11月 09, 2017 23:24 Asia/Tokyo

●リスナーより   今日は秋分の日、イランでは新学年が始まったのですね。日本とは異なり、夏休みが終わると新学年が始まる国が世界的には多いように感じられます。日本では夏休みが終わると新学期が始まりますが、毎年この時期は学生たちの自殺が急増すると言われています。イランでは新学年が始まる時期にこのようなことはないのでしょうか?  

 ●ラジオより

中:最近、日本では夏休み明けの子どもの自殺が多いと言うことがニュースになっているそうで、大変痛ましいことです。山口さん、イランでは子どもの自殺、幸いあまり聞きませんよね。

山: そうですね。日本では特に最近、人間関係が希薄になっているとよく聞きますが、それは大人の世界だけでなく、子どもの世界でも、何か困ったことがあったら気軽に誰かに相談できるといった、心のより所が失われてしまっていることの現われではないでしょうか。その点イランですと、例えば長い夏休みで学校の友達には会えないかもしれませんが、家族親戚や近隣の人々との関係が非常に緊密ですし、実際に行き来も盛んですよね。ですけれど、イランも世界のそのほかの国と同様に、インターネットやモバイル、携帯電話を持つ年齢が下がってきていることから、次第にフェイストゥー・フェイスの交流が少なくなるという現象は、子どもたちの間にも広まってきているようです。イランが本来的に持つ良さの1つである、人間関係の豊かさや多様さが先進技術の発達により失われないよう祈るのみですね。

中:そうですね。親戚の集まりごとがあっても、話しもせずずっとスマホを見ている人が多くなりましたよね。昔は、話しがつまらなくても大人の話は聞くものでしたし、子ども同士わいわい言って遊んでいたものですけれど。イランの学校で日本ほどいじめがないのは、あまり一つの枠にとらわれていないというか、同じでなくてもかまわない、みんな一緒に一つのことをするのが面倒というか、あまり熱心でないというか、いい意味で緩いんですよね。ですから、絶対にこうあらねばならないとか、同じでなくてはならないという縛りがなくて、いい意味でゆったりしているせいなのではないかなと思います。

 

●リスナーより  

 「イスラムと健康」の中で、入浴によって体をきれいにすることの大切さを話していらっしゃいました。イランの皆さんは、きれい好きで、また、体臭をカバーするために香水を使うなど、エチケットにも気をつけているのでしょうね。ところでイランには共同浴場はあるのでしょうか?また、それは日本で言うと銭湯、それとも温泉、どちらにイメージが近いでしょうか?イランの人々のお風呂の入り方は、日本式、西洋式、どちらに近いですか?

 

●ラジオより

中:山口さんは、イランで、温泉か公衆浴場か、どちらかにいらしたことはありますか?

山:はい、もう3,4年前のことになるでしょうか。テヘランから一番近いと呼ばれるイラン北部マーザンダラーン州のラーリージャーニー温泉に行ったことがあります。到着してみたら、まさに温泉の町らしく、温泉旅館がずらりと軒を連ねていました。そのうち、私が利用したのはいわゆる露天風呂スタイルではなくて、家族風呂のような感じで普通の湯船と洗い場のあるところでしたが、お湯はもちろん全て天然でした。ちなみに、確かその温泉はリューマチや皮膚病の湯治にきく温泉だったと思います。それから、最近では1年ほど前の丁度冬のさなかに、イラン中部にあるマハッラート温泉に行ってきました。但し、この時は浴場が工事中で利用できず、温泉街の見学のみとなりましたが、何と町中に温泉が湧き出る際の湯気が立ち込めていまして、真っ白な湯気の中での温泉街の散策だったことが思い出に残っています。

中:私は10数年前に、イラン北部のサレイーンの温泉に行ったのですが、日本と違って、ちょうど西洋のスパのようだと言えばいいのでしょうか、水着を着て入るものなのですね。小さな湯舟がずらりと並んでいて、そこに入る、という形でした。体を洗いたければ、シャワーの個室があって、そこで洗うと言われました。テヘランでも一世代前は内風呂がなくて、いわゆる共同風呂に行ったらしいのですが、大きな湯舟があるのではなく、個室になったシャワーがたくさんあって、もう、体を洗うため、という感じだったと言うことでした。今でも所々共同風呂が残っていますが、内湯が普及して、ふつうの人はあまり利用しなくなっているようです。 

 

リスナーより  

 記念日の数が多いように思われますが、休日となる記念日、休日とはならないが、決められた行事が行われる記念日とに分けた場合、どちらが多いのでしょうか。イラン暦、イスラム暦で決められた日以外に西暦で決められている祝日、記念日などあるのですか。 

 

ラジオより

中:イランは確かに休日が多いですよね。休日もイスラム関連のものと、イランの建国に関するもの、そして季節的なものがあります。休日は全部で24回、そのうち、イスラム関連が一番多くて17回、イラン建国に関するものが5回、後の2回はノウルーズと、自然の日です。休日を「回」としたのは、断食明けの祝祭、エイデ・フェトルは2日休み、ノウルーズは4日と、必ずしも休みが1日だけではないためです。さて、お休みではない記念日、いろいろありますよね。

山:そうですね。例えばイスラムやそれ以外の偉人の生誕日ではあるものの、学校や官公庁は平常どおりという日も結構あります。調べてみたところ、いくつか見つけました。例えば、イスラム暦でシーア派8代目イマーム・レザーのマアスーメの生誕日は、「少女の日」とされていますし、イラン暦オルディベヘシュト月25日、即ち5月15日は、イランが誇る大詩人フェルドゥスィーの記念日、そしてペルシャ語を守る日となっていまして、この大詩人を記念する式典が全国で実施されます。それから、同じくオルディベヘシュト月12日に当たる5月2日は、シーア派4代目イマーム・ゼイノルアーベディーンの生誕日でして、同時に「教師の日」とされています。この日には、学校で児童生徒たちが日ごろお世話になっている感謝の気持ちを込めて、先生に花束やプレゼントを渡す日だそうです。そういえばもう何年も前に、イラン人の方々に個人的に日本語を教えていた時期があったのですが、その時に「教師の日」にちなんで花束とお菓子のセットを生徒さんからいただいたことを覚えています。ついでにもう1つ、メフル月26日に当たる10月18日は、「体育の日」になっていました!

中:そうですね、先生の日は、個別にプレゼントを買って先生に渡したり、クラス委員さんが中心になってお金を集めて、金貨をプレゼントしたり、割とちゃんと祝っていますよね。

 

リスナーより  

 インタビューでは、テヘラン大学の学生がセリフを覚えるための(それも相当に長いもの)、3ヶ月にわたる苦労話には脱帽以外の表現方法がありません。反対に思うのはきっとペルシア語は相当、学習には困難な言語だろうと想像するだけです。

 

ラジオより 

中:いつも、絵はがきを同封してくださって、ありがとうございます。さて、イランの子どもたちはとにかく暗記が得意ですよね。もちろん決して苦労をせずに暗記しているわけではなく、それなりに努力はしているのですけれど、とにかく暗記は日本人より得意な気がします。

山:ええ、イランの学校に通っている子どもさんたちを見ても、小学生から高校生まで、試験前にノートに書いたことを必死に呪文のように唱えながら暗記している光景をよく目にします。それから、自分の書いたノートを親御さんなどに渡して、質問文を呼んでもらい、それに対する答えの文を言う、という練習もよくやっていますよね。それから、もうだいぶ前にテレビで見たのですが、確か7歳か8歳ぐらいの男の子で、コーランを全て暗記しているという子どもがテレビに出ていました。一体、ああいう子どもたちの頭の中はどうなっているのでしょうか。少し知能を分けてくださいと頼みたいぐらいです(笑)。

中:ところで、山口さんは大学時代にペルシア語を専門となさっていたそうですが、ペルシア語は他の外国語と比べどんなところが難しいと思いますか。

山:そうですね、とにかく、文字、文法、発音など、日本語と共通する要素がほとんどないこと、そしてイラン人特有の発想による慣用句、諺が多いこと、それから日本語にはないイスラム・宗教の概念や表現が沢山出てくることでしょうか。もっとも、語順につきましては、「これは何ですか?」「これは本です」のような短文については、日本語とほぼ同じものもあります。ですが、日々ペルシャ語に触れていて、1つ1つの単語の意味は理解できても、文全体の意味が正しく取れないことがままあるんですね。文の細かいニュアンスを読み取ったり、似ている言葉の微妙な違いを識別したり、またある事柄についてペルシャ語で説明したりする時など、使える語彙や認識度などの面で、ネイティブには到底かなわないということを痛感しております。

中:それはそうですね。私は大学生のころドイツ語を第2外国語として勉強したのですが、当時は四苦八苦したことが、ペルシア語を話すようになって、やっぱり同じグループの言葉であるせいか、割とすんなり頭に入るようになりました。文法的なことがドイツ語に似ている部分があるんですよね。まあ、だからといってドイツ語が使えるようになったかというと、そううまくはいきませんけれど。

 

リスナーより  

 最近、週末には近所のカフェ巡りをしています。ちょっとしたモーニングセットをとりに訪問しています。テヘランの朝食は、内食なのか外食なのか、どちらなのでしょうか。自宅ではほとんど調理をしない国もあるそうで、それぞれの国の食事事情は気になるところです。数年前に見たイラン映画で食事の準備が大変とかであったと記憶しています。

 

●ラジオより

中:カフェ巡りでモーニングセットとは優雅でうらやましいかぎりです。さて、イランでは朝ご飯を外で食べるというのは一般的なのでしょうか?

山:通常はあまりないと思いますが、どこか野山に散策に出かけたりした場合などは別です。旅行に行った際などは、あえて行った先の独自のメニューで朝ごはんということは珍しくないと思います。私は以前、テヘランから西に向かってバスで旅行した際に、途中のガズヴィーンという町に立ち寄り、そこの有名な朝食のメニューである、レンズ豆の煮物を食べました。

中:イラン人は家で食事をするというのを大切にしているように感じられますが。

山:そうですね。彼らにとってはそれが長年の習慣になっていますし、なんと言っても家族で食事を共にすることで、外での疲れを癒し、安堵を感じるという効果が大きいのではないでしょうか。それから、最近では確かに以前よりも外食産業も発達してきてはいるものの、やはり自分たちで作った食事のほうが好みに合っていて、また信用が置けるという理由もあると思います。

中:そうですね。やはり朝食はシンプルにお母さんが用意したものが一番と言うことでしょうね。イランは焼きたてのパンを子どもに買いにやらせて、熱々のまま食べるという贅沢な食べ方をしますよね。これもおうちご飯ならではの食べ方だと思います。