対イラン制裁停止延長決議への反対;西側諸国がイランへの圧力強化を目論む理由とは?
-
対イラン制裁停止延長決議への反対;西側諸国はなぜイランへの圧力強化を求めるのか?
国連安全保障理事会において、韓国が提案した対イラン核制裁停止延長決議案が西側諸国の反対により採択を阻止されました。
【ParsToday国際】国連安保理は19日金曜の特別会合において、対イラン核関連制裁の停止延長に関して決定を下しました。韓国が提出し、中国、ロシア、パキスタン、アルジェリアが支持したこの決議案は、欧州諸国と米国の反対により、採択に必要な定足数を満たせずに終わりました。
この決議に対しロシア、中国、パキスタン、アルジェリアの4か国が賛成票を投じた一方、英国、フランス、ドイツを含む欧州諸国(E3グループ)は米国、日本、その他数か国とともに反対、ガイアナと韓国は棄権しました。この結果は、2015年のJCPOA包括的共同行動計画(通称;対イラン核合意)に基づき実施されていた、安保理による対イラン制裁停止措置の期限が過ぎたことを意味しています。
韓国が提案した決議案が採決されなかったことから、「スナップバック(対イラン制裁を復活させる仕組み。別名トリガーメカニズム)」発動メカニズムは直ちに開始されず、英独仏が制裁再開手続きに着手してから30日間の猶予期限となる2025年9月27日(グリニッジ標準時同日14時4分)までに、米国と欧州3カ国の要求を受け入れをより強くイランに迫るための措置となっています。
欧米は、イランが濃縮ウラン備蓄の増加やJCPOAを超える核活動など、公約に違反しているとして、制裁の復活を主張しています。特に欧州諸国は、トリガーメカニズムを用いた制裁復活が国際法とJCPOAの枠組みに照らし合法であると主張しています。しかし、2018年5月に米国がJCPOAから一方的に離脱した後、欧州トロイカ・英独仏とEU欧州連合は、JCPOAの堅持や自ら主張した公約履行のための実効的な行動を一切取っていないにもかかわらず、今や正論の主張者を装い、トリガーメカニズムの発動を要求しています。
一方でロシアと中国は、この措置が外交プロセスに反し、制裁の再発動は地域の緊張を高めるとして、この動きを否定しました。両国は共同声明で「対イラン国連制裁の再発動は違法かつ無効である」として、制裁を遵守せずイランとの協力継続を公式に表明しています。
複数のアナリストらの見解では、対イラン制裁停止措置延長決議が採択されなかったことは、イランの平和的核開発計画への対応をめぐる東西間の深い世界的な溝を反映しており、地域の安定と国際安全保障に広範囲にわたり影響を及ぼす可能性があると見られています。
イールヴァー二―・イラン国連大使兼常駐代表は、安保理で「対イラン制裁停止措置継続」決議が承認されなかったことを受け、「票が割れたことは、安保理内で見解の一致を見なかったことを物語っている。この決定は外交を損ない、核不拡散体制に危険な結果をもたらす恐れがある。今回の措置は性急で、不必要であり、かつ違法である。イランは決して、これを実行することを確約しない。この悲惨な結果の責任は、米国と欧州3カ国にある。彼らはイランに対し捏造された主張を提起し、保障措置の下にあるイランの核施設に対するイスラエルの侵略攻撃への道を開いた。完全な見解の一致なしに行われたこの行動は、安保理の弱体化を招くとともに外交を毀損し、核不拡散体制を危険にさらすことにあんる」と語りました。
西側諸国が制裁停止措置決議の延長に反対し、またイランの建設的な提案にも反対する目的は、イランに前例のない圧力をかけ、核、ミサイル、地域政策の分野で米国と欧州の違法な要求をイランに呑ませることにあると見られます。このことは、西側諸国のアナリストらの間でも指摘されています。
米ワシントンのクインシー研究所のトリタ・パルスィ執行副所長はこの問題に関する記録において「アナリストらによれば、イランの核問題はロシア、ウクライナ、そして大西洋をまたいでの関係の将来をめぐり、現在欧米諸国の間で繰り広げられている地政学的な競争での口実に過ぎないというのが現実だ。端的に言えば、イランとその核開発計画は、西側諸国の目には本命の問題というより、より大きなゲームの道具に過ぎなくなっている」と述べました。
同副所長によれば、「イランはスナップバックメカニズムの発動阻止提案を出しており、その提案の内容は、欧州の決定を数ヶ月延期する代わりに、ウラン備蓄の60%を返還・希釈するというものである」との複数の報道がなされているということです。イランはまた、米国に対し安全保障の確約および、次の段階での一部制裁解除を要求しています。しかし、トランプ米政権に近い筋によれば、米国は最大限の圧力行使の継続を期待しているため、このような提案を拒否するだろうということです。
したがって、欧州諸国は、対イラン制裁において米国との連携を強化すべく、またロシアへの対抗という枠組みの中で、そして対ロシア協力に対するイランへの処罰として、自らの手持ちカードであるトリガーメカニズムをイランへの圧力強化の手段として利用することになります。一方、イラン側は同国のアラーグチー外相を通じて、この行動の違法性および、欧州がトリガーメカニズムを含むJCPOAのメカニズムを活用する資格がないことを繰り返し強調してきました。その理由は、これらの諸国が自らの義務を履行しておらず、事実上JCPOAに違反していることによります。