7月 12, 2016 16:21 Asia/Tokyo
  • イスファハーン州のシャハレレザーの陶芸
    イスファハーン州のシャハレレザーの陶芸

これまで数回にわたり、イランの重要な伝統工芸である陶器が歴史の中でどのような経緯を歩んできたのかということをお話しました。今回は、陶器製造についてこの他の視点から見ていくことにいたしましょう。

イスファハーン州のシャハレレザーの陶芸

 

陶芸といった伝統工芸はその土地の芸術であり、芸術家たちの独創性に関連するものですが、数百年の間、次第にその質は芸術的な進歩を遂げました。例えば、紀元前4000年期が終わる前、陶器を作るろくろが変化し、進歩を遂げ、現在のような形になりました。イラン中部のスィアルクで見つかった陶器は、このろくろを使った質のよい陶器を製造していたことを示しています。さらに窯の中で陶磁器を焼く方法は次第に新しくなり、この方法は器に耐久性と美しさを増しました。また、酸化マグネシウムなどで作られた色彩が2回目の焼き作業の中で使用されており、陶器の彩色はより美しいものとなっていました。しかしながら古代の陶器職人の熟練は、技術面のみならず、その美しさは彼らの独創性に完全に結びついており、器の形やデザイン、さらには装飾において明らかになっています。

 

陶器製造

 

ここで陶芸で使用される物質について少しお話しすることにいたしましょう。粘土、あるいは陶土は、自然界において第一の土と第二の土があります。第一の土は、母体となる石の傍らに沈殿したもので、水や風によって移動することはありません。この土はほぼ純粋なものです。一方、第二の土は、風や雨、一時的、あるいは恒常的な川など自然の要素によってもとの場所から移動し、様々な有機物が混じっているものです。この種の土は第一の土と比べて純度が低いですが、粘着力は高くなっています。

陶器製造

 

各種の陶器を製造するには、幾つかの段階を踏みます。それは順に、粘土を用意する、それに形を与える、装飾する、最後に窯に入れる、という工程になります。この工程のそれぞれに忍耐と慎重さが求められ、窯の選択は熟練した職人の慎重さを必要とします。なぜなら、窯は陶芸の工房の中心であり、工房ごとに最大の投資が行われているからです。現在窯の選択における重要な要素は、焼き物の種類、その質と量、温度、時間、燃料の種類、設置場所などとなっています。

 

かつて陶器は、イランの多くの場所で日常的な使用や装飾のために使用されていました。しかしながら今日、生活スタイルや器の使用方法に多くの変化が生じ、陶芸は一部の都市でしか製造されず、陶器はこれまでのようには使用されなくなりました。とはいえ、これは誰もこの美しい陶器を日常生活で使わない、という意味ではありません。現在、他の器にはない陶器の利点に注目し、今もそれを使用している人もおり、色とりどりの美しいデザインの陶器で食卓を飾っています。

ラーレジーンの陶器製造

 

現在イランには陶芸の重要な拠点が幾つかあり、その中でラーレジーンを挙げることができます。ラーレジーンはイラン西部のハメダーン州の町で、陶磁器の製造の中心地として、イランのみならず、中東全体でも知られています。この町の人口の80%が陶芸に従事しています。ラーレジーンは品質の良い粘土を使用していることから、イランや世界の陶磁器製造の中心地の一つとなっており、その職人たちによって作られた作品は多くの国に輸出されています。ラーレジーン産の陶器は多様性があり、装飾用、日常用、各種のものがあります。

 

ラーレジーンの土は粘土質で、この地域の陶器の多くは模様がなく、釉薬のかけられた一様なものが、市場に出荷されています。その釉薬の色は瑠璃色、青、紺、アズキ色、黄色、緑、空色、茶色となっています。ラーレジーンの陶芸は多くがろくろを用いて行われています。

ヤズド州のメイボド

 

ヤズド州のメイボドもイランの陶器製造の中心地の一つです。この地域では白い土を使った陶器が作られており、製造後、陶器の表面を、各地で異なる組成の白色の土で塗っています。その後、様々な色で模様を描き、最後にすべての表面を透明な釉薬で塗り、焼きます。

 

メイボドの陶器に見られる主要な模様に、太陽のマークがあり、それは女性の顔として描かれ、「太陽婦人」と呼ばれています。この地域の陶器の模様はこの他、花、魚、鳥があり、これらはメイボドの職人たちの模様の特徴であり、他の地域のものとは異なっています。

イスファハーン州のシャハレレザーの陶芸

 

イランの他の地域でも陶芸は行われており、その中で、イラン南部のミーナーブに近いシャフヴァール、東部のゴナーバード近郊のモンド、北西部タブリーズの近くのゾヌーズ、ゴム、マーザンダラーン、ギーラーン、セムナーン、サーヴェ、中部イスファハーン州のシャハレレザーなどを挙げることができ、それぞれが特別な様式を持っており、装飾も互いに異なっています。例えば、印章はゴムだけで作られており、この町の陶器工房が瑠璃色の印章を製造し、各地に送っています。この印章は陶土で作られ、乾燥させた後、酸化鉄を混ぜたアルカリ性の釉薬の中に浸され、その後瑠璃色がつけられます。

イスファハーン州のシャハレレザーの陶芸

 

また、イランの陶芸の重要な中心地の一つに、南東部スィースターン・バルーチェスターン州があります。この古代の地域での陶芸の歴史は、旧石器時代、有史以前に遡ります。歴史的な発掘物が示しているように、紀元前3200年の焼失した都市では、陶器製造が盛んでした。

 

焼失した都市は、イランの古代都市の遺跡の名前で、スィースターンバルーチェスターン州のザーボルの南56キロ、ザーボル・ザーヘダーン街道の傍らに位置しています。およそ6000年前、この町には人が住んでおり、その当時の世界で最も発展した町でした。

キャルプールガーンの陶芸

 

スィースターンバルーチェスターン州のサラーヴァーン行政区のキャルプールガーンという町は陶芸で知られ、バルーチの女性たちは、ろくろを使わないで陶器を作っています。おそらくキャルプールガーンの陶器の名声は、こうしたことによるものでしょう。この陶器の製造方法は、およそ4000年から6000年前から変わりません。

 

キャルプールガーンの陶芸は女性たち特有の芸術で、男性たちは陶土を運んだり陶土を用意したりと言った力仕事だけを行います。この地域の陶器には上薬は使われず、そのデザインも幾何学模様で、古代の模様を想起させます。これらのデザインや模様は、内部が空洞になった円や埋まった円、一本の線などとなっており、それらが互いに組み合わされ、興味深い形を生じさせています。これらの陶器を装飾しているのは石を溶かして作られた色で、多くが黒や茶色となっています。