7月 25, 2017 19:41 Asia/Tokyo
  • 預言者ソレイマーン
    預言者ソレイマーン

ソレイマーンは、神の預言者の一人で、すばらしい能力を持っていました。

神は英知と栄誉をソレイマーンに授け、大自然の要素はすべて、彼の手の中にありました。ソレイマーンは、動物や鳥たちの言葉を理解し、動物や鳥たちもまた、ソレイマーンが持つ王権の偉大さを知っていました。

コーランには、この預言者ソレイマーンの偉大さについて語った、非常に興味深い物語が登場します。

 

ソレイマーンとその家来たちは、メッカのカアバ神殿への巡礼から、現在のシリア地方にあたるシャームへと戻る途中でした。彼らは乾いた灼熱の荒野にいたため、水を手に入れることができませんでした。そこでソレイマーンは、ヤツガシラを呼んで水を探してもらうことにしました。しかし当のヤツガシラの姿が見当たりません。ソレイマーンは尋ねました。

「ヤツガシラの姿が見えないようだが?戻ってきた時に、きちんと不在の理由を説明できなければ、処罰するか、首を切ってしまおう」

 

どれほどの時間が経ったでしょうか。ヤツガシラはずいぶんと遅くなってから戻って来ました。ソレイマーンの厳しい言葉を聞いていた者たちは口をつぐんだままでした。しかし、戻って来たヤツガシラは、ソレイマーンに叱責される前にこう言いました。

「神の預言者よ、私はあることを突き止めました。あなたがご存知のないことです。あなたの力や知識をもってしても、知り得なかったこと。サバアという土地に、ベルゲイスという女王がおります。彼女はあらゆる恩恵を有しており、大きな玉座を持っています。しかし、彼女とその土地の人々は、唯一の神の代わりに太陽にひれ伏し、それを信仰しているのです。彼らは悪魔のしわざによって、自分たちの行いが美しく見えており、神の道から逸脱しています。彼らは導かれておりません。」

 

預言者ソレイマーンは、それを聞くと驚いて言いました。

「その話の真偽のほどを調べてみることにしよう。それが事実であるというのなら、そのベルゲイスという女王のところに私の書簡を届け、その返信をここに持ってくるのだ」

                         

 

サバアの女王ベルゲイスは、威厳に満ちた態度で玉座に座っていました。すると、突然、一羽の鳥が近づいてきたかと思うと、彼女に向かって手紙を投げ落としました。ベルゲイスは驚いてそれを手に取り、開いて読んでみた後も、しばらく考えに耽っていました。それから大臣たちを呼んで言いました。

「とても大切な手紙が私のもとに届けられました。それはソレイマーンという人物からのものです。その手紙にはこう書いてあります。

『慈悲深く慈愛あまねき神の御名において。あなた方は私よりも優れていると思ってはならない。真の教えに服従して、私の許に来るがよい』」

 

ベルゲイスの軍の司令官たちはざわざわと騒ぎ出しました。一部の側近たちが言いました。

「我々は多くの富と権力を手にしています。彼と戦うことができるでしょう」

また別の者たちは言いました。

「ベルゲイス様、我々はあなたを指導者に選んだのです。あなたにその力があると信じています。あなたが良いと思うことを実行してください」

 

ベルゲイスはしばし、考えを巡らせました。

「自分の権力や軍の力を誇るべきではない。今こそ賢明、謙虚になり、ソレイマーンの真意がどこにあるのか、それを確かめてみましょう」

そこでベルゲイスは、側近たちに向かって言いました。

「圧制的な支配者が町に入れば、その国は荒廃し、愛する国民たちは卑しめられます。私は彼らの許に贈り物を届けて、使いの者がどのような答えを持ち帰ってくるのか、それを見てみようと思います」

 

それからまもなくして、女王ベルゲイスの使いの者が、たくさんの贈り物を持って預言者ソレイマーンの許にやって来ました。ソレイマーンはそれらの贈り物を一瞥すると言いました。「私を経済的に助けたいとでもいうのか。神から与えられたものは、あなたたちからの贈り物よりもずっと優れている。それなのにあなたたちは、こうやって贈り物をすることで満足している」 

ソレイマーンはそう言うと、サバアの女王の使いの者に向かって言いました。

「さあ、すぐに女王の許に戻るがよい。我々は、あなたたちがとても太刀打ちできないような軍勢を、あなたたちの許に差し向けよう。」

 

女王ベルゲイスは、ソレイマーンが自分の豪華な贈り物を受け取らなかった、という報告を聞くと、微笑みを浮かべて側近たちを見つめました。彼らは驚いて尋ねました。

「あなたは一体何に満足しておいでなのですか?」 

女王は答えました。

「ソレイマーンが清らかで正直な人間だということが分かりました。では、すぐに彼の許へと向かい、その新しい教えを学ぶことに致しましょう。」

                        

ヤツガシラは、女王ベルゲイスがやってくることを預言者ソレイマーンに伝えました。ソレイマーンは側近たちに向かって言いました。

「ベルゲイスはなかなか賢い女性のようだ。神から与えられた力を彼女に示し、私が預言者であることを彼女に理解してもらう必要がある。女王がここに到着する前に、彼女の権威を示す大きな玉座を、彼女の宮殿からここに持ってくることができるのは誰か?」 

すると、神の書物の知識を持つ大臣の一人が言いました。

「瞬きをする間に、私がその玉座をここに運んでまいりましょう」

 

預言者ソレイマーンは、女王の玉座が運ばれてくると、神にひれ伏し言いました。

「これは私の主からの恩寵である。私が恩恵に感謝する者なのか、それとも感謝を忘れる者なのか、それを試されるためのもの。誰もが自分のために感謝する。しかし、神は誰も感謝しなくとも、満ち足りた崇高な御方。」 

それからソレイマーンは言いました。

「ベルゲイスの玉座の形を変え、それが逸脱する人々のものであることを、女王が気づくかどうかを確かめてみようではないか。」 

 

ベルゲイスとその側近たちが到着しました。女王とその一行は、ソレイマーンの宮廷の壮麗さに驚いていました。ソレイマーンはベルゲイスに尋ねました。

「これはあなたの玉座でしょうか?」 

ベルゲイスは驚いた様子で言いました。

「はい、それはどうやら私の玉座のようでございます」 

 

預言者ソレイマーンは次に、ベルゲイスをガラスの宮殿へと案内しました。ベルゲイスはその中に足を踏み入れる際、水の中に入るのだと思い、裾を持ち上げて濡れるのを避けようとしました。それを見たソレイマーンは言いました。

「女王よ、それは水ではありません。ガラスでできた透明な建物です」 

 

ベルゲイスは、そのとき怠惰の眠りから目覚め、神の偉大さを悟りました。女王は、玉座が自分で勝手に移動したのではなく、誰かがソレイマーンの許に移動させたものであることを理解したのです。ベルゲイスは言いました。

 

「私は自分自身に圧制を加え、誤った信仰を持っていました。しかし今、預言者ソレイマーンと共に、世界の創造主である神に服従、帰依します。」

 

預言者ソレイマーンとサバアの女王ベルゲイスの物語は、コーラン第27章アンナムル章「蟻」、その第20節から44節に登場します。

                         

 

 

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