マーザンダラーン州の人々の文化(2)
前回の番組ではイラン北部マーザンダラーン州の人々の文化についてお話ししました。今夜もこの地域の民族の文化をご紹介してまいりましょう。
マーザンダラーンはイラン北部のカスピ海沿岸に位置する州で、東をゴレスターン州、南をセムナーン、テヘラン、アルボルズ、ガズヴィーン州、西をギーラーン州、北をカスピ海に囲まれています。こうした地理的に特別な状況により、マーザンダラーン東部の音楽文化はホラーサーンやトルキャマンサハラーのものと融合し、西部では多かれ少なかれギーラーンの音楽の特徴を有しています。
マーザンダラーンでもまたイランの他の地域と同じように、音楽が人々の生活とともにあります。稲田、森林、海、喜びと悲しみ、宗教儀式においてマーザンダラーンの音楽は大きな役割を果たしています。マガームハーニーと呼ばれる地方の歌は、マーザンダラーンの東から西まで流通しており、様々な形や名前のものが聞かれます。主に流通しているマーザンダラーンの地方歌には、次のようなものがあります。
アーヴァーゼ・アミーリーはマーザンダラーンの人々の間で最も知られている歌です。この美しく心に染み入るような歌は、それだけでマーザンダラーンの音楽の価値や特徴を物語っています。アーヴァーゼ・アミーリーは多くが南部で流通しており、マーザンダラーンの有名な詩人の美しい詩とともに歌われます。それではここでアーヴァーゼ・アミーリーの一部を聞いてみましょう。
マーザンダラーンの歌でもう一つ有名なのは、アーヴァーゼ・キャトゥーリーです。多くは北部で流通しています。アーヴァーゼ・キャトゥーリーは特別な美しさを有しており、道徳、民族、信条などの崇高な内容を歌っています。
チャーヴォシュハーニーもマーザンダラーンの歌の一つで、マシュハド、カルバラ、ナジャフ、メッカの巡礼者を見送る際と出迎えの際に歌われます。歌い手は、人々を信条や聖なる存在に注目させる使者です。
マーザンダラーンの音楽の一般的な内容は、英雄物語や信条、価値観といったものです。マーザンダラーンの様々な地方音楽は似通ってはいますが、各地の気候条件や文化的特徴、社会的な関係などにより、よりはっきりとした色を出しています。
マーザンダラーンの民謡はシンプルで流れるようなメロディーと、優美で飾り気のないシンプルな詩を伴う心染み入るような語りの歌で、特別な魅力を放つ記憶に残るものとなっています。マーザンダラーンのもともとの民謡は、特別な名前を持ち、人々の生活に根差した出来事の長い歴史を物語っています。
衣装は最も明らかな文化的シンボル、最も重要で確かな民族の表れ、また最も分かりやすい文化的象徴であり、人間の様々な社会における文化的現象の影響を即座に受けるものです。一部では、文化的支配は第一に衣装の伝達によって行われると考えられており、一社会の衣装を変えることで、彼らの生産の手段や生計の種類を変化させ、社会生活の構造に変化を生じさせる、とされています。
イラン北部の緑あふれる美しい州、マーザンダラーン州では、美しい自然の温暖な気候により、特別の衣装が着られています。マーザンダラーンの女性達の衣装は自然の美しい明るい色で、目を引くものです。マーザンダラーンの女性の衣装に詳しい専門家はこのように述べています。
「ギーラーンとマーザンダラーンの女性の衣装は非常に似通っており、こうした類似性により、両者の男女の衣装は、民族衣装の分類において同じカテゴリーに分けられる」
マーザンダラーン州の伝統工芸は、カスピ海沿岸の住民の芸術や趣向を示すものであり、一民族の創造性の注目に値する具現化となっています。考古学的調査に基づき、マーザンダラーン州の伝統工芸の歴史は紀元前に遡ります。こうした主張を裏付けるのが、ベフシャフルの洞窟で見つかった紀元前6000年期に属する遺物で、それらは、当時の人々が紡績の技術、羊毛を糸に変える技術を持っていたことを示しています。
さらに石で出来た品々や銅、陶器、ブロンズの彫刻は、この地域の人々によって家庭用品が作られていたことを示しています。マーザンダラーン州に存在する伝統工芸の中で、絨毯や敷物、刺繍、陶器やセラミック、革製品、金属細工、木工細工、ござ、絵画、装丁などを挙げることができます
絨毯はマーザンダラーンの主要な伝統工芸ではありませんが、製作されています。この地域で織られている絨毯のデザインは、もともとは他の地域のものです。
マーザンダラーン各地の陶器やセラミック、木工細工、モザイク、刺繍、エナメル細工で使用されている模様は、平穏、信仰、愛情、満足といったものを人々に伝えるものであり、この地域の人々の最大限の謙遜と献身、親切心を示すものとなっています。