緩和と安定の促進への貢献となります。

イランが経済・地理的な面で独自の特徴を有することから、他のSCO加盟国との包括的協力の拡大にとって好ましい環境が創出されています。イランは地理的に東西と南北の十字路に位置することから、地域の交通・輸送プロジェクトにおける重要なパートナーとなっています。

SCOサミットにおけるペゼシュキヤーン大統領の提案は様々な点で戦略的重要性を有し、西側諸国による一方的な制裁への対抗に重要な役割を果たしうるものです。イランは世界の多極化の柱の一つとしてのSCO役割を強調するとともに、「この組織の加盟国間の協力は西側諸国の一方的な支配をけん制し、国際関係のバランス構築の助けとなる」と述べました。

この提案は単なる制裁への対処ではなく、地域的および独立した財政面での協力を通じた国際体制の再定義を目指す試みだといえます。これらのメカニズムが実用化されれば、西側諸国による制裁の影響を事実上軽減し、加盟国は経済・政治的圧力に対する耐性を高められると考えられます。

SCOサミットは、独立諸国が一堂に会し、強硬で過剰な米・西側諸国の行動に抵抗すべくマクロ政治、経済、安全保障のアプローチの採用に向けた出発点となりうるものです。そして、このアプローチは常にイランの外交政策に欠かせない部分であり続けてきたのです。

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