貧困国を無視する欧州:人権スローガンが色あせる時
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欧州の対アフリカ援助は対ウクライナ支援の犠牲に
欧州が、貧しいアフリカ諸国への支援よりもウクライナへの援助を優先しています。
【ParsToday国際】欧州諸国は開発予算と人道援助を大幅に削減し、地政学的優先事項のためにアフリカと中南米の貧困・飢餓対処プログラムを犠牲にしてきた格好となっています。
英紙ガーディアンはこの問題について「近年のヨーロッパにおいては、貧困・飢餓と闘うための人道支援という概念は、各国がウクライナと軍事費に予算を割り当てる中で『地政学的なゲーム』に取って代わられてきた」と報じました。
実際、欧州諸国は、第2次トランプ米政権下でのUSAID米国国際開発庁による援助の脆弱化と大幅な削減に合わせて財政上の優先順位を変えており、アフリカの保健・飢餓対策プログラムはこうした変更の犠牲になると考えられています。
スウェーデンは2025年12月、アフリカのモザンビーク、ジンバブエ、リベリア、タンザニア、そして南米ボリビア向けの開発予算を100億クローネ(約8億ポンド)削減すると発表しました。また、ドイツも「欧州の優先課題」に重点を置く意向を支援しており、2026年の人道支援予算を2025年の半分以下となる10億5000万ユーロ(9億2000万ポンド)と発表しています。
他の欧州諸国もこれに追随しており、英国は軍事費への充当を目的に人道援助を削減し、ノルウェーはアフリカ諸国ではなくウクライナを支援するための予算を増額しました。
フランスも人道援助予算を7億ユーロ削減し、食糧援助を60%削減する一方で、軍事問題には67億ユーロを割り当てました
専門家らは、「こうした決定により地域の危機対応システムが弱体化し、モザンビーク、ジンバブエ、タンザニアなどのアフリカ諸国で近年達成された子どもの健康・教育面での成果が危うくなるだろう」と警告しています。
近年、欧州はウクライナ戦争の勃発を、安全保障と政治における最重要課題の1つとして捉えてきました。この戦争勃発当初から、欧州諸国は前代未聞のスピードと集中度によりウクライナに対し、財政、軍事、そして政治面で支援提供してきました。数十億ユーロに上る現金援助、最新鋭装備の提供、国際フォーラムにおける外交支援は、欧州がウクライナ防衛のために多大な犠牲を払う覚悟があることを物語っています。しかし同時に、世界の他の地域、特にアフリカ大陸に対する欧州の優先順位については、深刻な疑問が提起されています。アフリカ大陸は長年にわたり貧困、内戦、疾病、人道危機に苦しみながらも、これまで十分な配慮・注目の対象にはなりませんでした。欧州諸国、特に英国、フランス、ドイツといった宗主国は、アフリカ諸国に対する数世紀にわたる植民地主義と搾取によって、好ましくないこれらの現状の有責者とされています。
特にアフリカ諸国は、こうしたアプローチを繰り返し批判してきました。彼らは、ウクライナ危機においてヨーロッパが二重基準を適用していると考えています。数十億ユーロもの資金がウクライナに割り当てられている一方で、多くの貧困国は依然として飢餓、医薬品の不足、そして重要なインフラの不足に対処するための基本的な支援を待つ状態に置かれています。この状況により、ヨーロッパが常に重視してきた人権スローガンは、実際にはその意味を失い、特定の利益を推進するための政治的手段と化しているのです。
道義的および法的観点から見れば、この矛盾は明らかです。人権という形での人道問題への配慮が普遍的な原則であるなら、それは特定の地域に限定されるべきではありません。貧困国を無視しながらウクライナに莫大な資源を投入することは、人道的基準が実際には地政学的配慮によって覆い隠されていることを示しており、このようなアプローチは欧州に対する世界の信頼を低下させると共に、グローバル・ノース(主に北半球の先進国)とグローバル・サウス(主に南半球に位置する第3世界)の間に深い溝を生み出すことになります。
また戦略的な観点から見ると、このような政策はヨーロッパにも悪影響を及ぼす可能性があります。アフリカにおける人道危機と新たな移民発生の波を無視すれば、政治的不安定と過激主義の台頭をまねき、それは遅かれ早かれヨーロッパにも影響を及ぼすことは必至です。したがって、貧困国のニーズを考慮せずにウクライナに一方的に支援対象の焦点を絞ることは道義的に正当化できないのみならず、安全保障と経済の面でもヨーロッパにとって有害となりかねません。
最後の点として、ヨーロッパが人間的価値の固守を主張し続けたいなら、政策をよりバランスの取れたものにする必要があります。ウクライナへの援助は、ヨーロッパ諸国の政治・安全保障上の利益にとって不可欠ではあるものの、貧しいアフリカ諸国の数百万人もの人々を無視する代償を払うべきではありません。人権スローガンが真の意味と信頼性を維持できるのは、包括的かつ公正なアプローチのみです。そうでなければ、ヨーロッパの人権に関する主張は、単なる空虚な政治スローガンに成り下がるでしょう。

