アメリカ国務省によるイランでの人権侵害の主張(6)
アメリカ政府は、あらゆる場面において、自らを人権擁護の旗手と考えています。しかし、刑務所をはじめとする多くの場所で、アメリカ政府は収監者への虐待、精神疾患患者の処刑など不当な判決の執行により、人権を侵害しています。
こうした中、アメリカ国務省は年次報告の中で、イランでの殺人犯への処罰、宗教法に従った報復刑の執行、麻薬密売業者の死刑執行に対して懸念を表明し、「イランでは、人権が守られていない」と主張しています。
アメリカは、世界で刑務所の収監者が最も多い国となっており、その数は200万人を超えています。さまざまな統計が示 しているように、アメリカでは、毎年数十の死刑判決が下されています。また、秘密刑務所の存在も明らかになっていますが、収監者や死刑が執行された人の正 確な数は明らかにされていません。アメリカの人口は、世界全体の5%ですが、アメリカの刑務所の収監者の数は、世界全体の25%となっています。
こうした高い統計は、収監者の権利擁護の問題に対する人権団体の注目を促しています。アメリカ人10万人につき、716人が刑務所にいます。有罪判決を受けた精神病患者の割合の高さ、刑務所の看守による暴力や圧制、精神障害者の独房への収監、多くの収監者、特に子供の収監者の劣悪な状況、これらは、アメリカの刑務所に関して懸念される問題となっています。
アメリカの人権侵害に関する重要な問題の一つは、黒人に対する警官の暴力的な対応です。アメリカの警察は、様々な理由から、彼らを容 疑者と見なしています。民間人やNGOが発表した統計によれば、アメリカの警察による暴力の犠牲者は、この数年、毎年平均1000人を超えています。また 発表された統計によれば、アメリカでは、36時間に一人の黒人が、警官によって殺害されています。さまざまな統計が示しているように、アメリカの収監者 240万人のうち、およそ100万人が黒人です。こうした中、麻薬を常習するアメリカの白人の割合は、黒人の5倍となっています。
アメリカの司法制度は、さまざまな方法で黒人の権利を侵害し、彼らを第二級の市民として扱っています。黒人の殺害、容疑が明らかにされず、裁判が行われないままの収監、理由のない身柄の拘束や社会的な権利の侵害は、オバマ政権時代に減少するどころか、増加さえしています。
この他、アメリカでは2014年の死刑執行に関して、一部の収監者に対する死刑の方法が問題になっています。2014年には、33人に対して、有毒 物質の注入による死刑が執行されました。この方法は、一部で物議をかもし、一部の国内外の人権機関の非難を呼びました。電気ショックによる死刑執行も、一 部の場合に技術的な問題が起こり、死刑を執行される人に大きな苦痛を強いることになりました。
2014年の死刑執行の例を人種の点から見ると、執行されたのが、少数派である割合が高くなっています。2014年に死刑を執行された33人のうち、白人は11人のみで、17人が黒人、5人がヒスパニック系でした。こうした中、最新の統計によれば、アメリカの人口全体のうち、黒人が占める割合はおよそ13%となっています。
国連拷問禁止委員会の報告では、武器を持たない黒人に対する警官の射殺の継続に対するこの委員会の深い懸念が明らかにされています。この委員会は、 アメリカの警察、特にシカゴ警察による、黒人やヒスパニック系などの少数派に対する慣習から外れた暴力的な対応に懸念を示しています。
ニューヨーク矯正教育協会は2015年2月、233ページにわたる性差別についての報告を発表し、ニューヨークの刑務所での女性、特に妊婦の権利に対する大規模な侵害を取り上げました。この報告の第一部は、ニューヨークの収監者、特に女性の数に触れ、「2013年の末までニューヨーク州内の6 つの刑務所におよそ2300人の女性が収監されていた。この6つの刑務所のうち、3つは女性専用の刑務所となっているが、残りは男女が共に収監されてい る」としています。5つの刑務所の資料から、黒人やヒスパニック系の女性収監者の数は、白人女性のほぼ2倍になっていることが分かっています。また、これ らの刑務所の職員はほとんどが男性で、それが女性に対する性的暴行など、数々の問題を生じさせています。さらに、ここ数年、毎年平均して4000人の女性 がニューヨークの刑務所に収監されており、過去36年にアメリカで女性の収監者の数が900%増えていることは、懸念すべき問題だと発表されています。
この報告によれば1977年には、女性の収監者の数は、1万1200人だったのが、2013年には、11万1300人に増加しました。アメリカは、 世界の女性人口のおよそ5%を占めていますが、世界の女性収監者に占める割合は、およそ33%となっています。これらの女性は、必要な衛生問題に関する教 育を受けていません。
また、この報告によれば、一部の場合、刑務所の関係者が、妊婦に対するわずかなサービスを嫌がるために、密かに妊婦に対して堕胎が勧められていま す。このため、ニューヨークの刑務所では、毎年、9人の妊婦の収監者のうち、4人が堕胎しています。この報告で非常に懸念すべきなのは、黒人やラテン系の 女性収監者たちに避妊手術が施されていることです。アメリカは、貧しい女性や黒人女性への避妊手術において、暗黒の歴史を有しています。
この報告によれば、2006年から2010年の間に、ニューヨークの刑務所だけで、およそ150人の女性が出産できない体にされてしまいました。その多くが、黒人やヒスパニック系の女性でした。長期間の独房での収監も、ニューヨークの刑務所での妊婦の権利侵害に関する懸念すべき問題です。ニューヨーク州の刑務所では、毎年およそ1600人の女性が独房に送られ、毎日平均して100人の女性が、独房に存在しています。
アメリカの人権擁護団体は、2014年3月と11月の2回にわたり報告を発表し、刑務官や成人の収監者による未成年の収監者への大規模な性的暴力、そして未成年者を仮釈放せずに終身刑にするといった事例に対する深い懸念を表明しました。2014年3月25日、アメリカの人権擁護団体が発表した報告では、刑務所の子供たちの劣悪な状況に懸念が示され、アメリカ政府に対し、彼らを大人と共に収監しないよう求めています。
この報告では、アメリカで、18歳未満の人々が、大人と同じように裁かれていることが批判され、アメリカは、この行為によって、18歳未満の未成年への対応と裁判の方法に関するすべての国際法や国際条約に違反しています。この報告は、改めて、アメリカの刑務所での性的な悪用の 継続に懸念を示すと共に、アメリカ司法省統計局が2013年に提示した最新の統計に触れ、2011年から12年の間に、およそ10%の未成年の収監者が、 刑務所の関係者や他の収監者による性的暴行を受けたとしています。この割合は、2008年から2009年には12.6%でした。
世界の多くの国では、18歳未満の未成年と大人に対する処罰の方法が異なります。それは、未成年の精神的、肉体的な状況を理由にしたものです。そのため、未成年に対する処罰、収監の場所とその条件は、大人のものとは異なっています。
アメリカ・ファーガソンで起きた白人警官による黒人少年の射殺など、黒人の弾圧や市民権の歴然とした侵害の事例だけで、人権擁護を主張するアメリカ の悲惨な人権状況について調査する特別報告官が任命されるのに十分な証拠にはならないでしょうか。とはいえ、アメリカの人権侵害は、刑務所や黒人の状況に 限られたものではなく、この他にも大きな範囲にわたっています。それについては、今後の番組でさらに見ていくことにいたしましょう。