中国とロシアが米国提案のガザ決議に反対した理由とは?
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国連安全保障理事会の様子
中国とロシアが、米国の提案によるガザ関連決議に反対を表明しました。
【ParsToday国際】米国が提案したガザ決議案が国連安全保障理事会に提出された後、安保理の常任理事国であるロシアと中国は、決議案から「平和委員会」を完全に削除するよう求めており、修正案に対する正式な異議を申し立てました。
ロシアと中国は14日金曜、ガザ地区に関する安保理決議案の修正版に対し正式に抗議しました。米国が提出したこの決議案は、ドナルド・トランプ米大統領による「ガザ地区停戦・復興のための20項目の計画」に基づくもので、2027年末までに同地区に治安維持などを担う国際安定化部隊を派遣することに重点を置いています。
今月13日に公表された改訂草案には、当初の批判に対処すべく軽微な修正が加えられたものの、依然としてガザ統治のための暫定的な「平和委員会」の設置が主張されています。この委員会は、安定化部隊を監督し、ガザ地区の完全な武装解除、パレスチナ警察の訓練、エジプトおよびシオニスト政権イスラエルとの境界監視、人道支援の促進といった責任を負うことになっています。
ロシアと中国は、安保理における拒否権を持つ常任理事国として、「平和委員会」を草案から完全に削除するよう求めています。その理由として両国の代表者らは、草案の半分以上が「不十分」「曖昧」「重要な詳細が欠如している」としており、「安定化部隊は米国やイスラエルの影響を受ける可能性のある臨時機関ではなく、安保理の直接的な監督下でのみ活動すべきだ」と主張しています。
またこの両国は、ガザ地区内の外国軍に対する国連の完全な監視を主張すると共に、この草案をパレスチナ人の権利、特に独立国家パレスチナ樹立への明確な道筋を保証するには不十分だと考えています。また「実質的な変更がなければこの草案に拒否権を発動する」とも警告しています。
中国とロシアの反対理由:
1. 米国とイスラエルの影響力に対する懸念
米国が提案した決議には、ガザ地区を統治するための暫定的な「平和委員会」の設置が盛り込まれています。この委員会は、ガザ地区の完全な武装解除、パレスチナ警察の訓練、エジプトおよびイスラエルとの境界線の監視、人道支援の促進といった任務を担うとされています。しかし、中国とロシアは、このような委員会が米国とイスラエルの直接的な影響力下に入り、事実上ガザにおけるアメリカとイスラエルの利益を強化するための手段になりかねない、と考えています。
2. パレスチナ人の役割は蚊帳の外
問題の草案では、パレスチナ自治政府はガザ地区の移行管理において一切の役割も担っていないことになっています。中国とロシアの視点では、これはパレスチナ人の自決権を無視することを意味し、計画の政治的正当性に疑問が生じる可能性があります。
3. 安保理の弱体化
ロシアと中国の代表者らは、安定化部隊があくまでも安保理の直接的な監督下でのみ活動すべきであり、特別機関によるものではないことを強調しています。そして、計画案の文言の半分以上が「曖昧で詳細が欠けている」とし、この計画が安保理の立場を弱めるだろうと見ています。
4. 米国との地政学的競争
中国とロシアの反対は、米国との地政学的競争という文脈でも分析できます。近年、この両国は世界の重要な地域、特に西アジアにおける米国の影響力の低下に努めてきました。ガザにおける米国の計画への反対は、こうしたマクロ政策の一環だといえます。
中国とロシアの反対による結果と影響:
1. 国際的合意の不成立
中露の反対により、安保理はガザ地区における国際部隊の編成について合意成立に至りませんでした。その結果、ガザ地区での停戦と復興に関する意思決定プロセスはさらに遅延し、複雑化しています。
2. アラブ諸国の役割の増大
中国とロシアは一部のアラブ諸国とともに、今回の草案に反対を表明しています。これらの諸国の見解一致は、アラブ諸国もガザ地区の統治における米国の影響力に神経を尖らせており、将来的には交渉において益々積極的な役割を担う可能性があることを物語っています。安保理メンバーであるアルジェリアやUAEアラブ首長国連邦を含むアラブ諸国は、ガザ地区の統治においてパレスチナ自治政府が暫定的な役割を果たしていないことに懸念を表明しています。中でもUAEは、明確な枠組みが確立されていない安定化部隊には参加しない旨を表明しており、パキスタンとヨルダンも、いかなる決議においても国家樹立を含むパレスチナ人の権利の承認を求めています。さらに、ヨルダンのアブドラ2世国王は、各国の参加を促すため、部隊は「実施」ではなく「平和維持」に重点を置くべきだと強調しています。
3. 継続する人道危機
和平代表団をめぐる合意が成立していないことは、ガザにおける人道支援と復興の促進のための明確なメカニズムが欠如していることを意味します。このことは、ガザ地区における人道危機の長期化を招く可能性があります。
4. 深まる東西の分断
今回の反対により、安保理内での東西(西側諸国と中ロ)の分断が改めて浮き彫りになりました。米国とその同盟国がガザ危機の直接的な管理を求める一方、中国とロシアは安保理の独立した役割とパレスチナ人の権利の実現を主張しています。この分断により、西アジアの政治・安全保障情勢がさらに複雑化することも考えられます。
結論
米国が提案したガザ決議に中国とロシアが反対しているのは、アメリカとイスラエルの影響力、パレスチナの役割の消滅、そして安保理の弱体化への懸念が理由です。この反対は、いわゆる和平プロセスとガザの将来に重要な意味合いを持っています。この行動は、国際的な見解一致の不成立、人道危機の継続、西側・中露間の地政学的競争の激化といった結果を生み出すことになります。結局のところ、中露による今回の反対は、ガザの将来がパレスチナ国内の合意だけでなく、世界の大国間の競争にも結びついていることを物語っています。

