3月 11, 2018 20:59 Asia/Tokyo
  • プラス思考
    プラス思考

今回は、魂の健康における重要な要素としてのプラス思考について考えてみることにいたしましょう。

「「魂の健康」とは、まさに精神的な安らぎと確信そのものです。この心の安らぎは、人智を超える、物質的な要素とは異なる優れた力の源への信仰心や確信から生まれます。

魂の健康における重要な要素の1つは、うつ状態の解消です。現在、世界では実に多くの人々がうつ病を抱えており、うつ病は精神面での健康を維持できず、無力な状態に陥る主な原因となります。

精神科医の間では、人々の間に見られるうつ病の主な原因の1つとして、物事を悪い方向に捉えてしまうマイナス思考が指摘されています。この見解によれば、常日頃からマイナス思考にとらわれている人は、普通の状態よりもうつ病に陥りやすいと考えられています。

うつ病に罹っている人は、あらゆる物事に対する希望を失うことになり、このことはそうした人々の身体的、精神的な病気や不快な症状、脆弱化を招くことになります。

魂の健康について考える上で、うつ病を克服、予防する最も重要な方法の1つは、自らの意識からマイナス思考を振り払い、希望の持てるプラス思考を育むことです。物事をプラスの方向に捉えられる人は、そうでない人に比べて、心と体の双方においてより健康で喜びに満ちており、人生に対する満足度も高くなっています。

 

 

今日、心理学者は人々がよりよい人生を歩めるよう、プラス思考を奨励していますが、イスラムでは、今から1400年前に既にこの重要な事柄が推奨されています。

イスラムに関する資料には、人類に向かって物事をよい方向に解釈し、プラス思考を持つよう呼びかける伝承やコーランの章句が数多く見られます。さらに、宗教の指導者たちも実際に、最もプラス思考を持つ人々だったと言えます。その例として、シーア派初代イマーム・アリーの娘に当たり、またシーア派3代目イマーム・ホサインの妹でもあった女性ゼイナブは、兄ホサインの殉教後、他人に侮辱され、無力な人間として貶められそうになったとき、毅然として「自分は、美しいものしか見たことがない」と答えたとされています。

イスラムの聖典コーランの内容には、プラス思考が明確に見て取れます。例えば、コーラン第93章、アッ・ゾハー章「朝」には、預言者の多くの苦悩が述べられるとともに、彼を励まし、預言者が人々を指導する責務を続行できるようエネルギーを与えるため、彼に与えた数多くの恩恵について述べられています。

さらに、プラス思考を持っていたもう1人の典型的な人物の例として、預言者ユーソフを挙げることができます。この偉人は、自らの実の兄たちに非常に苦しめられながらも、その父親に面会した際には、不平不満を漏らすことなく、それまでの全ての出来事のよい点に目をむけ、コーラン第12章、ユーソフ章、「ヨセフ」第100節において、次のように語っています。

“我が父よ、これが以前に私が見た夢の解釈である。我が主は、それを現実のものとなされた。誠に、彼は私に善を成し、牢獄から私をお引き出しになられた。また、悪魔が私と我が兄弟たちとの間に溝を作った後、主なる神は砂漠からあなた方をここに連れて来られた。主は、御望みの者には情け深くあられ、誠に全知にして英明であられる”

 

 

物事をプラスに捉えられる人は、常に自分が多大な恩恵に恵まれていると考え、今自分が持っているものや生きていることを神に感謝しています。このような人は、自分に何かが不足していることを嘆くのではなく、今あることに目を向け、その有り難味を感じることから、常にはつらつとしており、精神的に落ち着いています。

プラス思考を持つ人は、常に自分よりももっと厳しい状況に置かれた人と自分を比較し、そのような人々よりも自分のほうがはるかに恵まれていると考え、神に感謝します。これに対し、マイナス思考を持つ人は、自分よりも恵まれた人と自分を比較してしまうことから、今あることの有り難味を感じられず、精神的に不安定な状態にあります。

シーア派初代イマーム・アリーは、自らの教友の1人ハーレス・ハメダーニーに宛てた書簡において、物事をよい方向に捉えるよう呼びかけ、次のように述べています。

“あなたより恵まれていない人々のことを思い起こすがよい。あなたのその行為は、恩恵への感謝になる”

また、シーア派4代目イマーム・サッジャードの祈祷書サッジャーディーエにおいても、イマーム・サッジャードが自分が非常に恵まれた存在であることを自覚しており、これを神に感謝していたことが述べられています。この祈祷書の中の49番目の祈祷の15番目の章句には、次のように述べられています。

“今ここに、あなたからの大きな恩恵を受ける者が存在する」

このため、イスラム教徒は、自らの宗教の指導者たちと同様に、自分が今持っているものや今あることを思い起こし、少しでも多く自分の意識の中にプラス思考を造ろうとしています。

 

مثبت اندیشی

 

プラス思考を持つ人々のもう1つの特徴として、一生を通して常に希望を持ち、失望しないことが挙げられます。このような人は、暗黒の夜の闇の中にも黎明の光を見出し、日の出を確信しているのです。

崇高なる神も、人類に希望を持つよう呼びかけるとともに、コーランの様々な箇所において、逆境の後には必ずそれが打開されることを約束しています。その例として、コーラン第65章、アッ・タラーグ章、「離婚」第7節には次のように述べられています。

“神は、あらゆる困難の後に、安楽を授けてくださる”

このように、神は全人類に対し、苦境や逆境がいつまでも続くことはなく、どのような困難の後にも、必ずそれが打開され、安楽がもたらされることを確約しています。これこそはまさに、プラス思考をもつ人々が常に信じている事柄であり、このような考え方こそが自らの魂の健康の維持、さらには増進につながるのです。

 

次回もどうぞ、お楽しみに。

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