仏領ポリネシアの核実験犠牲者に今なお非人道的な待遇を続けるフランス
(last modified Tue, 27 Jul 2021 06:44:06 GMT )
7月 27, 2021 15:44 Asia/Tokyo
  • 仏領ポリネシアの核実験
    仏領ポリネシアの核実験

フランスのマクロン大統領が、同国領ポリネシア群島への最初の訪問の一環として、今月25日に同群島の1つタヒチ島の中心都市パペーテに到着しました。

ポリネシアは南太平洋に浮かぶフランスの海外領土の1つであり、タヒチを含む数百のさんご礁でできた島々で構成されています。この群島は、30年以上にわたって数十回の核実験が行われた場所です。この訪問におけるマクロン大統領の公式の任務は、島々が受けている地球温暖化の影響と、ポリネシア諸島でのフランスの核実験の遺産を調査することです。

フランス領ポリネシア諸島の住民の主な関心事は、過去数十年にわたり論争の的となっている宗主国フランスの核実験問題と、これらの犠牲者への損害が賠償されていないことに対する群島の人々の怒りです。ポリネシア住民は、何十年にもわたってフランスの核実験の後に残った残留放射線にさらされた犠牲者の補償が、マクロン大統領により承認されることを望んでいます。また彼らは、これらの核実験を実施する際のフランス政府の非人道的な態度を、ポリネシア住民の生命への無配慮や彼らに対するフランスの人種差別的方針の表れである。と考えています。フランス領ポリネシアでは1966年から1996年の間に、約193回の核実験が行われました。

注目すべきは、フランス政府がこれまでのところ、ポリネシア群島での核実験で発生した放射線量についての隠蔽行為を否定していることです。しかしその一方で、最近の研究の結果は、フランス当局が50年以上にわたってポリネシア群島住民の健康に対する核実験の実際の影響を隠蔽してきたことを示しています。研究者たちは、機密扱いの軍事資料、計算、人々の証言をを基にして、これらの核実験のうちいくつかをシミュレーションしました。彼らは、ポリネシア群島の住民の約11万人が放射性粒子にさらされたと推定しており、これは当時の島々の総人口にほぼ等しい数となります。この研究は、ポリネシア群島周辺で実施された約200件の実験に関する、機密扱い以外の約2,000ページのフランス軍資料を調査した結果として得られたものです。これに先立ち、エドワー・フリッチ・ポリネシア自治大統領はこの調査に関連して、「マクロン大統領は、歴史家も求めていた核実験に関する軍事データ記録の調査を約束した」と述べました。

フランス政府は、タヒチ島での放射性粒子の混じった降雨が記録されていることに留意して、莫大な損害賠償請求に同意したと主張しています。こうした中、明確な証拠から、1996残留放射線からの被爆に関して補償を受けたのはポリネシア群島住民のわずか63人だけであることがわかっています。特に1974年7月17日の核実験中には、タヒチ島で数万人の島民が致命的な放射性物質にさらされたことが知られていますが、その後遺症は現在、ポリネシアの人々の間で各種の癌の症例の異常な増加を引き起こしています。

核実験実施当時子供だったタヒチ島民の1人、キャサリン・セルダ氏は、「自分の家族のうち8人が癌に罹患した。これはただ事ではない。なぜここにはこれほど多くの癌の症例があるのか?」と語っています。

現在、マクロン大統領がポリネシアを訪問したにもかかわらず、群島での過去数十年間のフランスの核実験の犠牲者が同国から補償を受ける見込みはほとんどありません。実際、この点でのポリネシア住民に対するフランス政府の扱いは、同じくフランスの核実験の影響による補償を繰り返し要求するアルジェリアの人々に対する扱いと非常に類似しています。アルジェリア政府によりますと、これらの実験は同国の領土の大部分を占める土壌を汚染し、広い地域で放出された放射線により地元住民が多く死亡しているほか、周囲の環境に甚大な被害をもたらしているということです。その影響は今なお続いており、フランス当局はこの問題に取り組む責任を問われているのです。

 

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