中国との貿易戦争を懸念するアメリカ
アメリカのトランプ大統領が、中国からの輸入品への関税の引き上げという大統領令に署名したことは、アメリカと中国の間の貿易戦争に追い討ちをかけています。
この措置に伴い、アメリカでは特に農業関係者を初めとする人々が、中国の対抗措置に強い懸念を示しています。中国がアメリカのこの措置に反発し、必ず対抗措置をとると表明したことを受け、アメリカ国内での懸念はさらに広まっています。
特に農業部門をはじめとするアメリカの経済状況が思わしくないことから、専門家の間では、この状況の打開には輸出しか方法がないとの見方がなされています。しかし、今回のアメリカ大統領令への署名と中国の対抗措置により、その唯一の救いへの道も閉ざされ、アメリカの集落部の経済は深刻な危機に直面すると見られます。
アメリカ駐在の崔天凱中国大使は、アメリカ政府の今回の決定に不満を表明し、「中国は、決してアメリカとの貿易戦争の開始を望んでいなかったが、やむを得ないとなれば決して後に引くことはない」と語りました。
中国のこうした強硬な反応に、アメリカの経済界はこれまで以上に懸念をつのらせており、それに伴いアメリカの投資市場の経済指標は大きく落ちこんでいます。
トランプ大統領を筆頭とするアメリカの経済チームは、中国からの輸入品への増税により、アメリカの貿易赤字が減少し、最初のうちこそアメリカ経済の各部門に多少の損害を与えるものの、長期的に見てアメリカの経済と社会の全体の利益になると見ています。
アメリカのピーター・ナバロ大統領補佐官兼通商産業政策部長は、「貿易赤字は国家安全保障を脅かし、それによりアメリカは外国からの借款や投資への依存に陥るだろう」と語りました。
専門家の見解では、今回の新たな大統領令の実施により、ボーイング社やアップル社といった大企業が大きな損害を蒙り、それによりアメリカ国内の数万件もの雇用機会が失われると予想されています。
さらに、中国が対抗措置を講じた場合、特に大豆の生産を初めとするアメリカの農業部門が大きな影響を受け、アメリカ国内の失業者がさらに数万人増えることになります。
アメリカ人のある専門家は、「今回の措置では、緊張が高まるだけである。自分としては貿易戦争という言葉を用いたくはないが、どうやら事態はその方向に進行しているようだ」と述べています。
もはや、状況からしてアメリカと中国の貿易戦争の勃発が刻一刻と近づいていることは確実と見られます。貿易赤字が増大しすぎた場合、最終的には保護貿易政策、ひいては貿易戦争に発展することは間違いありません。また、輸出が減少すれば、もう1つの結果としてアメリカ社会に失業者が増えることになります。アメリカの企業や農業関係者たちの懸念は深刻なものとなっており、それは、中国の対抗措置がアメリカの労働者にとっては耐え難いものだからであり、アメリカの経済部門に取り返しのつかない打撃を与えるからなのです。