米国が中国抑止目的でアジア同盟国に軍事費の増額を迫る
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米国の新国家安全保障戦略ではアジアの同盟国に対する米の期待がくっきり
米国政府が打ち出した新たな国家安全保障戦略は、インド太平洋地域を今世紀の最も重要な地政学的舞台と位置づけるとともに、アジアの同盟国に対し、防衛費の増額により中国の抑止にさらなる積極的な役割を果たすよう求めています。
米ホワイトハウスは最新の国家安全保障戦略文書において、アメリカの地政学的優先事項に関する新たな見解を提示しました。33ページにわたるこの文書からは、アメリカの現政権がこれまで以上に中国の台頭を抑制し、アジアにおける同盟国ネットワークの強化に重点を置いていることが見て取れます。最近公開されたこの文書は、中国への抑止力の必要性を強調するとともに、主要な同盟国に対し国防・安全保障支出へのさらなる貢献を求めています。
【ParsToday国際】この記事では、アメリカの新国家安全保障戦略におけるアジア同盟国への期待を、以下のように読み解いていきます。
インド太平洋を地政学的な「戦場」として重視
米国の国家安全保障戦略においては、インド太平洋地域が、中国が急速に軍事力を近代化し経済的影響力を拡大している「重要な戦場」と位置付けられています。アメリカ政権は、戦略的優位性を維持するにはアジアの同盟国が集団防衛においてもっと大きな責任を担う必要があると考えているのです。これについて、この戦略文書では「米国は単独で戦略的防衛を守れず、また単独で守ってはならない」と述べられています。ちなみに、この防衛ラインには日本から台湾、フィリピンに至る島嶼列である第一列島線が含まれており、事実上中国の海上国境を囲んだ形となっています。
日本、韓国、およびNATO加盟国への圧力強化
この戦略の主要な柱の一つは、アジアにおけるアメリカの同盟国である日本と韓国に対する軍事費の増額要求です。米国の国家安全保障戦略文書は、これらの国々が地域の脅威に対してより積極的な役割を果たせるよう、抑止力強化の必要性を強調しています。同時に、NATO北大西洋条約機構加盟国も2035年までに国防費をGDP国内総生産の2%から5%に増額するよう迫られています。これは、世界の安全保障の財政負担の一部を同盟国に負担させようとする米国の工作を反映しています。
アメリカは対台湾政策を継続中
加えて、国家安全保障戦略の台湾に関する部分では、現状のいかなる一方的な変更への反対という米国の長年の立場が改めて強調されています。しかし、アメリカの現政権は歴代政権とは異なり、台湾に対する無条件の支援を控え、軍事的抑止力と地域の安定維持に重点を置いています。
この戦略文書は、台湾が半導体生産において重要な役割を果たしている上、世界貿易の約3分の1が台湾海域を通過することからも、アメリカにとって台湾周辺の安定が極めて重要であることを強調しています。
中国に対する経済・安全保障政策の見直し
アメリカ政府は、中国に対する自国市場の開放では中国を法規範に基づく国際体制へと促しきれなかったとし、これまでの対中政策を批判してきました。そのため、米国は中国との経済関係に「均衡」を持たせようとしています。
新たな安全保障上の優先事項に北朝鮮は含まれず
米国の国家安全保障戦略文書において注目すべき点は、北朝鮮問題への言及がないことです。アナリストらは、このことは米国政府の政策課題における北朝鮮の核軍縮の優先順位の低下を反映していると見ています。

