インドが米国の制裁圧力下で今なおイラン南東部チャーバハール港湾開発を強調する理由とは?
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アメリカによる新たな圧力行使と制裁免除の取り消しにもかかわらず、インドが依然としてイラン南東部スィ―スターンバルーチェスターン州にあるチャーバハール港湾の開発を強調しています。
(last modified 2025-10-27T05:05:03+00:00 )
9月 30, 2025 16:44 Asia/Tokyo
  • インドとイラン南東部チャーバハール港湾開発
    インドとイラン南東部チャーバハール港湾開発

アメリカによる新たな圧力行使と制裁免除の取り消しにもかかわらず、インドが依然としてイラン南東部スィ―スターンバルーチェスターン州にあるチャーバハール港湾の開発を強調しています。

【ParsToday国際】インドのシンクタンク、Observer Research Foundation (オブザーバー・リサーチ財団)西アジア部門のカビル・タネジャ(Kabir Taneja)研究員は「インドがチャーバハール港開発計画に注力しているのは、同国が近隣諸国、特にイランに重点を置く政策の結果によるものである。同港はインドにとって中央アジアと西アジアにつながる戦略的な出入り口として知られており、米国による制裁を示唆しての脅迫にもかかわらず、その開発は継続すると予想される」との見方を示しました。

また「チャーバハールはアフガニスタンや中央アジア諸国とインドの貿易を促進するだろう」とし、「チャーバハールはインドの利益にとって多面的な側面を持ち、この問題は貿易だけに限られない」と語っています。

同研究員の視点では、アメリカがチャーバハール港湾開発計画を制裁免除から外すことによる直接的な結果として、この港湾とその関連プロジェクトの開発プロセスに影響を及ぼす可能性があげられます。しかし、昨年その開発を目的とした10か年協定が締結され、この協定に基づきインドは10年以上チャーバハール港の開発・運営を約束していることから、インドがこのプロジェクトを放棄することはないと考えられています。

このインド人専門家の発言が提起されたのは、米国務省が29日月曜からに新たな対イラン制裁が発効し、制裁免除が取り消された後には、チャーバハール港に関与する個人および法人が制裁の対象となる可能性があると発表したことを受けてのことです。この制裁免除はアメリカの第1次トランプ政権時代の2018年に認められ、チャーバハール港はイランのインフラに対する米国の制裁から除外されていましたが、このほど制裁免除が取り消されました。

インド人アナリストらによれば、米国がJCPOA包括的共同行動計画(通称;対イラン核合意)から離脱した後、インドは合意の枠組み内で米国の目標に沿うべくイランからの原油輸入を削減し、それによって大きな打撃を受けました。そのため、インド当局はその後、こうしたシナリオへの対処において重要な教訓を学んでおり、これはインド政府の戦略的判断にとって極めて重要だとされています。

ここで注目すべきことは、インドを直接標的とした、チャーバハール港に対する米国の新たな制裁が発動された中で、トランプ米大統領によるロシア産原油輸入への50%の関税導入と、米国における熟練労働者向けH-1Bビザ取得費用の大幅引き上げを受けて、インド・アメリカ間の緊張が高まっていることです。新たな関税とH-1Bビザ取得費用の上昇は短期的にはインドにとって悪影響となるものの、チャーバハール港プロジェクトがインドに与える影響のほどは長期的に見なければ判断できません。

米国がチャーバハール港湾に対する制裁免除措置を停止したにもかかわらず、インドは自国の重要な戦略・経済的利益を理由に、同港の開発を強く求め続けています。前述したように、この港湾はインドにとってアフガンと中央アジアにつながる玄関口であり、パキスタンを迂回する代替回廊でもあります。インドがチャーバハールでの協力を継続する理由は、単なる貿易にとどまらず、深い戦略的側面を帯びているのです。

戦略・地政学的側面

- エネルギーと貿易の安全保障の確保:チャーバハール港湾を通じ中央アジアに直接アクセスすること、輸出入ルートの短縮とコスト削減につながるだけでなく、安全保障上の利点にもなる。このルートにより、インドはかなりの度合いでパキスタンとの政治的変動・軋轢の影響から守られる

- 地域における力の均衡維持:パキスタン・グワーデル港への中国の投資におり、地域における中国の影響力が高まっている。こうした動向への対応策がインドによるチャーバハール港湾開発であり、これは中国とパキスタンの緊密な協力関係に対抗するバランス構築を狙ったものである。この港湾の開発は、イランとインドにとって地域的側面で重要な利点であると考えられている

経済・通商の利益

チャーバハール港の開発は、以下のようにインドに具体的な経済的利益をもたらすことになります:

- 輸送にかかるコストと時間の削減:チャーバハールを経由する南北国際回廊に加わることで、インドからヨーロッパへの物資輸送にかかる時間が45日から約25日に短縮され、インドの貿易生産性が大幅に向上する

- 新たな市場へのアクセス:チャーバハール港は、インドをアフガンおよび中央アジアという可能性の高い市場と結び付けるほか、物品輸出の基盤を提供し、インドの経済的影響力を高める。このプロジェクトはインドとイランの共通の利益を反映し、地域連結性の重要な柱として両国間の関係を強化するものである

インドは継続的な協力を公式に強調

インドは公式かつ現実的に、このプロジェクトに対する約束順守を表明しました。今月25日にはインド国会議員団が第21回アジア太平洋国会議員会議の傍ら、イラン国会環境派のソマイエ・ラフィーイー党首と会談し、トランプ米政権によるチャーバハール港湾への制裁免除停止に言及しつつ、インドとして今後も引き続きチャーバハール開発計画を支援していくことを強調しています。この国会議員団の団長も「このプロジェクトがチャーバハール経由での中央アジアへのアクセスという点でインド経済にとって重要であることから引き続きこのプロジェクトを支援し、国会でこの問題を追跡していく」と強調しました。この姿勢は、今後の一連の障壁にもかかわらず、このプロジェクトを推進していくというインドの政治的意思を反映したものとなっています。

 

 


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