9月 28, 2016 16:03 Asia/Tokyo
  • イスラム教徒の衣服
    イスラム教徒の衣服

イランにおける服飾は、人間の地位を示すものとして、昔から重要性を有していました。この人間の地位とは、個人的、社会的に異なる特徴と結びついたものでした。

イスラム教は、7世紀、アラビア半島に出現し、それからまもなくして、その導きは世界的なものになりました。イスラムの伝承によれば、衣服は、人間の信条をあらわすシンボルだとされています。イスラムは、衣服の形、色、質にも注目しており、私たちが人間の衣服の重要性を悟り、人間が服を身につけることによって、自分の信条や文化的な特徴を示すことを知ることができるように指導をしています。

 

コーランの節や伝承からも分かるように、イスラム教は、衣服やその特徴を特に重視していました。とはいえ、イスラムでは、敬虔さという内面の衣服が、表面的な衣服よりも重視されていました。イスラムでは、表面的な服装は、内面の美しさと成長を実現するための手段であるべきであり、イスラム教徒の服装は、その実現の基準に矛盾するものであってはならないとされています。シーア派初代イマーム、アリーは、これについて次のように語っています。「最高の服装とは、あなたに、自分自身よりも神のことを考えさせるような服装である」

 

イスラムの伝承から分かるのは、華やかさは好ましいことであり、神の恩恵のひとつとして美しい衣服を身につけることは、すべてのイスラム教徒にとってふさわしいことだということです。コーランやイスラムの伝承は、様々な種類の衣服を紹介しています。たとえば、コーラン第16章アン・ナフル章ミツバチの第14節には、次のようにあります。エ「神は、海をあなた方に支配させ、そこから新鮮な肉を食べ、装飾品を獲ってそれらを身につけさせるようにした」

 

この節によれば、神は衣服とその装飾品が手に入る源とのひとつとして、海とそこから獲れる品を紹介し、それを神の恩恵として挙げています。このように、衣服は神から贈られた恩恵であり、その恩恵への感謝は、神の命に従うことです。これらの恩恵を利用する方法もまた、人間が敬虔という衣服を手に入れられるような正しい方法でなければなりません。

 

これについては、衣服の装飾という面に関して触れたコーランの別の節を指摘することができます。装飾とは、人間を飾るものであり、衣服もまた、同様であり、人間を装飾するものです。コーラン第7章アル・アアラーフ章高壁、第31節には、これについて次のようにあります。

エ「あなた方の装飾をモスクで明らかにしなさい」 このように、神への服従を示す場所であるモスクでは、身なりを整えることが必須であり、モスクでは、最高の衣服を身につけなければなりません。

 

色の多様性は、神の英知のしるしであり、さまざまな色の組み合わせは、生活に多様性を与えます。イスラムの伝承では、衣服の色の選択が重視されており、それが強調されています。その中では、白い色は、清潔さを常に守り、汚れを明らかにするだけでなく、健康や喜びを与える効果があるため、白い色を身につけることが推奨されています。

 

とはいえ、コーランの節やイスラムの伝承、宗教の指導者たちの言葉の中では、この他に、衣服に特別な影響を与える色についても触れられています。たとえば、黄色は、生き生きとした色で、人間に活力を与えます。緑は落ち着きを与え、生活空間に取り入れるとよい色で、楽園の衣服とされています。その一方で、悪い影響があるために推奨されていない色もあり、それらを使わないほうが良いと勧められています。

 

衣服の質もまた、人間の精神や肉体の健康にさまざまな影響を及ぼし、保健衛生の点から多くの重要性が考慮されています。衣服は人間の体に直接触れるもので、すぐにその影響が現れます。電気伝導、浸透性、放出性などが、人間の肉体に及ぼす衣服の影響です。イスラムでは、衣服の質について、その質を選ぶ際の注意点が述べられています。コットン素材の衣服は、天然繊維で作られるため、最も勧められており、その次にはリンネル素材の衣服が挙げられています。

 

この他の衣服の質の特徴は、外部からの影響を受けにくいことです。皮膚は体の内部の器官を覆う他、酸素を吸収する、有害物を退ける、発汗するという3つの重要な働きを行っています。

 

また、衣服の質は、人間の健康や福祉、心の平穏や寿命に直接、関係します。人間の体は肉体的な活動により、多くの熱を発します。衣服がその余分な熱やエネルギーを適切に発散することができれば、健康と安らぎをもたらしますが、それができなければ、有害物質として体に蓄積され、人間の健康を脅かします。

 

このように、イスラム教徒が一部の服装を禁じられているのは、人間の肉体的、精神的な健康に関係する知恵のためです。イスラムでは、女性特有の服装を男性が、また男性特有の服装を女性が、身につけることはふさわしくないとされています。また特に男女が似たような服装を身につけることが否定されていますが、それは次第に、家庭や社会にとって有害な現象をもたらすためです。服装において不信心者との類似を避けること、清潔さと装飾を守ること、体を完全に覆い隠すこと、これらは、イスラムが服装に関して指示している事柄であり、イスラム教における服装の重要性を示すものです。

 

イスラムでは、服装は、保健衛生、社会、道徳の面で人間の生活に影響を及ぼすと考えています。特に、衣服がそれを着る人の思想的、信条的な象徴と見なされる現代においてはなおさらのことです。同じような服装を広めることは、文化的な侵略の手段であり、国民的な文化を消滅させるきっかけとなります。シーア派6代目イマーム、サーデグは、これについて次のように語っています。エ「神は、預言者に啓示を下した。敬虔な者たちに言いなさい、『敵の服装に身を包んだり、敵の食べ物を食べたり、敵の道を進んだりしないように。そうなれば、敵の一員と見なされる』と」

 

イスラムでは、不信心者と同類になったり模倣したりすることは、服装に関してすらも、イスラムでは認められず、イスラム教徒にとって好ましくない結果が待っている、という点が強調されています。なぜなら、服装は、人間の生活におけるひとつの原則であり、重要な文化的要素と見なされ、社会の道徳や信条、民族的な特徴に基づいたものであるべきだからです。

 

このように、ふさわしい衣服を身につけることは、人間の本能に合致します。人間は本能的に、美を追求し、それらを目にすることで、神の創造した美しさに気づきます。11世紀のイランの哲学者、ガザーリーは、これについて次のように記しています。「世界は衣食住の3つの原則に基づいている。この3つの神の恩恵は、人間社会の根本であり、それらの恩恵は禁じられているどころか、認められたものである。イスラムで好ましくないとされているのは、それらを浪費したり、不適切な形で使用したりすることである」