石油・ガス関連ニュース | 期待と地政学的緊張の渦に揺れる石油市場
https://parstoday.ir/ja/news/world-i130858-石油_ガス関連ニュース_期待と地政学的緊張の渦に揺れる石油市場
FRB米連邦準備制度理事会による利下げへの期待および、ロシアとベネズエラにおける地政学的緊張の高まりに対する懸念から、原油価格が2週間ぶりの高値で安定しています。
(last modified 2025-12-08T17:28:57+00:00 )
12月 09, 2025 02:24 Asia/Tokyo
  • 怒涛の中の石油市場
    怒涛の中の石油市場

FRB米連邦準備制度理事会による利下げへの期待および、ロシアとベネズエラにおける地政学的緊張の高まりに対する懸念から、原油価格が2週間ぶりの高値で安定しています。

世界の石油・ガス市場は、今や複雑かつ多面的な戦いの舞台となっています。その戦いは中央銀行の決定、大国の地政学的駆け引き、そして供給国による市場シェア維持への努力がすべて「価格」という一点に集約されるものです。投資家の期待がFRBに注がれ、金利引き下げへの期待が経済の繁栄とエネルギー需要の増加という吉報をもたらしている一方、米国防総省とロシア大統領府の作戦計画は、ウクライナと南米ベネズエラにおける緊張の激化と緩和に関する様々なシナリオを描いています。これらの緊張は、それぞれ数百万バレルの石油の流れを阻害する可能性が指摘されています。

【ParsToday国際】この記事では、世界の石油市場の動向を読み解いていきます。

金融政策と地政学的緊張の間での価格変動

ヨーロッパ産主要銘柄のブレント原油は0.14%上昇して1バレル63.84ドルに、米国産軽油WTIウエスト・テキサス・インターミディエイトは0.13%上昇し、1バレル60.16ドルに達しました。英ロンドン証券取引所ファイナンシャル・グループ(LSEG)のデータによりますと、投資家はFRB連邦準備制度理事会が今回の会合で利下げに踏み切ると84%確信しており、利下げは経済成長とエネルギー需要を押し上げる可能性があります。しかし、今回の会合は「近年で最も意見が分かれる会合の一つ」と評されており、その結果は市場の方向性を変えるかもしれません。

双方向のリスク:ウクライナ和平と対ロシア制裁

一方、地政学リスクは強力な要因として作用します。ANZオーストラリア・ニュージーランド銀行のアナリストは「トランプ米大統領によるウクライナ和平への努力の結果次第では、原油供給量が日量最大200万バレル変動する可能性がある」と警告しています。停戦は原油価格の主な下振れリスクであり、ロシアの石油インフラへの継続的な損害は大きな上振れリスクとなります。同時に、G7・先進7カ国とEU欧州連合の間で、ロシア産原油の「価格上限」を「全面的な海上禁輸」に置き換える協議が進められており、世界第2位の産油国であるロシアからの供給がさらに制限される可能性が指摘されています。

国際舞台におけるエネルギー関係勢力

カタールのサード・アル・カビ・エネルギー大臣は、同国首都ドーハでの経済フォーラムにおいて「カタールとして世界の液化天然ガス(LNG)需要を確保する用意がある」と強調しました。アル・カビ大臣は「カタールのLNG生産量が年間7700万トンから1億4200万トンに増加し、これには米国ゴールデンパスLNGターミナル社からの1800万トンも含まれる」と発表したものの、追加供給への投資不足が価格上昇につながる可能性ありとして懸念を表明しています。また、AI人工知能によるエネルギー需要の高まりにも言及し、「AIは24時間365日エネルギーを必要とする工場のようなものだ」とコメントしました。

カザフスタン、無人機攻撃を受け輸出ルートを変更

ロシアの黒海沿岸まで続くカスピアン・パイプライン・コンソーシアム施設に対するウクライナの攻撃を受け、中央アジア・カザフスタンは代替ルートであるバクー(アゼルバイジャン)・トビリシ(ジョージア)・ジェイハン(トルコ)・パイプライン経由の輸出を30%増加せざるを得なくなりました。このルート経由の輸出量は、今月中には日量約4万7000バレルに達すると予想されています。この変更は、度重なる無人機攻撃によりロシアのパイプラインシステムが「逼迫」しており、カザフスタン産原油の供給能力が不足していることを受けて行われました。

ベネズエラ:脅迫の焦点およびエネルギー市場における機会

米国軍事資産の約30%が中米カリブ海に集中していることから、石油市場に深刻な不確実要素が生じています。南米ベネズエラの産油量は日量300万バレルから120万バレルに減少し、現在では原油輸出の95%が中国に直接輸出されています。そのため、米国による攻撃の可能性は、中国のエネルギー安全保障を直接脅かす形となります。アナリストらは、米国がこのような圧力行使に出る目的の一つは、西半球における中国の影響力拡大への対抗にあると考えています。

戦略的影響:イランとロシアの重要な役割

米国による対ベネズエラ軍事攻撃というシナリオは、世界のエネルギー地図を塗り替える可能性があります。ベネズエラ産原油の中国への流入が遮断されれば、その空白を埋める上で、イランやロシアといった供給国の役割が大きく増大する可能性が考えられます。米国の行動によってベネズエラ産原油が欧米市場に復帰すれば、米国市場における西アジア産油国の競争は激化し、東アジアで新たな買い手を見つける必要性がさらに高まると見られます。

国際石油市場は、カリブ海諸国の動向を注視しています。それは、紛争が激化すれば、カリブ海諸国が再び原油価格の変動の温床となり、特に中国にとってエネルギー安全保障上の均衡が変化しかねないからです。

現在の状況は、石油市場が重大な岐路に立っていることを示唆しています。つまり、金融緩和政策サイクルが需要を刺激する可能性がある一方で、欧州と中南米における地政学的緊張が供給を脅かすかもしれないということです。また、カタールなどの国はガス生産量の増加によって将来の需要に対応しようとしており、一方で紛争により石油のトランジット輸送ルートが変化しつつあります。

この複雑な方程式が最終的にもたらす結果は、戦略会議、中央銀行、大統領官邸での決定にかかっており、それらの決定はそれぞれ、今後数ヶ月間の世界のエネルギー価格の動向を決定づけるかもしれないのです。

 

 


ラジオ日本語のソーシャルメディアもご覧ください。

Instagram Twitter