2016年のアジア情勢
2016年、アジア地域も、世界のほかの地域と同様、様々な変化に直面し、世界の人々の注目を集めてきました。
イランのザリーフ外務大臣が2016年12月にインド、中国、日本を順に訪問したことは、イランとこの国々の関係拡大において、重要な一歩となりました。この訪問では、日本の安倍総理大臣とも会談を行いました。
また、エネルギー大臣や経済財政大臣、保健医療教育大臣、科学技術大臣などのイランの閣僚も、日本を訪問し、日本の閣僚と会談を行いました。
東アジア諸国とイランの関係におけるそのほかの最も重要な変化には、5月の韓国のパククネ大統領の歴史的なイラン訪問がありました。イランと韓国が1962年に国交を結んでから、韓国の大統領がイランを訪問したのは、これが初めてのことです。
インドネシアのジョコ・ウィドド大統領も、2016年12月にイランを訪問しました。イランイスラム革命最高指導者のハーメネイー師は、ジョコ・ウィドド大統領との会談の中で、両国の豊かな可能性に触れ、経済、文化、政治など、多方面での協力の拡大を強調しました。
ハーメネイー師は次のように語りました。「イランは経済や地下資源、鉱山資源など、さまざまな分野で多くの可能性を有しており、イスラム諸国は敵の要求とは逆に、互いを強化し、対立を避けるべきだ」
日本では2016年にも、沖縄県や地元の人々が、アメリカ軍の沖縄駐留への反対を続けました。名護市の基地は日本に明け渡されますが、数千人の人々が名護市で反米デモを行い、アメリカ軍基地の活動が続けられることに抗議し、沖縄からのアメリカ軍兵士の速やかな撤退と、アメリカ軍基地の撤去を求めました。
最新の世論調査では、沖縄県民の70%以上が、アメリカ軍基地の沖縄からの完全な撤去を望んでいます。2016年の終わりにも、日本の人々は普天間基地の辺野古移設に関する政府の立場を支持する最高裁の判決に憤慨しました。
同時に、沖縄県の宜野湾市の人々は大規模な反米デモを実施し、アメリカの輸送機オスプレイの飛行再開を非難するとともに、その飛行を停止するよう求めました。宜野湾市の佐喜眞市長は、この地域の人々が決してアメリカの飛行機による騒音公害を受け入れておらず、、墜落時の安全上の懸念を持ち続けているとしました。オスプレイの墜落後、この輸送機の飛行は一時期中止されていました。
2016年末、台湾や中国との経済関係、南シナ海問題に関するアメリカのトランプ次期大統領の立場表明は中国の怒りを引き起こしました。中国の王毅外務大臣は、トランプ氏に対して、中国の利益を尊重するよう求め、「中国とアメリカの協力は、両国の利益を確保する」と語りました。
中国外務省報道官は、アメリカの核計画についてのトランプ氏の立場に反応を示しました。トランプ氏はツイッターで、アメリカの核能力の強化と核兵器保有の拡大を求めました。このため中国は核兵器の削減に向けた歩みを進めるよう求めたのです。
核計画を停止させるための西側の北朝鮮に対する圧力行使は続けられており、これに対して北朝鮮は次々に反応を示しました。北朝鮮は2016年、2回の核実験と、20回にわたるミサイル実験を行いました。西側政府と国連安保理はこれに反応し、北朝鮮に対する追加制裁を課しました。
北朝鮮は国連安保理の制裁を宣戦布告のようなものだとして、「この制裁により、朝鮮半島での武力衝突が始まる可能性がある」と強調しました。北朝鮮外務省の声明によりますと、国連安保理の決議には、朝鮮半島の戦争勃発を防ぐことができるようなメカニズムや法的構造について一切言及されていないということです。
一方、北朝鮮労働党のキムジョンウン委員長は、2016年終わりに、労働党幹部の会合で、北東アジア地域の状況は、北朝鮮が正しい道を歩んでいることを証明しているとしています。キムジョンウン委員長はまた、国連安保理の追加制裁を非難し、敵国は北朝鮮を標的にしている、それは北朝鮮の力が日増しに強くなることを嫌っているからだとしました。北朝鮮のメディアも、性能の高い無人機を開発中だと発表しました。
2016年における東アジアの重要な情勢変化のひとつに、韓国のパク大統領の職権乱用事件があります。パク大統領は北朝鮮に対する厳しい政策を推進していながら、与党のセヌリ党を対立に追い込む、政治的に大きなスキャンダルに直面しました。韓国の野党支持者はパク大統領に反対する大規模な抗議運動を行い、セヌリ党に対する圧力を強化し、これによって、パク大統領の弾劾が国会で承認されたのです。
韓国の人々は2016年の暮れにも、抗議運動を開催し、韓国の裁判所に対して速やかにパク大統領の弾劾を認めるよう求めました。一方、韓国の政府関係者は、北朝鮮対策は変わらないと強調しました。
韓国のファン・ギョアン首相は、速やかにミサイル迎撃システムTHAADを配備すると強調しました。ファン首相は議会で野党代表者の質問に反応を示し、「このミサイルシステムの配備は死活問題であり、この中で中国の反対に動かされてはならない」と語りました。
中国政府は、THAADの配備は国民の安全を危機に陥れると強調しています。韓国の野党も、THAADの配備は韓国と中国の関係を悪化させると考えています。
韓国とアメリカは、2017年末までにTHAADを韓国に配備することに合意しています。ロシアも繰り返し、THAADの配備に抗議しています。
東南アジアにおける情勢変化のひとつに、フィリピン大統領の反米的な立場と、中国へ接近する傾向が挙げられます。フィリピンのドゥテルテ大統領は、繰り返し、フィリピンにとってアメリカは必要がないことに触れ、アメリカに対して、フィリピンから撤退する準備を整えるよう伝えました。ドゥテルテ大統領はまた、アメリカを速やかに撤退させるため、1998年に締結した軍事協定を見直したあと、これを実施するとしました。彼のこの表明はアメリカのフィリピン支援計画の延長を打ち切ったことへの反応とされています。アメリカ政府はフィリピンにおける民主主義と法の支配の侵害に対する懸念を表明し、この計画の延長を控えたのです。
アメリカとフィリピンの緊張は2016年、アメリカのオバマ大統領がフィリピン政府の麻薬密売人対策のやり方を批判したことを受けて高まりました。一方、ドゥテルテ大統領が中国を訪問し、全面的に関係を拡大したことは、フィリピンがアメリカに対する依存度を下げることにより、麻薬対策を続けようとしていることを示しています。
ドゥテルテ大統領に対するアメリカによる批判の中で、フィリピンのロレンザーナ国防大臣は、中国は麻薬・テロ対策のために1400万ドル相当の小型武器と高速艇をフィリピンに提供することを提案しているとしました。ロレンザーナ国防大臣はまた、中国はフィリピンがそのほかの防衛装備を整えるよう、5億ドルの長期的な貸付を行うとしました。
2016年、タイのプミポン国王が死去し、これはタイの政治・社会状況に影響を及ぼしました。その後、ワチラロンコン皇太子がプミポン国王の後継者になると発表されました。
ワチラロンコン新国王は12月2日、議会からの招待状を受け取り、後継者として認められました。ワチラロンコン新国王はまた、短いスピーチの中で、議会の招待はタイの人々のために受け入れたとしました。ワチラロンコン新国王は、初等教育を王立学校で終え、その後イギリスとオーストラリアで勉学を続けました。タイの王政は、社会・政治における重要な地位を有しており、タイで起こった多くのクーデターは国王の支持により行われてきました。
もうひとつの重要な東南アジア情勢に、ミャンマーの少数派であるロヒンギャ族のイスラム教徒の殺害の継続があります。この殺害を非難する大規模な抗議デモが、マレーシア、インド、バングラデシュ、パキスタンなどで行われ、ミャンマーに対する国際的圧力が行使されたことで、ミャンマーの政府関係者は2016年暮れ、ASEAN・東南アジア諸国連合の外相会合をミャンマー・ヤンゴンで開催しています。
ミャンマーの外相兼国家顧問のアウンサンスーチー氏は、イスラム教徒に対する限定的な支援の提供に合意しました。とはいえ彼らの殺害の継続、特に、政府系メディアのインタビューを受けた人物の殺害は、ミャンマーの軍と政府が、西部ラカイン州のイスラム教徒の状況に関する情報を公開するつもりがないということを示しました。