ペルシャ語ことわざ散歩(171)「灰の下の火種」
皆様こんにちは。このシリーズでは、イランで実際に使われているペルシャ語の生きたことわざや慣用句、言い回しなどを毎回1つずつご紹介してまいります。
今回ご紹介するのは、「灰の下の火種」です。
ペルシャ語での読み方は、Aatesh ziir-e khaakestarとなります。
おそらく、皆様の中にはこの慣用句の本来の意味を何となくご想像できた方もいらっしゃるかと思われます。
この慣用句が意味しているのは、「何かの小さなきっかけにより再燃する可能性のある怒りや悲しみ、苦痛」、特に「表向きには一時的に収まったように見えるものの、条件が揃えば再び始まりそうな騒ぎやトラブル」といった内容です。
焚き火などをした際に、一通り紙や木材、枯葉や木の枝などが燃えきれば、表向きには炎は鎮火し、収まったように見えます。
しかし、それらの燃えカスの中にはまだ火が完全には消えずにくすぶっていることが多く、灰をかき混ぜたりひっくり返したりして風に当たれば、再び火の粉や炎が上がるのが普通だと思われます。
このことから、この慣用句は例えば誰かがある人物に対し憎しみを抱き、それから長い年月が経過する中で次第にその人のことをあまり考えなくなっていたものの、ある時たまたまその人物が話題に上り、再びその人に対する憎しみや怒りがこみ上げてきたような場合に使われます。
また、実際のイラン人同士の会話でも、ある人同士のいさかいや揉め事、またはどこかの国同士の紛争がしばらく収まっていた後に、何かの出来事が引き金となって再発したような場合に、この表現が使われているのを聞いたことがあります。
ところで、最近やっと世界全体の傾向として、3年近く続いた新型コロナウイルスの大流行が収まりつつあるようです。
しかし、そこで気を緩めてしまい何かのイベントや集まりごとがクラスターとなって再び流行する可能性も否定できません。
現時点ではまさに、コロナウイルスは「灰の中でくすぶる火種」に等しいと思われることから、ここしばらくは感染防止に心がけたいものですね。
それではまた。