イランの現代芸術とグローバル化
今回のこの時間は、イランの現代芸術とグローバル化に関する会合についてお話ししましょう。
19世紀後半から、世界各地で革新的な芸術の流れが生まれたことを受け、新傾向の芸術が登場しました。これらの作品やそれに関する思想の影響力により、世界やイランの芸術、現代の写真、彫刻、絵画に変化が生まれました。イランの芸術におけるこうした新傾向の根は、イランの社会や知識人たちのヨーロッパの思想に対する対応や、写真や油絵といった新たな芸術の習得の中に見ることができます。
ガージャール朝の王たちがヨーロッパに渡り、ヨーロッパの学者たちがイランを訪問したことにより、イランの人々は、書道や絵画の伝統様式から離れ、新たな芸術様式を知るようになりました。画家のキャマーロルモルクによって初めてイランに西洋スタイルの芸術がもたらされました。その後、イランではパフラヴィーの時代の様々な出来事により、社会的な変化が生まれ、芸術家たちの間に新しいものを取り入れようとする傾向が広まりました。正式な教育により、このような傾向を奨励した最初の機関は、テヘラン大学の芸術学部でした。そこでは、イラン人の芸術家たちに、作品の中で新たな芸術様式を取り入れることが奨励されました。
1979年のイスラム革命前の30年間は、イランの現代芸術家の多くが、このような傾向に走っていましたが、イランの芸術分野において新たな方法を見出す中で、新しい芸術的な思想も生まれ、イランの芸術に根本的な影響を及ぼしました。サッガーハーネと呼ばれる思想は、イランで最も有名な新たな芸術の潮流であり、イランの新傾向の芸術を、昔からの独自の特徴と共に築くことに成功しました。
1979年のイスラム革命と、その後のイランイラク戦争は、イランの芸術に驚くべき影響を及ぼし、西側の芸術様式や西側寄りの新傾向を大幅に排除することになりました。一方で、壁画や写真といった芸術が著しい成長を見せ、イランの戦争や宗教的な雰囲気の中で、優れた芸術作品が生まれました。その後、芸術の歴史学者や社会学者は、イランの現代芸術の歴史にそれまで以上に注目するようになり、イランの現代芸術家は、独自の特徴により、自らの作品を世界の人々に提示することに成功しました。
イランの現代芸術とグローバル化に関する会合は、テヘラン現代芸術博物館で、2月23日に開催されました。この会合では、2本の映画が上演された他、2つの専門家会合が開催され、数人が演説を行いました。イランの現代芸術について検討するこの会合には、イランの芸術や文化の研究者、専門家、芸術家たちが出席し、その中で、現代芸術における場所と時間の意味、イラン芸術の変遷、新しいメディアとイランの現代芸術のグローバル化といったテーマが提起され、それらに関する演説が行われました。
この会合の事務局長を務めた大学教授のモリーディー氏は、現代芸術における場所と時間の意味を自身の演説のテーマに選び、その中でこのように語っています。
「現代とは特定の時代を指している。現代の始まりを60年代とする者もいれば90年代とする者もいる。一部は一つの世代の現れだと考えている。強調すべきなのは、現代芸術は、場所の描写や表現を伴うものであるが、近代の芸術は、世界的な芸術の経験を強調する、場所を伴わない芸術であることだ。場所の経験を排除したグローバル化の時代、現代芸術においては場所の表現が存在する」
モリーディー氏は続けて、このように語っています。「文化の一体化に対し、反対派の人々は、独自の文化やアイデンティティの維持を訴えている。衰亡に向かっている小さな文化は、国や地域の文化の復活に取り組み、独自の伝統的な芸術は、このような現代グローバル化の流れに対し、それぞれの文化を復活させている。現代芸術は、地域の芸術のための機会であるだけでなく、それぞれの小さな文化に注目するための道である。芸術史に存在する芸術様式に反し、現代芸術は一体的な意味を持たない。現代芸術は、形や内容を持たないが、地理に注目して建て直されている」
彫刻家で大学教授のダーレシュ氏も、イラン現代芸術とグローバル化に関する会合で演説を行いました。彼は現代という意味について次のように語っています。「一部の人々は、現代の芸術家とは、その時代に生きている人々であると考える。だが現代的というのは、それを意味するのではなく、その時代の不足を指している。芸術は、言われていないことを語るものである。そのため、まず自分の時代を知り、その上で、その不足を指摘するものであるべきだ」
ダーレシュ氏は次のように続けています。「グローバル化とは避けて通れないものである。なぜなら、もし世界的なものにならなければ、この地球を守ることができないからだ。グローバル化とは、地球の問題について合意することであり、それによって、地球の消滅を防ぐことができる。そのため、世界中の可能性を集め、地球の不足に注目し、それについて考えるべきである」
この彫刻家はさらに、このように強調しています。「グローバル化は、芸術に影響を及ぼす。なぜなら、今日の芸術の基準もグローバル化にあるからだ」
ダーレシュはこのように語っています。「私たちはイラン人であることを避けられず、それを誇りに思っているように、グローバル化も避けて通れない。またグローバル化は、それぞれの小さな文化を消滅させようとするものではなく、未来の人間には2つの側面がある。独自の文化を持つ地域的な側面と、世界的な側面である。私たちは今、この2つの流れの間におり、そのどちらも他方を否定するものではない。私たちはその2つの側面に注目すべきである」
イランの現代芸術とグローバル化に関する会合では、作家のカーヴースィー氏が、イラン、トルコ、エジプト、チュニジア、アルジェリアの経験の研究から、新傾向の書道における世界的なアプローチと独自のルーツについて取り上げました。彼は、書道は1000年以上もの間、イスラム教徒の優れた芸術だったとし、「印刷技術の登場により、書道は脇に追いやられたが、イスラム教徒の芸術家たちは、書道を保護し、そのために3つのアプローチを選択した。それらは3つとも、現代技術の書道に見られている」と語りました。
カーヴースィー氏は、イラン、トルコ、アラブの芸術家たちの書道の映像を紹介し、次のように語りました。「第一に、伝統を重視する人々は、イスラム世界の伝統の保護に努め、欧米がイスラム諸国から書道を学ぼうとした。第二のアプローチでは、芸術家たちが印刷やグラフィックの技術を利用し、自分の芸術を時代の傾向に同調させた。そして第三のアプローチでは、イスラム書道の利用が提起され、書道絵画の作品が生まれた。この方法では融合作品が生まれ、書道の世界に変化が起こった」
大学で芸術経済学の講師を務めるシェシュジャヴァーニー氏は、イラン現代芸術と世界の市場、法的な問題に関して演説し、このように語りました。「現代において、産業経済は創作経済へと向かい、これに基づいて、芸術や文化はこれまで以上に重要性を帯びている。文化と芸術は、多くの国のGDP国内総生産に影響を及ぼしており、多くの成長をもたらした。現在、芸術はこれらの国の経済投資の部門に入り、投資のできる商品として捉えられている」
この専門家は続けてこのように語っています。「現代芸術家たちは、自分たちの権利について精通しており、それは彼らの立場に大きな影響を与えている。著作権は芸術家のためのものである。現代芸術の重要性や各国の芸術や文化の交流、芸術の提供がGDPに影響することなどを考慮すれば、私たちはこの権利を受け入れる必要がある。現在、私たちは、芸術家の権利を守る機関を必要としている」
イランの現代芸術とグローバル化の会合では、イランが国際芸術協会に加盟する必要性についても、様々な意見が提起されました。また、他国の芸術家との交流を確立する可能性、教育課程への参加についても、様々な方法や計画が提起されています。