温室効果ガスとは何か?
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自然環境について考える
前回は、大気汚染を取り上げ、その影響により温室効果ガスに変化が生じることについてお話しました。今夜は、この温室効果ガスとは何かについてお話することにいたしましょう。
温室効果ガスは、この数十年間にわたり、常に環境問題において取り上げられているテーマの1つです。温室効果ガスという名称は、文字通りこのガスが温室に類似した状態を生み出すことに由来しています。
実際の温室では、太陽光線が温室内に入っては来るものの、ガラスやビニールなどの遮断壁により、その一部が再び温室内に戻ります。このため、温室内の温度は外部より暖かくなるのです。これと似た現象は、地上の対流圏内でも発生しています。太陽光が地表面に到達すると、その一部が地表に吸収され、地表の温度が上昇しますが、これは地表面の温度が太陽よりはるかに低いことによるものです。その結果、太陽よりも波長の長い光線が放射され、太陽光も、地球に到達した後には長波の光線を伴って反射します。一方、地上を取り巻く対流圏は、より波長の長い光線をスムーズに吸収するため、この種の反射光は大気圏内に吸収されます。この現象により、大気が温暖化することになります。
もっとも、この現象そのものは決して有害ではありません。人類が自然界に介入する前までは、対流圏には常に太陽光の一部が蓄積されており、これにより地上全体の気温が人間の生活に適した温度に保たれていました。しかも、温室効果ガスが発生することなく、地上の平均気温は摂氏15℃から30℃くらい低下していました。しかし、人類が自然界に介入するようになってからは、産業革命の始まりと化石燃料の使用により、大気圏内のガスの構成要素が変化し、太陽が放出するエネルギーの吸収量が増加しました。
温室効果ガスという言葉を、二酸化炭素と結びつけて考える人がほとんどでしょう。しかし、二酸化炭素は温室効果ガスに含まれる要素の1つに過ぎません。このガスにはさらに、一酸化二窒素、メタン、水蒸気、オゾンなどが含まれています。
地上に存在する温室効果ガスの影響に、これらのガスがそれぞれどのくらいの割合を占めているかは定かではありませんが、水蒸気がおよそ36%から70%、二酸化炭素が9%から26%、メタンが4%から9%、そしてオゾンがおよそ3%から7%と推測されています。大気の主要な構成要素である窒素と酸素は、温室効果ガスでありません。それは、1つの核により連なるこれらの分子は、赤外線を吸収したり、反射したりすることがなく、最終的にこれらの分子には全く変化が起こらないからです。
現代の温室効果ガスのうち、主な懸念要素となっているのは人間の活動によって生じる二酸化炭素です。18世紀に産業革命が始まった当初には、大気中の二酸化炭素の濃度はおよそ280ppmでしたが、現在では350ppmとなっており、この状況が続けば2050年までに450ppmに達すると見られています。
もっとも、温室効果ガスについて語られるとき、それは実際、自然環境に対するその影響を意味します。温室効果という現象は1827年、フランスの科学者ジャン・フーリエにより初めて発見されました。フーリエによると、温室効果とは大気によって閉じ込められた太陽エネルギーの熱が宇宙に放射されず、地球の表面温度が上昇する現象とされています。
人間の活動の多くは、温室効果ガスを排出するものです。産業革命が勃発し、多様な産業用機械が発明されて以来、人類は農業や工業分野での活動により、地球と大気の環境を変化させました。産業革命の始まりとともに、人間の生活様式は大きく変化し、人口の増加、そして石油や石炭などの化石燃料の使用の増加により、大気中のガスの構成要素も変化しました。
これまでに行われた調査によると、化石燃料の燃焼による廃棄物は、毎年空気中に250億トンの二酸化炭素を増やしています。これは、1日当たりでは7000万トン、1秒当たりでは800トンに相当します。また、OECD経済協力開発機構の加盟国で行われた調査によれば、世界のエネルギー全体の30%を消費するこの組織の加盟国においては、硫酸の40%から50%、オゾンの25%、そして二酸化炭素を初めとする温室効果ガスの50%以上が、火力発電によるものだということです。また、二酸化炭素の排出には農業廃棄物の焼却も大きく関わっており、温室効果ガスの排出量の増加に拍車をかけ、自然環境やエコシステムに悪影響を及ぼしています。
温室効果ガスによる影響の代表例は、地球の温度の上昇です。気候変動の分野での権威ある組織IPCC・気候変動に関する政府間パネルの発表では、研究者らによる調査から、過去100年の間に地表面の平均気温が摂氏0.18℃から0.74℃上昇していることが明らかになりました。また、この組織は報告書において、20世紀の中ごろから、地球全体において見られる気温の上昇の大部分は、人間が排出する温室効果ガスに関係している、と述べています。さらに、この状態がこのまま続いた場合、1990年から2100年までの間に地球の平均気温は摂氏1.1℃から6.4℃上昇するとしています。
研究者らの調査からはさらに、炭素系のガスを初めとする温室効果ガスの排出が現在のまま続いた場合、2030年までに地球の平均気温は摂氏1℃から2℃上昇するとされています。また、これにより極地帯に根本的な変化が起こって氷山が溶解し、海洋面が上昇することから、多くの沿岸地帯や農業用地が水没するだろうということです。そして、インドとバングラデシュの大部分、さらにヨーロッパの沿岸地域が危機に陥るとされています。ユーロニュースは、温室効果ガスによる気温の上昇の弊害について報じ、現在の状況が続いた場合、2080年までに20億人以上の人々が水不足に陥り、また海水面が60センチ上昇するだろうと警告しています。
学者たちの間では、私たちが今から温室効果ガスの排出をやめれば、今後20年間での気温の上昇は1℃に収まるだろうと見られています。とはいえこの数字は、表面的には大したものではないように思われますが、長期的に見ると大気の状況や降水量の大幅な変化につながり、破壊的な影響をもたらしうるものです。また、こうした気候の変動により洪水や台風などの自然災害が増加すると考えられます。地球の気温が上昇すれば、1年のうちの猛暑日も増加し、その結果熱中症やマラリアなど、暑さによる病気が増えることになります。そして、こうした病気の危険に真っ先にさらされるのは大抵、貧困国に住む高齢者や子供たちなのです。
気温が上昇し、それが農業用地に影響を及ぼすことで、人間の食料源が減少します。さらに、気候の温暖化により人類は淡水の不足に直面することになります。さらに、気候の変動は動植物にも悪影響を及ぼします。特に、地球の温暖化が急速に進んだ場合、野生の動植物の生命が危険にさらされます。例えば、1年のうちの様々な季節の変わり目に他の地域へと移り住む動物や渡り鳥が、適切な移住先を見つけられなくなる可能性があります。
国連が発表した最新の報告によれば、世界の温室効果ガスの70%近くが、先進国から排出されているということです。この報告ではさらに、人間が1年間に作り出す炭素の量は、現在は36ギガトンであり、これを2050年までに11ギガトンに削減する必要があるとされています。
次回は、温室効果ガスの排出に世界各国がどのように、またどの程度関わっているかについてお話する予定です。