世界との自由貿易を擁護するアメリカ
(last modified Wed, 13 Apr 2016 10:28:49 GMT )
4月 13, 2016 19:28 Asia/Tokyo
  • アメリカのケリー国務長官
    アメリカのケリー国務長官

アメリカのケリー国務長官が、EUとのTTIP・環大西洋貿易投資連携協定、そしてTPP・環太平洋経済連携協定を擁護しました。

ミールターヘル解説員

ケリー長官は12日火曜、今年2月のTPPへの調印を賞賛しました。ケリー長官によれば、TPPは最も水準の高い貿易協定だとされています。5年間に渡る協議の末調印にこぎつけたこの協定の目的は、世界経済の40%を占める12カ国の参加により、世界で最も広範囲の貿易圏を形成することです。

ケリー長官はまた、TTIP・環大西洋貿易投資連携協定についてもアピールしました。彼は、近日中にヨーロッパを訪問し、2013年から協議が開始されているこの協定についてヨーロッパ諸国の政府高官と会談することになっています。

この協定の目的は、世界の2大経済ブロック圏であるアメリカとヨーロッパの間の貿易上の規制や関税といった障害を解消することです。しかし、この協定は特にその曖昧さを指摘するアメリカで民間団体の強い反対を受けています。また、TPPもまだ12の環太平洋諸国の承認には至っていません。アメリカ議会内ではTPPをめぐり足並みがそろっていないにもかかわらず、同国のオバマ大統領は2月末、TPPが可決されるだろうとの楽観的な見方を示していました。

ここで注目すべきことは、オバマ大統領が昨年の6月に貿易促進権限法に調印したことです。この法案は多くの紆余曲折を経てアメリカ議会を通過しました。オバマ大統領は、この法案への調印を、他国との競争の舞台における転機だとし、世界に対するアメリカの主導権の復活におけるこの法案の役割はきわめて重要であるとみなしています。この法案は、TTIPとTPPの2つの部分で構成されています。

TPPは、アメリカと環太平洋地域に傾倒する政策の重要な部分の1つとみなされ、その目的は地域における中国の経済・政治力をけん制することであり、環太平洋地域の12カ国とアメリカとの通商関係を円滑化するものです。TPPに参加しているのは、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、アメリカ、ベトナム、日本の12カ国です。

一方、TTIP・環大西洋貿易投資連携協定も、アメリカとEU諸国との通商関係を拡大するものです。しかし、この協定は、ヨーロッパにおいては自然環境の問題や就労機会の消失などを理由に、一部の企業や環境保護団体の反対に遭遇しています。同時に、自由貿易協定はアメリカ議会でオバマ大統領が率いる民主党から強く反対されています。

自由貿易協定に反対する民主党は、このような法案の実施により伝統的な職業や中小企業の一部が消滅することになると考えています。このため、オバマ大統領は民主党の支持を得るために自由貿易協定に加えて、この法案による損害をこうむることになる産業や労働者への融資を増やすための、別の法案への調印を余儀なくされました。こうした中、アメリカでは自由貿易協定が同国の大統領選挙の選挙運動におけるアピール材料となっています。民主党の候補者指名を争うクリントン氏とサンダース氏は、この協定に賛成していません。一方、議会で多数派を占めるとともに自由貿易協定に賛成している共和党は、これらの2つの協定の調印と実施を支持しています。