ダナエ・ラケモサ（ユリ科の常緑低木、和名なし）
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ダナエ・ラケモサ植物
今回は、イランから小アジアにかけて分布するユリ科の常緑低木の１つ、ダナエ・ラケモサをご紹介することにいたしましょう。
研究者らは、科学的な資料をもとに、イランで生息環境が脅かされている植物の種類を、およそ２４００種類と発表しています。このうち、およそ２０種類は絶滅の危機に瀕しています。
専門家の見解では、これらの植物が絶滅危惧種のリストに掲載されることになった背景や理由として、土地の利用法の変化、様々な目的での乱採、気候の変動が指摘されています。こうした植物の１つが、今回ご紹介するダナエ・ラケモサです。
ダナエ・ラケモサは、高さが５０センチから１メートルほどの常緑樹で、竹に似ています。この植物の枝には、たくさんの葉が対ではなく交互についています。
ダナエ・ラケモサの葉は、長さが５センチから８センチ、幅は２センチ半ほどで、先端がとがっており、明るい緑色をしています。この植物には、枝の比較的上の部分に６つから９つの房状に連なった小さな白い花が咲きます。
ダナエ・ラケモサの果実は、直径７ミリから９ミリほどの小さな赤いボール状になっています。この植物は、春に開花し夏に果実が実ります。さらに、秋に種子が拡散することで、また根などの栄養器官の分根によって繁殖します。
ダナエ・ラケモサは、イラン北部の地元社会の文化において、特別な位置づけを有していました。古代人の多くは、この植物が常緑樹であり、枯れないことから、この植物を家族の無病息災や長寿、新鮮さのシンボルとみなしていたのです。
このことから、太古の昔より現在に至るまで、イラン北部マーザンダラーン州では、同国の春の新年ノウルーズの期間中に、ダナエ・ラケモサを自宅に飾る習慣があります。
ダナエ・ラクモサは、抗酸化作用のほか、血液の凝固を防ぐ性質を持っていることから、製薬産業に利用されています。この植物から取れるエキスを沸騰させたものは、イランの伝統医学においても利尿剤、そして月経促進剤として使用されています。
しかし、現在ではダナエ・ラケモサは観葉植物として販売されるケースが主流です。この植物の葉のついた枝は、花束や花かごの装飾によく利用されます。市場においてこの植物の葉の需要が高いことから、温室での人工栽培が盛んに行われており、その枝は摘み取られた後、販売用に出荷されます。
残念ながら、現実にはイラン北部の森林で、ダナエ・ラケモサが販売による営利目的で密採され、市場に出荷されている事例が後を絶ちません。このことから、自然環境に自生しているこの植物の群れに被害がおよび、生息環境が破壊されています。
イラン国内におけるダナエ・ラケモサの生息地域は、北部のマーザンダラーン州、ギーラーン州、そして北東部のゴレスターン州の３つの州にまたがり、しかも急激な岩山が存在し、日陰の多い地域とされています。
現在、気候の変動などの様々な原因により、これらの森林の総面積が縮小しています。そして、ダナエ・ラケモサ自体もイラン北部の森林地帯のみに自生するそのほかの多くの植物と同様に、絶滅の危機に瀕しています。
一方で、ダナエ・ラケモサの自然繁殖の速度が非常に鈍いことから、この植物の存続が危ぶまれています。この植物が天然の自生環境において発芽するには、種子が地面に落ちてからおよそ１年半、成熟するのに６年もかかり、しかも種子の中で発芽するのは全体のわずか２０％ほどに過ぎません。
数年前から、イランの環境保護機関などはダナエ・ラケモサの乱獲に注意を払っています。どのような植物や潅木であれ、乱獲は法律違反とされていることから、ダナエ・ラケモサの乱獲も違法行為とみなされます。
イランの天然資源や自然環境の保護機関の関係者によれば、近年ではダナエ・ラケモサの乱獲は減少しているものの、依然としてその他の薬草よりも乱獲される量が多いことが判明しています。このため、現在では自然環境保護を訴える民間団体の一部が、一般の花卉販売店からダナエ・ラクモサにより装飾されている花束や花かごを購買しないよう、広く一般に注意を呼びかけており、それにより、この稀少植物の絶滅を阻止しようとしています。
次回もどうぞ、お楽しみに。
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