空想の中の取引;対イラン合意に関するトランプ氏の見解は現実ではなく希望的観測
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トランプ米大統領の主張内容と現実の乖離ぶりは、外交上の誤解ではなく、同氏の勝利宣言の根底にある隠れた失敗の兆候だと言えます。
(last modified 2026-05-29T22:45:01+00:00 )
May 30, 2026 07:40 Asia/Tokyo
  • ドナルド・トランプ米大統領
    ドナルド・トランプ米大統領

トランプ米大統領の主張内容と現実の乖離ぶりは、外交上の誤解ではなく、同氏の勝利宣言の根底にある隠れた失敗の兆候だと言えます。

トランプ大統領は一方的な内容の声明を発表し、再び事態を混乱させた格好となりました。

【ParsToday国際】数時間前にはイランが合意案の最終文書をまだアメリカ側に送付していないと公式発表していた一方で、トランプ大統領は決定的勝利を狙い、実際にはイランのいつもの立場を繰り返しているか、イランが威信のレッドラインとみなす問題を強調している条項を交渉の結果として提示しました。トランプ大統領の発言とイランの主張との間のこの大きな食い違いは、外交の道がまだ平坦にはなっていないこと、そしてホワイトハウスから語られていることは、拘束力のある共同文書というよりは、壮大なはったり、もしく政治的な願望に近いことを示しています。

最近の主張の本質に疑問を投げかける第1の、また最も重要な点は、その内容があまりにも一方的であるということです。トランプ大統領は、この合意がいかにも当事者間で合意が成立したかのように語っていますが、実際にはイランは、メディアで流れている14条項の最終版を米国に正式に提出していません。イラン外務省の報道官もこれらの主張に対し、この点を明確に強調しています。したがって、トランプ大統領が合意と称するものは、イラン側の視点からすればいずれも最終的なものではありません。駆け引きの原則は「全ての内容が合意されないうちは、何も合意されていない」という前提に基づいています。この交渉の黄金律は事実上、ホワイトハウスの玉虫色の主張の根幹を崩すものだと言えます。

件の主張の本質に迫ると、その矛盾がより明白に見えてきます。トランプ氏はイランが核兵器開発を行わないという約束を新たな切り札としていますが、この主張はイランの核外交が始まってから20年も前から繰り返されてきたものです。イラン側は核兵器獲得を求めない旨を繰り返し表明しており、このことはイランNPTが核兵器不拡散条約への残留を主張していることや、先だって殉教した先代イランイスラム革命最高指導者アリー・ハーメネイー師が大量破壊兵器の使用を禁忌とする宗教的教令を出したことによって裏付けられています。したがって、トランプ氏がイランから新たにメリットを得たなどと声高に叫んでいるのは決してイランの後退や譲歩ではなく、同国が公然たる不変の立場を改めて表明したに過ぎません。

しかし、トランプ氏の主張の中で最も物議を醸しているのは、ホルモズ海峡およびイラン側による同海峡の完全支配に関する部分です。トランプ大統領は、ホルモズ海峡を戦前の状態に戻し、機雷とされるものの無力化という幻想を語っていますが、イランはこれを空想だとして明確に否定し、「ホルモズ海峡の状況は決して戦争前の状態には戻らない」と強調しています。

現実には、米国はあらゆる力を尽くしたものの、戦争による緊張状態にあったこの期間中、この重要な水路に対するイランの主権を決して排除できていません。興味深いことに、トランプ大統領は「海上封鎖の解除」について語っているものの、これはイランが戦争終結の主要な前提条件の一つとしていたことを認識していないのです。イラン側は「船舶が以前のような自由航行が可能となり、実質的にこの作戦封鎖が解除されるまではホルモズ海峡の監視方策を変更しない」と述べています。こうした中で留意すべき点は、そもそもイランは船舶交通による料金・通航料の徴収を拒否しており、徴収しているのは交通の安全確保のために提供するサービスの費用のみである、という点です。

また、トランプ大統領がホルモズ海峡で米国が機雷除去を行っていると主張している点も、完全に事実無根です。イランは決して、この海峡における機雷の存在を公式に認めておらず、船舶の安全な航行確保を一貫して強調しています。一方で、米国軍は許可なくホルモズ海峡への艦隊配備さえできていないにもかかわらず、どうやって機雷を除去できたのか、という疑問が浮上します。トランプ大統領のこの発言は、作戦上の現実というよりは、米国民向けの空想的な作り話のように思えてきます。

さらに核問題に関してもイランの濃縮ウランの運命の決定というトランプ氏の要求は、明らかに空想に過ぎません。イラン側は「濃縮ウランの備蓄に関する決定は、希釈あるいは貯蔵であれいずれも、完全に自国の国内ニーズと主権的決定に依拠するもので、60日間の交渉期間中に、戦争終結の条件が完全に満たされた後にのみ、しかもイランの同意があって初めて可能になる」と明言しています。しかし、こうした行き過ぎた発言の間には、アメリカ側からの潜在的な後退が見られます。トランプはもはや「濃縮ウランを米国または第三国に移送する」とは言わなくなっており、少なくともこの点においては、言葉の応酬は収まったと言えるでしょう。

米国民に向けたトランプ氏の主張内容の中で最も際立っているのは、金銭的な支払がないという点だと思われます。彼は、この合意が米国にとって金銭的な負担なしに成立したと吹聴していますが、イランが戦闘停止の重要な条件として挙げているのは、世界中にあるイラン資産の即時かつ同時的な凍結解除です。イランは、戦争終結は凍結資産の解除を伴う合意の締結が条件と考えており、イランの見解では、この2つは切り離せないものとされています。

しかし、米国・イラン間の溝の真相を明らかにすることは、トランプ大統領が意図的に無視してきた問題であり、非公式な情報によれば、これらはイランのレッドラインとされています。その第1の点は、イラン近隣諸国の軍事基地からの米軍撤退であり、これはイランにとって極めて重要な安全保障となります。第2に、米国は60日間の追加交渉期間中に新たな制裁を課さないことを約束することです。第3の点、そしておそらく最も負担の大きい条項は、アメリカが戦争復興と賠償として少なくとも3000億ドルを提供するという約束です。そして最後に、合意署名と同時にすべての制裁を完全に解除すること、となっています。これらの要求は、トランプ大統領の「アメリカにとって迅速かつ有利な取引」という主張と、交渉の場で繰り広げられる複雑な現実との間に、深刻な矛盾があることを示しています。これらの大きな隔たりが埋められるまで、トランプ大統領の一方的な主張は、失敗に終わったプレスリリースに過ぎない、ということになるでしょう。

 


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