11月 02, 2017 23:36 Asia/Tokyo

ラジオをお聞きの皆様こんばんは。ドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領に就任して以来、アメリカと中国の関係は経済、貿易、政治、安全保障面での競争の新たな時代に突入しています。トランプ大統領は中国への圧力行使により、同国から経済、政治、安全保障面での権力を奪おうとしているように見受けられます。

今夜は、トランプ大統領が近く、初の中国訪問を控えていることにちなみ、トランプ政権時代におけるアメリカと中国の関係の展望について考えることにいたしましょう。

トランプ大統領、習近平国家主席

 

昨年中盤に、アメリカで大統領選挙に向けた選挙運動が始まってから、トランプ氏は共和党候補として中国に対する侵略的な政策を打ち出しました。そして、選挙での当選を目指し、アメリカの経済問題の多くが、中国との通商関係のあり方や、自国の産業を保護する政策に関係していることを吹聴しようとしました。

実際に、トランプ大統領は大統領選挙で当選するため、自らの主なスローガンとして中国に対する圧力行使を掲げ、その当時から中国と同国の経済政策に疑問を提示しました。

トランプ大統領がホワイトハウス入りを果たした後、アメリカと中国の関係は新しい時代に突入しました。アメリカは各部門において、中国に対抗する政策を強化しています。完全なビジネス意識を持つトランプ大統領はまず、経済部門において、アメリカの貿易市場を独占しているとして中国に矛先を向け、こうした現状によりアメリカで失業者が増加していると主張しました。

トランプ大統領はまた、アメリカがこれ以上中国により略奪されることを許すわけにはいかない、と述べています。

トランプ大統領は、中国との貿易収支のバランスをとるため、アメリカ向けの中国の輸出品に対し重税を課すことを示唆しました。もっとも、このことはある意味で日本や韓国にも関係するものとなりました。

日本の安倍総理大臣は、アメリカ訪問の際に同国への多額の投資を約束することで、トランプ大統領による懲罰的な政策という火の粉が、日本に降りかからないようにすることに成功しました。一方で、中国の習近平国家主席のアメリカ訪問、及びトランプ大統領との会談は、アメリカと中国の経済協力の拡大のきっかけにはつながりませんでした。;

トランプ大統領が、中国に対する圧力行使の手段として用いている第2の手段は、台湾問題と、台湾の独立主義者への支持です。

トランプ大統領は、蔡英文(さい・えいぶん)総統との電話会談により、中国の怒りを引き起こしました。中国は、アメリカの歴代政権が踏襲してきた「一つの中国」の原則を無視しているとして、トランプ大統領を批判しています。しかし、アメリカ政府は台湾に対するおよそ20億ドル相当の兵器売却を承認することで、中国に対する本格的な圧力行使の手段として台湾を利用しようとしていることを示しました。

トランプ大統領が、これまでにお話した2つの事柄以上に注意を払っている第3の問題は、朝鮮半島の危機を助長し、北朝鮮を開戦に向けて挑発することです。

トランプ大統領は就任後間もない時期に、朝鮮半島における安全保障問題をクローズアップすることにより、中国に100日間の猶予を与え、北朝鮮の核・ミサイル計画を止めさせるべく行動を起こすよう迫りました。しかし、この期間に中国はトランプ大統領の要求を果たせなかったのみならず、朝鮮半島の危機を中国と結びつけることについて、逆にアメリカに警告しました。

中国は、「北朝鮮問題は、アメリカと北朝鮮の二国間問題であり、両国が二方向からこの問題を解決すべきだ」と表明しました。しかし、アメリカは空母ロナルド・レーガンを初めとする艦艇を地域に次々に派遣し、北朝鮮問題をめぐり妥協する意志がないことを示しました。

さらに、アメリカは日本や韓国との合同軍事演習の実施により、これまでどおり地域の治安状況を一触即発の状態に保持しています。トランプ大統領は、北朝鮮問題をめぐりアメリカと協力するよう中国を促すため、経済や台湾問題というてこを利用しているのです。政治評論家のエリック・ゴメス氏は、次のように述べています。

「中国は、トランプ大統領が考えているほど、北朝鮮の首脳陣に影響を及ぼせるような強い力を持ってはいない」

「世界の情勢」は、IRIB国際放送ラジオ日本語がお送りしています。今夜は、トランプ政権時代のアメリカと中国の関係の展望についてお話しています。

2011年に、オバマ前アメリカ大統領が東アジアに重点を置く軍事政策を打ち出したことで始まった、中国をけん制する裏の政策は、トランプ政権時代になってから定着したと共に、インドにより強化されています。アメリカは、同国との通商・軍事面での関係をもっと拡大するようインドに促すことで、アメリカに同盟するそのほかの国と同様に、インドまでも動員し、中国包囲網を完成させようとしています。これについて、オーストラリアの政治専門家デイヴィッド・ブルースター氏は、次のように述べています。

「アメリカと日本、そしてインドの軍事協力は、中国に対抗するためのこの3カ国の同調の拡大の実質的な重要性を示している。一方で、中国の要求はこうした連携や同調を弱めることにある」

トランプ大統領は、中国と対立している南シナ海の沿岸諸国を支持することで、日本に対しては憲法改正による強力な軍隊の保有を促す一方、中国には更なる頭痛の種をもたらそうとしています。トランプ大統領が、先だって日本で行われた衆議院選挙での勝利に際して、安倍首相に祝意を示したことは、トランプ大統領が次回の地域諸国への訪問で、中国への対抗を目的とした連携強化のための綿密な計画を練っていることを示しています。

ビジネス的な方向路線を踏襲するトランプ大統領は、東アジア地域の治安の乱れを誘うことで、アメリカ軍による安全確保代の支払いと称して、アメリカから安全を輸入するよう地域諸国に促すと共に、収入を得る一方でオーストラリアやインド、日本はもとより東南アジア地域にまでを含めた、中国対抗戦線を形成すると表明しています。

しかし、トランプ大統領は就任後のこれまでの9ヶ月間において、朝鮮半島の危機の解決に当たって中国に対応する具体的な計画がないことを示しました。この点について、ロシアの政治評論家アレクセイ・マズロフ氏は次のように述べています。

「トランプ大統領は、中国に対するキチンと計算した括弧たる戦略を全く有していない。それは、彼が常に中国を変えようとしているからだ」

いずれにせよ、中国はトランプ大統領による強硬な政策に、論理的に反論することで、アメリカとの緊張による影響を受けるつもりは一切ないことを示すとともに、危機管理により事態を平静に保つことに成功してきたのです。