7月 06, 2017 16:02 Asia/Tokyo
  • イランの繊維産業
    イランの繊維産業

繊維産業は、食品や住宅についで、人間の最も基本的な需要を満たす産業であり、つまり、服飾産業を意味します。この産業の出現は、世界各地で発見された織機などの遺物から、旧石器時代にさかのぼることができます。

イランの繊維産業

 

繊維産業は、糸を作り出す紡績業や糸を布にする織物産業を含んでいます。繊維産業の一連の歴史を紹介する中で、まずはじめに、この産業の歴史の中で使われてきた最初の道具、つまり紡錘についてお話しましょう。紡錘の出現は、紡績技術の発展に重要な役割を果たし、糸車が出現する下地を作りました。

繊維産業

 

織機はその後に出現した道具で、紀元前4000年期の初めに出現しました。織機は人類の文明による成果の一つで、イラン、中国、シリア、エジプトの文明は、その出現に大きな貢献を果たしました。

各地の集団の間での様々な織り方により、様々なデザインの布が織られるようになりました。時代の経過と新たな状況の出現により、繊維産業も変化を遂げました。この産業は、産業革命の中で、目覚しい発展をとげ、これは先進国が産業化した理由のひとつとなりました。様々な繊維製品の生産は、各国の産業化への道を伴いました。

古い糸車のサンプル

 

過去において、繊維産業は、もっぱら糸や布の生産業を指していましたが、今日、繊維産業はより幅広く、複雑なものとなっています。衣類や敷物などを生産することに加えて、自動車のブレーキや人工血管、道路や飛行機、宇宙基地に関連する製品などに利用されています。

繊維産業は、国の発展の基準のひとつとみなされており、世界における繊維製品の主要な輸出国は、先進国です。2014年、世界の繊維製品の輸出総額は、8000億ドル近くに達しました。

古い糸車

 

イランでも、繊維産業は、戦略的な産業であり、イランの専門家によれば、イランにおける紡績技術は、およそ紀元前1万年にさかのぼるとされています。イラン高原の古代遺跡からは、多くの紡錘が見つかっていることは、この主張を裏付けています。

陶製や石製の紡錘がイラン中部・カーシャーン近郊のシアルクから見つかっていることは、大変古くからこの産業がイランに存在していたということを示しています。イランの人々は、伝統的な道具により、羊毛や木綿、そのほかの植物繊維から布を造っていました。さらに、敷物も作っていました。こういった衣類や敷物のサンプルは、イラン南部のペルセポリスの遺跡のレリーフに見られます。

20世紀前半のフランスの歴史家ルネ・グルッセは、各地で発掘された像により、古代にイラン高原に住んでいた人々の服装の様子を明らかにしました。

イランの繊維産業

 

イラン高原で発見された、最も古い人型の像は、紀元前4200年のものです。シアルクで発見されたこの像の服の形から、当時のイラン高原に住んでいた人々が、動物の皮をそのまま使うことなく、動物の毛で布を織っていたことが示されています。

また、イラン南部・シューシュの考古学的な発掘調査では印章が発見されていますが、この中で人が糸をつむいでいる様子が示されています。また、南東部ケルマーンの考古学的な地域からも、紀元前5000年期の布が発掘されており、これは動物性の繊維から作られています。さらに、紀元前3000年期の、糸をつむぐための棒が、イラン北部のダームガーンで発掘されています。

イランの繊維産業

 

時代の経過により、イランの織物職人も熟練し、更なる美しさや色の多様性が見られるようになりました。11世紀から12世紀のセルジューク朝時代、話題になっていた絹の布は、光沢や色の点で変化していました。

また、16世紀から18世紀のサファヴィー朝時代、イランの織物産業は黄金期を迎えました。デザイン、織、質、多様性の点から、この時代の織物生産は大いに栄えました。この時代、絹、綿、アトラスと呼ばれる絣、錦織などの布は、多様なデザインや、イランの文学作品をモチーフとしたデザインにより生産されていました。

サファヴィー朝時代に織られた布のサンプルは、イギリスのヴィクトリア&アルバート美術館などの世界の著名な美術館で見ることができます。今日、歴史的な、貴重な布の生産は、経済的には限定されていますが、現在も、テヘランやカーシャーン、あるいはイスファハーンの芸術学校などで作られている錦織などに、その痕跡を見ることができます。

イランの繊維産業における現状について、IRIB通信は、次のように報告しています。

「イランの繊維産業における新たな技術の利用は、少なくとも200年前にさかのぼることができる。現在、イランでは、9500箇所の繊維産業の関連施設が稼動しており、これは産業関連施設の11%にあたり、また、その従業員は国の雇用の13%近くを占めている。」

今日、グローバル化と市場競争の激化により、現代的な技術がいつの時代にもまして求められています。繊維産業は雇用と付加価値を生み出し、またほかの産業に比べて多額の投資を必要としません。このため世界各地での重要性から、繊維産業は、生産と品質の改善に関して、ナノ技術を利用する主要な産業分野となっています。ナノ技術により、繊維産業はより力強いものとなります。繊維産業の関係者は、ナノ技術の利用について、次のように語っています。

「ナノ技術を利用して、新たなものを開発・生産することで、現状のものに新たな特性を付与し、その利用法を拡大することができる。ナノ技術は繊維産業を、よりスピードのあるものにし、顧客の高まる需要を満たすことになるだろう」

また、ナノ技術は、新たな製品を生み出す方法となるだけでなく、多くのケースにおいて、ナノ技術への動きは、繊維産業市場で生き残るための企業戦略の一部となっていることを指摘すべきでしょう。2022年における繊維製品市場におけるナノ技術製品の総額は、290億ドルに達すると予想されています。これは、この分野に必要の能力を備えている国により多くの投資を行う機会を生じさせます。

現在も、ナノ技術による繊維製品に関するイランのシェアは、全世界でおよそ3%となっており、このシェアはフランスに比肩し、また、スペインや日本よりも大きい数字となっています。繊維産業の関係者は次のように語っています。

繊維産業の20%でナノ技術を利用

「抗菌のポリエステルチップやフィラメント糸、耐水性じゅうたん、衛生用の抗菌不織布などは、繊維産業部門におけるナレッジベース企業に属する、イランの研究者による成果の一部だ」

そのほか、イランの研究者の活動として、繊維産業関連機器の設計と開発があります。これにより、より品質の高い糸を、短期間で生産することができるようになります。この機器の開発グループは、地域の関連市場に進出することができた、数少ない業者となっています。