ペルシャ語ことわざ散歩(189)「ダマスカスのバザールのごとし」
皆様こんにちは。このシリーズでは、イランで実際に使われているペルシャ語の生きたことわざや慣用句、言い回しなどを毎回1つずつご紹介してまいります。
今回ご紹介する慣用表現は、「ダマスカスのバザールのごとし」です。
となります。Mesl-e bazaar-e Shaam astペルシャ語での読み方は、
この表現は、非常に混雑していること、あるいは何もかもが入り乱れ、取り散らかし、整理整頓されておらず混乱した状態を表しています。
なお、ペルシャ語でシャームといえば、シリアもしくは、現在の同国の首都ダマスカスのことを指します。ちなみに、この伝統的な市場・バザールは、現在もダマスカス市内にあり、シリアを訪れる外国人観光客や巡礼者のお目当ての1つとされています。
歴史的な史料によりますと、西暦680年に現在のイラクにある町カルバラーで発生した、シーア派3代目イマーム・ホサインの痛ましい殉教の後、当時のウマイヤ家の後継者・ムアーウィヤの息子で、ホサインの敵である暴君ヤズィードは、カルバラーの戦いで捕虜となった者たちを見せしめとするために、ダマスカスのバザール内で引き回し、さらし者とするよう命じたということです。
現在では、この表現はどちらかと言えば悪い意味で使われる事が多く、例えば誰かの家を訪問した際に、その人の家では物がちらかり放題で見苦しい状態にある場合、「あの人の家はまるで、ダマスカスのバザールも同然だった」などというように使います。また、部屋の中におもちゃを散らかしたままにしている子供に、おもちゃを片付けてきちんと整理整頓するように言いたい場合にも、「部屋をキチンと片付けなさい。これじゃダマスカスのバザールと同じですよ」となどと言って片づけるよう促します。
ちなみに、正式な表現ではないようですが、これと全く逆の意味、すなわちきちんと整理整頓されている様子を表す言い方として、「パリのシャンゼリゼ通りのようになった」という言い方を聞いたことがあります。
ペルシャ語ではこのように、ダマスカス・バザールとシャンゼリゼ通りが全く正反対の様子を表すことわざとして使われていますが、実際にはどちらにも独自の魅力があるといえるのではないでしょうか。それではまた。