中南米経済ニュース|緊張と変化の波、米政策の渦中の中南米
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中南米諸国は米国の政策の渦中に
米国の軍事的脅威からエネルギー資源を守ろうとする南米ベネズエラ、中南米からの輸入関税の引き下げによる国内のインフレ制御に向けた米国の取り組みと関税に対する米国企業の抗議、そして中南米での影響力・進出をめぐるフランスと中国の競争は、この地域の経済・地政学面での情勢変化の複雑な様相を描き出しています。
現在、中南米地域は再び地政学・経済面で脚光を浴びています。ベネズエラ・米国間の緊張の高まり、そして国内インフレ抑制のための米国政府の貿易戦術の転換は表裏一体というべきものです。それは、アメリカの攻撃的な精神、そして旧来からの後進国における覇権維持と国内の経済的不満への制御という二つの側面を指します。こうした動きがみられるのは、大規模な関税などの政策の帰結が米国の経済界、さらにはテクノロジー業界関係者の抗議を招いている中でのことです。舞台裏では、開発援助の影で経済的影響力をめぐるフランスなどの域外勢力の競争により、中南米情勢は益々複雑化しています。
【Pars Today国際】このニュース記事では、中南米諸国の経済情勢を分析していきます。
ベネズエラ:エネルギー資源に対するレッドライン
ベネズエラのデルシー・ロドリゲス副大統領は、OPEC石油輸出国機構プラス閣僚会合において、ベネズエラ領空封鎖という米国の行動を違法なものだとし、「わが国は武力により、自国の天然資源とエネルギー資源を守る」と警告しました。この発言は、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領のメッセージの一部です。この発言においては、比類なき埋蔵量を誇るベネズエラの石油資源を奪うために「致死的な軍事力の行使」を企てているとして、アメリカが非難の的になっていました。
この厳しい姿勢は、ドナルド・トランプ米大統領が最近ベネズエラ空域の完全封鎖を発表したことに対する直接的な反応でした。米国はベネズエラの麻薬密輸対策が十分でないとして非難し、空母ジェラルド・R・フォードや原子力潜水艦を含む大規模な部隊をカリブ海に派遣しました。複数の報道によれば、去る9月以来、少なくとも20隻の船舶が米軍によって破壊され、80人以上が死亡しています。こうした緊張は、両国の亀裂の深さに加えて、米国大統領選挙を前にさらなる衝突が起こりうることを物語っています。
アメリカの戦術転換:国内の混乱鎮静化を狙った関税
トランプ大統領は興味深い動向として、ベネズエラに対する圧力強化の一方で、通商面で他の中南米諸国に対する姿勢を軟化させています。この転換の主な目的は、生活費を下げ、国内の有権者の怒りを鎮めることにあります。アメリカはアルゼンチン、エクアドル、エルサルバドル、グアテマラからの一部製品に対する関税を撤廃すると発表しました。
スコット・ベッセント米財務長官は、この措置によりコーヒー、バナナ、その他の果物が値下がりすることを明らかにしました。今後2週間以内に最終決定される予定のこの合意は、去る10月にアジア諸国と締結された協定に類似しており、米国企業の市場アクセス拡大との引き換えによる合意です。アナリストらは、この動きが与党・共和党の選挙での敗北とインフレへの懸念の高まりに対する直接的な反応だと見ています。
開発援助;中南米における影響力拡大の手段
こうした情勢変化の中、フランスは欧州の一員として中南米地域において積極的な存在感を示しています。AFDフランス開発庁は、開発援助を名目に中南米におけるフランスの経済的影響力の維持・再構築を目指しています。複数の報道によりますと、フランス政府直轄のこの開発庁は、再生可能エネルギーやインフラ整備プロジェクトに対する低金利融資の提により、拡大する中国の影響力に対抗し、フランス企業の市場拡大を図るための手段となっている模様です。
2021年までに、AFDの資本金から約20億ユーロがこの地域に投入されました。ブラジルにおける仏企業エンジーとの提携による太陽光発電開発や、ペルーでの建設・インフラ企業ヴァンシによる道路改修といったプロジェクトは、インフラ整備に貢献する一方で、批評家の間ではフランス企業への技術的・財政的依存を高めていると批判されています。こうしたアプローチは、「持続可能な開発」という新たな枠組みにおいて、不平等な関係が依然として続いていることを反映しています。
総括として、今日の中南米諸国は複数の勢力間の対立と相互作用の場と化しており、その結果が地域の経済・政治的将来を決定づけることになると言えます。ここで1つの疑問が浮上してきます。それは、中南米諸国は果たしてこうした外部勢力の場をうまく利用して均衡を保ち、国益を増進できるのか、それとも再び新たな依存関係の罠に陥ってしまうのか、というものです。この問いへの答えは、外交官事務所だけでなく、この地域の諸都市の路上やアメリカの中小企業の意識の中で形成されつつあるのです。

