農産品・ざくろ
イランはざくろの生産において、作付け面積6万ヘクタール以上、生産量およそ100万トンに達しており、世界最大のざくろの生産国で、輸出国です。
ざくろの栽培は、4000年の歴史を有しています。多くの植物学者は、ざくろはイラン原産であり、イランからインド、その後、北アフリカ、中国、ヨーロッパ、アメリカに伝わったとしています。カスピ海沿岸や中部ロレスターン州、チャハールマハール・バフティヤーリー州、西部コルデスターン州、南部ファールス州、南東部スィースターン・バルーチェスターン州、アルボルズ山脈など、イランの一部の地域に野生のざくろの木は見られることは、この主張を裏付ける事実となっています。
イスラムの聖典コーランにも、3回にわたりざくろが出現します。コーラン第6章、アルアンアーム章、家畜、第99節には、雨や、さまざまな植物の生育、ざくろなどの果実の実る庭園は、神の偉大さを示すものだとしています。また、コーラン第55章、ラフマン章、仁慈者、第68節でも、信仰心あるものが食べることのできる楽園の果実のひとつにざくろを上げています。また、同じアルアンアーム章の141節でも、ざくろを食べることを進めています。
ざくろの木は、多くの枝を茂らせ、小さなとげがあります。また、ざくろの木は大変暑く、乾燥した風の強い場所でも育つことができ、マイナス10度まで耐えられます。つまり、世界の多くの場所で生育することができるのです。木の高さは、平均して2メートルから5メートルです。
ざくろは酸味とともに、甘みがあります。色も大きさもさまざまですが、その基本的な特性は共通しています。イラン中世の偉大な医学者、イブンアリー・スィーナーは、ざくろは甘みが強いほうが好ましいとしています。また、ざくろの実のすべての部分に医学的な効用があるとしています。
これまで、多くの研究者が、ざくろには病気を予防し、治療する成分が含まれていることを認めています。その中で、ざくろの皮、花や種は、薬用成分が存在するため、製薬産業で使用されてきました。
伝統医学の研究者によれば、ざくろの実は、その特性と多くの利点により、万能薬とされてきました。ざくろの実はビタミンB1、B2を豊富に含み、ビタミンC、B9、鉄分などのミネラルも含まれています。また、血液をきれいにし、肝機能を強化するとともに、糖尿病も予防します。また、喘息などの呼吸器系の病気にも、胸の痛みや激しい咳にも効果があります。また、心臓病の患者には、この果物を食べることが勧められています。
ざくろはまた、動脈硬化症や心筋梗塞の予防に効果的です。さらに、血液を造り、口腔内の病気や下痢などに効果があります。イランの伝統医学では、胆汁を増やし、腎機能を強化するとされています。さらに、コレステロールや血圧の状況を改善し、がんやアルツハイマー、老化、肥満の防止にも効果があるとされています。ざくろの種は、繊維質を含んでいることから、消化機能の働きを助け、大腸がんなどのがんを予防する効果があります。
さらに、抗酸化物質を多く含んでいることから、ウイルスに対するからだの免疫力を高めます。ざくろを食べることで、骨軟化症などの治療に役立ちます。また、うつ病の予防にも大変有効です。
ざくろの色は簡単には落ちません。そのため、昔はざくろの木の枝や根っこ、その花や皮が、皮革産業や染色産業で使用されていました。今日、ざくろの皮は、伝統的な染料として利用されています。また、ざくろの果汁も、繊維を染めるために使われています。
ざくろの果汁は、ざくろ製品のひとつであり、殺菌作用や、炎症を抑える効果があります。そのほか、ざくろの濃縮液やジャム、ゼリー、飲み物やアイスクリーム、家畜用の飼料、酢などが、ざくろ製品の一部です。
今日、イランでは700種類を超えるざくろが栽培されており、南部ファールス州、中部マルキャズィー州、イスファハーン州、ヤズド州、北東部ホラーサーン州で主に生産されています。
マルキャズィー砂漠の周辺に位置する全域では、大変古くから、ざくろは特別な経済的な農作物とされていました。テヘラン近郊のサーヴェ、南部ネイリーズ、北東部のバジェスターンやフェルドゥースなどが、イランにおけるざくろの名産地となっています。
サーヴェのざくろは、甘くておいしく、皮が薄く、長期保存が可能なこと、有機栽培であることから、世界的な名声を博しています。サーヴェのざくろは、最長でも4ヶ月しかもたないほかの世界各国のざくろと比べて、1年半から2年も持ちます。この地域では70種類以上のざくろが生産されており、国内の需要を満たすだけでなく、世界各国にも輸出されています。
南ホラーサーン州にあるフェルドゥース行政区の果樹園からも、毎年2万トンから3万トンのざくろが収穫され、国内外の市場に出されています。この地のざくろはほかの地域と比べて、糖度が2%ほど高くなっています。
世界のざくろの中で、最も利益率が高いのは、中部イスファハーン州カーシャーンのフィン地区で生産されるざくろです。5キロのうち、市場に出せないものはわずか500グラムであり、最も高いざくろは、ヤズド州のざくろで、最高値で輸出されています。
イラン北部・マーザンダラーン州のギャルーガー行政区でも、300ヘクタールを超える土地に、有機的な形で、野生のざくろの一種が自生しています。
そのほか、気候の多様性によってざくろが栽培されている場所に、北西部東アーザルバイジャーン州のジョルファーのアラス川流域が挙げられます。この地域は温帯に属しており、さまざまなざくろが収穫されています。この地域で生産されるざくろは、アルメニア、アゼルバイジャンから注目されています。
イラン産ざくろの輸出先には、オランダ、ドイツ、フランス、スイス、スウェーデン、ロシア、トルクメニスタン、韓国、イラク、アラブ首長国連邦やカタール、クウェートなどのペルシャ湾岸諸国となっています。