ハイヤーム、四行詩の賢者
(last modified Tue, 17 May 2022 13:55:00 GMT )
May 17, 2022 22:55 Asia/Tokyo

今年のイラン暦オルディーベヘシュト月28日にあたる18日水曜は、オマル・ハイヤームの日とされています。

イラン中世の科学者で、詩人のオマル・ハイヤームの出身地であるイラン北東部のネイシャーブールでは、特別な行事が催され、思想家や有識者、詩人が、ハイヤームの作品を検討します。

ハイヤーム廟

 

ペルシャ語詩人の中で、ハイヤームは世界的な名声を得ています。ハイヤームは11世紀から12世紀のイランの有能な哲学者、数学者、天文学者であり、作家 でもありました。歴史家や研究者は、ハイヤームは賢者であり、その賢明さのすべては、ハイヤームのわずかな詩の中に見ることができるとしているのです。
ハイヤームは学術的な著作においても、そのすばらしい四行詩においても、世界的な名声を得ています。現在も彼の学説は、研究対象となり、また数学者に利用 されており、天文学における彼の成果は、天文学者にも認められています。しかし、ハイヤームは、ルバイヤートとして知られているその美しい四行詩により、 さらに大きな名声を得ています。19世紀のアメリカの詩人、ジェイムズ・ラッセル・ローウェルは、ハイヤームの四行詩を、「思想によるペルシャ湾の真珠」 としています。

ハイヤーム像

 

ハイヤームの四行詩は、1859年、エドワード・フィッツジェラルドによって英語に翻訳され、これによりハイヤームは世界的な名声を手にしました。ハイ ヤームの作品の翻訳により、翻訳者自身も有名になりました。その後、ハイヤームの四行詩は数十回も出版され、これに関して、大変多くの本がしるされまし た。
ハイヤームは詩と文学において、特定の思想や世界観の代表的な人物です。彼は物言わぬ思想家や詩人の声を代弁しています。一部の人は、ハイヤームの名をつ かって自分の言葉を公開し、また一部の人は彼の四行詩を唱えることで、その答えを求める精神を落ち着かせています。研究者は、今日、ハイヤームを歴史上の 人物のみならず、彼を文学における流派の創始者とすべきだと考えています。ハイヤームは、その明晰な思想によって答えのない多くの問いの中に深く入り込ん だ学者でした。

ハイヤームとエドワード・フィッツジェラルド

 

彼は多くの思索の後、自身の無知を理解し、創造世界の神秘に驚かせられ当惑しました。この驚きのインパクトは、その思想を言葉に、その言葉から四行詩に変 えたほど大きかったのです。ハイヤームはその深い思想を短い4行の詩に力強く収めました。それは時に一冊の書物よりも深く心に浸透するものです。ハイヤー ムの四行詩は4つの節のみだとすることはできません。なぜなら、彼の四行詩は、悲しみと不安を感じている魂のささやきであり、真実を求め、現実を直視する 思想の放浪であるからです。
明らかに、この世界では迷ったりしない人間や、創造世界の謎に驚くことのない人間を見つけることはできません。さまよう人間は、ハイヤーム以降の時代の長 い間、彼の四行詩から、その人が必要としている声を聞いています。世界の理がどのようになっているのかを理解する情熱を持っていたのは彼のみではありませ ん。ハイヤーム以前の時代も、そしてこれからも、人々は世界が終わるまでこの情熱を持つことになるでしょう。


ハイヤームはすべての時代の、すべての場所にいる人間が抱く多くの問いを、詩の中で提示し、その多くに答えを出しています。ハイヤームは短いながらも非常 の内容の濃い四行詩の中で、さまざまな時代における、人間を惑わす、すべての重要な問題や哲学的に不明な点、解決のできなかった秘密を提示しています。彼 は、無味乾燥な哲学的言葉を避け、美しい詩を選び、心の中の傷や痛みを詩で表現しました。

ハイヤームの四行詩の英語訳

 

ハイヤームはそのほかの思想家と同じように、当時の思想に影響を受け、それらに対する反応を示しています。これにより、ハイヤームの思想や見解は当時の思想に対する反応であると考えられます。
ハイヤームの四行詩の読み手は、常に繰り返される特定の内容を目にします。これはハイヤームの心を占めていた、最も重要な問題であると考えられ、彼はそれ をさまざまな形で表現しているのです。人生のはかなさ、このとき、この場で機会を得ることの強調、疑いと驚き、死と死後の生、酩酊などは、ハイヤームの四 行詩における最も重要な内容の一部です。これらのテーマは、ハイヤームの思想体系の中心事項となっています。この中でのハイヤームのメッセージは、明確で 繰り返しのもので、彼以前、彼以後の偉大な詩人や思想家が語っていることと同様のものです。原則的に、ハイヤームがとらわれていた苦しみとは、すべての人 間、特に知識階級が苦しんでいたものです。しかし、彼をこのような思想における唯一の存在にしたのは、彼の詩のテーマではなく、この内容を如何に語るか、 ということであり、これは彼が卓越し、名声を得た要因です。


ハイヤームは、常に現世の重要な問題について考えていました。彼はその幅広い知識にもかかわらず、自身の問いや疑念に対する答えを見出せていません。この 失敗は、彼が英知を得る中で、より一層の努力を行う要因となっています。ハイヤームは精神的な苦しみに向かい合っていますが、この苦しみや圧迫感は哲学的 な言葉や学術的な言葉で説明できるものではありません。彼はこの重くのしかかる秘密を、読者に伝える言葉を欲していました。つまり、詩の言葉や、推測が可 能な四行詩という形式から、助けを得ています。はじめに彼は理性的な探求に助けを借りようとしますが、その荒れ狂う感情により、内面で感じたものを四行詩 として表現しています。

ハイヤーム像

 

ハイヤームは多くの四行詩の中で、常に過去と現在、未来の間で議論を行っています。彼はこの内容を語る為に、「つぼ」や「土」というたとえを用いて、なる こと、かつてそうだったこと、死ぬことのの3つの重要な原理を示しています。イスラムの聖典コーランは、神は人間を泥から創り、その後自身の魂を吹き込ん だと語っています。われわれのこの世における存在を具現している、泥の本来の性質は、常にわれやすいものであり、現世的な努力には価値がないということを 想起させます。
ハイヤームが現世のはかなさを強調したことで、一部の思想家はハイヤームが虚無主義者だとして、彼を快楽主義者の側に立つ人物だとみなしています。しか し、コーラン第2章、アルバガラ章、牝牛の156節が指摘しているように、神の真理以外のすべてのものは不安定な存在です。ハイヤームがこのような現世の はかなさを強調していることで、永遠の存在である神が唯一の真理であることが証明されています。


ハイヤームによれば、人生において重要なのは、四行詩の中でまったく否定していない神の存在や、愛、喜びであり、一方でこれは制約がないことや、享楽的で あることを意味しません。むしろ、ハイヤームは、この世に生きている今、このつかの間の人生の恩恵を享受するべきで一瞬たりとも無駄にすべきではないとし ているのです。苦しみにまみれた人生や現世のはかなさについて考えることにより、賢明な人々は、現世や現在に注意を向けること以外に、方法がないのです。
ハイヤームは、人間の多くの苦しみは、欲や帰属意識によるものだとしています。彼は、正しく認識し、人生の小さなものやつまらないものへのとらわれを解放する可能性を人間に与える思想を伝えています。
ハイヤームの簡潔な言葉と深い思想は、長年を経ても耳にすることができ、またそれを聞いたものをひきつけています。ハイヤームの四行詩は探究心ある人々の心を反映しており、独特の世界観を持っています。

 

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