農産品・りんご
この時間は、イランの農産品のひとつ、りんごについてお話しましょう。
この数十年、農業部門は、世界経済における歳入の中心として注目を集め、各国は、農業の開発を重視しています。需要が増加している果物の一つが、りんごです。
りんごは、数千年の歴史を持つ果物です。世界の一部の人々は、預言者アーダムとハワーが、りんごを地上に持ってきて、地上の人々のために恩恵が下ることになったと考えています。りんごは、19世紀半ばまで、食べることを楽しむためだけの果物とされていました。しかし、りんごに含まれる栄養価が知られるようになった後、この果物の需要が増加し、りんごは世界の経済的な農産品として知られるようになったのです。
りんごは通常、黄色、赤、緑の3種類があります。世界のりんごの主な産地は、北半球では北緯35度から60度、南半球では南緯30度から40度の間となっています。この果物は、寒冷地帯と温暖地帯でよく育ち、さまざまな種類があります。
これまでに、7500種類以上のりんごが確認されています。これらは、栽培種と野生種に分けられます。野生種のりんごは、山すそや辺境地に生育しています。
栽培種のりんごは、野生種に比べて良質で、背が高くなっています。果樹の中でも、りんごは最も古くに植えられた木だと言えるでしょう。
りんごは、適した条件のもとで栽培された場合、体に必要なビタミンを含み、非常に高い医学的効果を期待することができます。そのため、りんごは健康的な果物だといえます。りんごには、ビタミンB1、B2、B3、A、Cの他、カルシウム、カリウム、鉄分などが豊富に含まれています。イランの栄養学の専門家であるマリヤム・メフルアーズィー氏は次のように語っています。
「りんごは、含まれる化学的な成分の構成によって種類が異なる。食事の前にりんごを1個食べると、消化器官の機能を高めるのに効果的である。また、りんごをかじることであごが鍛えられ、歯を磨いたのと同じ効果が得られる。りんごに含まれる酸が口の中の細菌を殺し、口臭をなくすとともに、歯の間につまった食べかすをきれいにしてくれる」
肌をみずみずしく保ち、乾燥を防ぎたいのであれば、りんご食べるとよいでしょう。高齢者は特に、肉や脂っぽい食事を食べ過ぎると痛風にかかりやすくなります。そのような人は、肉を減らし、代わりにりんごを食べることをお勧めします。
りんごは、尿酸の形成を妨げます。りんごを食べると、大量の酸が尿によって排出されます。また、頭を使う仕事をし、集中力が必要な人は、りんごを食べるとよいでしょう。
りんごに含まれる糖分は、固まった筋肉をほぐします。また、りんごは非常に強力な解毒作用を持っています。さらに、心に落ち着きを与え、ストレスや不安を取りのぞく効果があります。
りんごは、イランの重要な農産品のひとつです。イランにおけるりんごの栽培は長い歴史があります。りんごの栽培に適した気候条件がそろっていることから、りんごはイランの各地で栽培されています。
イランでは昔から現在まで、非常にさまざまな種類のりんごが栽培されてきました。イランのりんごは、それが実る時期によって2種類に分けられます。一つは夏に収穫されるりんごで、もうひとつは、秋から冬にかけて収穫されるりんごです。
2014年のりんごの生産に関する世界的な統計によれば、イランは世界4位のりんごの生産国となっています。過去30年の間に政府によって農産物の生産量を増やす政策が取られてきたため、りんごの生産量は3倍以上に増加しています。
イランの各州のりんごの栽培面積は、30万ヘクタール以上です。中には、1ヘクタール当たり、130トンのりんごを収穫した業者もありました。
イランでりんごが栽培されているのは、西アーザルバイジャーン、東アーザルバイジャーン、テヘラン、ファールス、イスファハーン、ホラーサーンラザヴィー、ハメダーン、チャハールマハール・バフティヤーリーの各州です。
イランで最もりんごの果樹園が多いのは、西アーザルバイジャーン州です。西アーザルバイジャーン州では、年間平均100万トンのりんごが栽培されています。また、イランで生産されるりんごの38%が、西アーザルバイジャーン州とウルミエ行政区で生産されています。ウルミエ地区は、山岳地帯の気候で、りんごの栽培に適した気候条件であることから、常に、りんごをはじめとするさまざまな果物が育つ場所となっています。
この他、イランで良質なりんごが栽培されているのは、中部イスファハーン州のセミーロム地区です。この州では、6万ヘクタールの果樹園で、年間100万トン以上のりんごが栽培されています。セミーロムは、りんごの栽培に適した気候条件により、経済的に価値の高いりんごが栽培されています。海抜2000メートルにあること、日差しが強いこと、水資源に恵まれていること、土壌の質がよいことにより、セミーロムのりんごは質が高く、国内外の市場に送られています。
ダマーヴァンドの赤いりんごは、イランの赤いりんごの中でも最も有名で、テヘラン州のダマーヴァンド行政区で栽培されています。このりんごははるか昔からイランで生産されており、高い質を誇っています。研究の結果、ダマーヴァンドのりんごは、他のりんごに比べて栄養価が高いことが分かっています。
この他、テヘラン州ではサイズの小さなりんごも栽培されています。サイズは小さいものの、香りや味がよく、消費市場に多くの顧客を有しています。
セムナーン州のシャーフルード行政区では、実が赤い小さなサイズのりんごが生産されています。この酸味の強いりんごは生産量が少ないため、その地域で消費されています。
今日、新たな技術の開発により、さまざまな果物の余剰生産の廃棄を防ぐことができています。これは、りんごにも当てはまります。りんごは、ジャムなどの加工品として利用できます。新鮮なりんごや加工品は、国内の市場の需要を満たしたあと、ドイツ、アラブ首長国連邦、バーレーン、パキスタン、イラク、クウェート、オマーン、アフガニスタン、トルクメニスタン、ロシア、カザフスタン、マレーシア、インドといった国々に輸出されています。