4月 04, 2017 14:58 Asia/Tokyo
  • 人口増加と自然環境
    人口増加と自然環境

前回は、環境学者の観点から見て、環境破壊に拍車をかけている一連の要因についてお話しました。しかし、そのほかの要因として1つの地域における人口増加も、環境破壊に大きく関与しています。今回は、この問題について考えることにいたしましょう。

環境学者の見解では、自然環境を破壊する危機の最も重要な原因の1つは、世界規模、特に発展途上国での人口増加です。複数の統計から、世界の人口は4日ごとに100万人ずつ増加していることが分かっています。この数字は、表面的にはそれほど注目すべきものではないかもしれません。しかし、このまま数年が経過すると世界の人口は倍増することになり、それに伴って新たな問題が浮上してきます。

実際、人口増加の加速は、自然環境に関する全ての問題の悪化を意味します。アメリカの地球環境問題の専門家レスター・ブラウンと、ノルウェー人の環境学者シュミット・ニールセンが2000年に行った調査も、このことを証明しています。彼らは、人口の増加とともに、土壌や水、大気の汚染の度合いも高まる、という結論に達しました。

インドの人口

 

世界の人口が増加すると、地球に埋蔵されている資源の消費も増えます。それは、人口が食糧生産と直接関係しているからです。食糧にかかる費用の増加とともに事実上資源の消費も増加し、またそれには複数の種類の生物の消滅を伴います。

現在、人類は地球に生息する生物全体のおよそ50%を、自らの多種多様なニーズを満たすために消費しています。しかし、このことは様々な生物が相互間のニーズを満たしあっていることに注目すると、最終的には世界における生物の多様性の破壊につながる可能性があります。

一方、世界の一部の地域では、食糧生産のための十分な原材料が存在していません。WHO・世界保健機関が最近発表した報告も、この事実を指摘しており、世界の多くの地域ではその地域の居住人口が食糧の生産能力を超過していること、それゆえに現在の人口を維持するためには食糧生産を増やさなければならないといわれています。そうでなければ、人間社会に貧困や飢餓、栄養不良などの数多くの問題が浮上すると考えられます。

アフリカの人口

 

動物の生殖と個体数の増加に関する数多くの研究の結果、全ての動物は自分たちが住んでいる場所の自然環境の資源に合わせて増殖することが分かっています。また、人間社会に関する調査からも、過去において食糧の存在と人口、そして食糧の豊富さと次世代の増殖に関連性があることが証明されています。一般的に食糧が乏しい社会では、人口も限られています。しかし、現代の社会では、あらゆる地域での農業の発展や天然資源の採掘などにより、人口の増加がその地域の天然資源のコントロールから外れてしまっているように思われます。この問題は、特に発展途上国において顕著になっています。

発展途上国では、人口増加や貧困、自然環境の疲弊が悪循環を生み出し、人々の暮らしに悪影響を与えるとともに、恒常的な発展を目指すこれらの国の努力を無意味なものにしています。人口が常に増加していることにより、貧困層の生活レベルが低下しており、それは主に高い死亡率や生活水準を向上させる便宜手段の減少という形で現れています。これらの国の社会における貧困は、自然環境の破壊を助長していますが、それは主に女性によるものです。それは、女性が自らとその家族の暮らしを立てるために、天然資源を浪費しているからです。

これまでに発表されている複数の統計によれば、発展途上国における死亡者の40%は、伝染病や先天性の疾病、出生前の死亡によるものとされていますが、先進国ではその割合は5%に過ぎません。確かに、この問題に関しては複数の要因が絡んではいるものの、人口の急激な増加は食糧不足、そして水質や土壌の汚染につながり、人間の健康問題や病気の拡散を引き起こします。

人口密集地域、特に衛生状態のよくない地域では、伝染病の発生にとって格好の条件が整ってしまいます。例えば、蚊の吸血活動によって媒介されるデング熱は、人口が密集している地域において急速に蔓延します。現在、1年当たり3000万人から9000万人もの人々がこの病気に感染しており、1980年代から恐るべき勢いで猛威を振るっています。デング熱をはじめとする伝染病は、世界における死亡率の35%を占めています。

世界における伝染病全体の80%は、初期症状として発熱を引き起こしており、発展途上国ではこの割合はおよそ90%に上ります。現在、世界では年間20億人が不良な衛生状態により下痢を起こしています。このうち、乳幼児を初めとする400万人が死亡しています。

水不足

 

発展途上国における水質汚染のもう1つの原因は、下水の垂れ流しです。例えば、インドでは国内の3119の都市のうち、下水処理施設や下水の垂れ流しを防ぐ一部の設備が存在しているのはわずか209の都市に過ぎません。しかも、そうした施設が完備しているのは、インド国内の8つの都市のみです。そのような状態において、こうした水が飲料水や入浴、洗濯に使われているのが現状です。水質汚染によるもう1つの問題は、マラリアの蔓延とそれによる死亡の増加です。現在、世界で1年当たり5億人がこの病気に罹患しており、1年当たり270万人が命を落としています。

人口増加によるもう1つの結果は大気汚染であり、年間数億人もの人々の生活に悪影響を及ぼしています。人口の増加は化学物質や化石燃料の消費量、そして自動車の利用の増加につながります。人口の増加と化石燃料の消費量の増大により、年間60億トンの二酸化炭素が大気中に排出されることになります。

この数十年間において、人口増加と技術革新、そして二酸化炭素を生み出す製品の大量消費により、人間に対して排出される二酸化炭素の量は、1人当たり1%から2%増加しています。これまでに行われた調査から、大気中に流入する二酸化炭素の量が60%増加した原因は人口増加であることが判明しています。大量消費と技術革新も、二酸化炭素の排出量を30%以上増加させています。

人口の増加により、固形廃棄物の量も増加しています。それは、廃棄物の量が消費活動とそれにより生まれる廃棄物の量に比例するからです。他にも、人口増加が環境破壊に及ぼした影響の結果として、森林破壊や砂漠化、肥沃な土壌の塩化、毒物の使用の増加、温室効果ガスの影響、生物の多様性の破壊が挙げられます。

中国の人口

もっとも現在、人口増加が自然破壊を引き起こしていることについては、有識者の間で意見が分かれています。彼らの多くは、環境の変化人口増加によるものではなく、大量消費や技術革新がその主な原因であると考えています。専門家の間では、人口増加、そして大量消費と技術革新というこの2つの学説のいずれも正しいと見られています。

先進国では、技術革新が自然環境を破壊していますが、発展途上国では人口の増加と貧困が自然破壊の主な原因となっています。このため、この2つの現象はいずれも懸念材料であり、現実に自然環境を破壊しています。このため、それぞれの地域におけるエコロジー能力に注目した上での政策や、資源を取り巻く現状を正確に把握することが必要不可欠となっています。