7月 06, 2022 18:15 Asia/Tokyo

イランの広大な大地は、多くの自然や観光名所を有し、エコツーリズムの可能性という点で、世界のトップ5に名を連ねています。このシリーズでは、イランの自然の恵みをご紹介して参りましょう。

今夜は、『失われた楽園』、あるいは、『緑の宝石』とも呼ばれる、イラン北部のケラールダシュトという地域について、お話してまいります。ケラールダシュトは、アルボルズ山脈の標高1200メートルから1300メートルのところにあり、河川、森林、草原、氷河、高山、巨大な岩など、自然の見所に溢れています。

イランの首都テヘランから、西にある大都市キャラジを通り抜け、山あいの曲がりくねった道路・チャールースを進んでいくと、170キロのところに、ケラールダシュトがあります。この地域は、イラン北部・カスピ海沿岸のマーザンダラーン州の中でも、特に爽やかな気候の場所として知られ、北をカスピ海、西を、アルボルズ山脈の山あいにある史跡の土地、アルムートと接しています。ケラールダシュト及びその周辺の丘で発見された史跡から、古代、この地域の一部に人が住んでいたことが分かっています。

ケラールダシュトは、森林山岳地帯であるため、心地よい気候に恵まれています。カスピ海は、アルボルズ山脈の北に位置します。そのため、北から流れる雲の進行が、アルボルズ山脈によって遮られ、この地域に多くの雨をもたらします。ケラールダシュトは高地にあるため、この雨は、時に雪となります。ケラールダシュトの夏の気候は、マーザンダラーン州の他の地域と比較しても、涼しく、過ごしやすいものとなっています。緑豊かな森林、河川、心地よい気候、地域に聳える山々・・・、これらはこの地域の特徴です。

ケラールダシュトの風光明媚な景観は、みる者すべてを魅了するものです。西側には、空高く聳える山々、北側と南側には、魅惑的な景色と広大な森、そして東側には、低い山々とその山裾に広がる森林が存在し、ケラールダシュトの魅力に色を添えています。ケラールダシュトの緑の平原は、多くの場合、深い霧に包まれており、この地を訪れる人々に、静寂に包まれた何ともいえない雰囲気、そして安らぎを与えています。

ケラールダシュトには、幾つかの村があり、豊かな自然、静かで穏やかな空間、温かい村人が、この地の自然を求めてやってくる観光客をもてなしてくれます。ケラールダシュト、及び、周辺地域をあわせた人口は、冬の間は4万人弱ですが、春になると12万人と急増します。これは、温かい季節に、この幻想的な平原で暮らそうとする人々が増加するためです。ケラールダシュト出身の人には、勤勉、親切、社交的といった特徴があり、地元では、独特の方言が話されています。

ケラールダシュトの高山には、数百万年前から残る、自然氷河が存在します。この巨大な氷のかたまりは、石や土と混ざり合い、ケラールダシュトの河川、サルドアーブルードの重要な水源となっています。この河川は、ケラールダシュトの山あいにあるため蛇行しており、ニジマスなど、貴重な魚が見られます。また、この河川の近くには、山の中腹から流れ出し、澄んだ水をたたえる泉があり、「ルードバーラクの冷泉」と呼ばれています。泉から少し上にいったところには、背の高いがっしりとした木の生い茂る森林があり、ケラールダシュトに特別な美しさをもたらしています。この場所では、冬になると、雪の塊がなだれのように、山の上から下に崩れ、これらの河川や泉の周辺に流れ込みます。この雪の塊やなだれは、時に、夏に見られることもあります。夏に雪の塊ができるのは、その冬が寒かった証拠です。

夏休みの間、ルードバーラクの村から泉までの一帯は、自然の中で心を休め、美味しい食事を楽しもうと、ピクニックをする観光客で埋め尽くされます。また、この地域には、アミールチェシュメとい名の美しい泉もあります。この山々に囲まれた泉の近くでの滞在により、心身ともにリフレッシュすることができるでしょう。このように、ケラールダシュト一帯は、自然の魅力に満ちており、ケラールダシュトに向かう際には、どのルートを取ったとしても、その自然の神秘に驚嘆せずにはいられないでしょう。

ケラールダシュトには、大小さまざまな湖がありますが、イランに10ある淡水湖のひとつ、「ヴァラシュト」も、ここにあります。ヴァラシュト湖は、様々な鳥たちのために、生息に適した環境を提供しています。

 

ば、夏に、タフテソレイマーンとアラムクーフ周辺のルートを取ることをお勧めします。このルートでは、比類のない雄大な自然を目にすることができるでしょう。

 

タフテソレイマーン地区は、北側をマーザンダラーン州のカスピ海沿岸地域、東側をチャールース川の渓谷、南側をアルムートとターレガーンの渓谷に接し、西側にも森林に囲まれた広大な渓谷が存在します。この山岳地帯は、ケラールダシュトとアッバースアーバードの豊かな緑、そしてその傍らの美しい氷河の存在により、20世紀初め、あるいはそれ以前から、国内だけでなく、海外の登山家の関心を集めてきました。これまで、経験豊かな国内外の多くの登山家が、この険しい山の登頂に挑戦しています。

 

アラムクーフの登頂を目指す人は、主にチャールースからマルザンアーバードを通ルートを取り、そこから、ケラールダシュトを目指します。ケラールダシュトは、前回の番組でもご紹介しましたが、幻想的な山岳地帯で、さわやかな気候と見応えのある美しい自然を有しています。登山の入り口、出発地点は、ルードバーラクと呼ばれる村です。ルードバーラク村には、イラン登山連盟が所有する大きな宿泊施設があり、年間を通して多くの登山家に利用されています。概して、この地域の山の登頂を果たすには、北側のルードバーラク村、南側の小さな村、あるいは西側の村落と、いくつかのルートを利用できます。これらの村は、地域の山の登頂を目指す登山家にとって、非常に大きな存在です。北側の山や断崖を目指す登山家は、ルードバーラクのルートを取らなければなりません。一方、南側の、比較的楽な山を目指す人々は、東南にある小さな村落を通っていくことになっります。

 

タフテソレイマーンとアラムクーフの一帯には、ルードバーラクにある登山連盟のホテルや宿泊施設に加え、大小の避難小屋や休憩所も整っており、これらは、冬の間に利用されています。そのうちのひとつ、サルチャールの避難小屋は、標高3900メートルのところに位置し、ルードバーラクからは数時間かかります。水量の多い河川につながるこの美しいルートは、アラムチャールという名の氷河、そしてその先にある泉へと通じています。サルチャールの避難小屋は、登山家が体を休めるための休憩所となっています。またその向かい側には、標高4500メートルの「チャールーン」という山がそびえ立っており、さらにアラムクーフの巨大な断崖を目にすることもできます。

 

アラムクーフの山と断崖を目指す登山家は、サルチャールから避難小屋の近くにある、アラムチャール氷河を通って数時間歩くと、アラムクーフの壮大な美しい麓にたどり着きます。4850メートルのアラムクーフの頂上と、4750メートルの北ヘルサーン山の頂上の間には、ヘルサーン休憩所があり、厳しい山を登り切り、アラムクーフの登頂を果たした登山家たちに利用されています。

 

タフテソレイマーンとアラムクーフの一帯には、驚嘆せずにはいられない数々の美しい氷河が存在します。アラムクーフの頂上から、あるいはその北側にあるタフテソレイマーン山を眺望した際、周辺の数カ所に、それぞれ独自の魅力を備えた「氷河」を目にすることができます。アラムクーフの北側の壮大な断崖の麓には、「アラムチャール」と呼ばれる氷河があります。この氷河の幅は、およそ100メートルで、長さはおよそ2キロに及ぶと見積もられ、周りを4000メートル級の山に囲まれています。

 

アラムクーフの北西には、「エスピレット」と呼ばれる氷河があります。この氷河は、急な傾斜の氷の断崖が、数百メートルに渡って続いており、そこを登るには、非常に熟練した技術が必要です。また、この氷河は、セ・ヘザールという大きな川の水源となっており、同じセ・ヘザールという名の森林を通って、果てはカスピ海へと流れ込みます。この地域の自然がよく知られているのは、これらの氷河の存在によるところが大きいと言えるでしょう。

 

アラムクーフを訪れる登山家は、その壮大な断崖に魅了されます。この断崖は、山の北側にあり、高さはおよそ800メートルで、最初の100メートルは、完全に凍った状態です。この断崖を登るのは非常に危険で困難な作業であり、それを果たせるのは、豊富な経験と技術を備えた登山家だけだと言えます。断崖には、いくつかの知られたルートがあります。中でも最も代表的なルートは、「フランス人」、あるいは「ポーランド人」と呼ばれるルートです。今日、登山の技術が進歩し、新たな道具や装備が次々と開発されていることもあって、新しいルートが次々に登場しています。昔は、登頂に、まる2日かかると言われていましたが、最近はそのおかげもあってか、短縮され、熟練した登山家であれば、数時間で登り切ることができるでしょう。アラムクーフの冬の登頂には、大きな危険が伴うことも付け加えておかなければなりません。

 

 

 


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