3月 19, 2018 20:33 Asia/Tokyo
  • 招かれざる客
    招かれざる客

この時間は、1967年のハリウッド映画、「招かれざる客」について見ていきましょう。

スタンリー・クレイマー監督の映画「招かれざる客」は、アメリカの黒人による公民権運動の末期、1967年に公開されたハリウッド映画です。アメリカの黒人による公民権運動は、黒人に対する人種差別を終わらせ、黒人が法律上、平等の権利を獲得するための運動で、1954年に始まり、1968年に終わりました。

 

黒人は公民権運動の中で、選挙権を手にしましたが、政治、社会、教育、保健衛生、職業といった多くの面で、差別は今も続いています。黒人の公民権運動によって新たに許された事柄のひとつは、黒人と白人の結婚です。それが、招かれざる客のテーマとなっています。

 

この映画は108分で、1967年のアカデミー賞で脚本賞と主演女優賞に輝きました。

 

招かれざる客の中で、スペンサー・トレイシーが演じるマット・ドレイトンは、サンフランシスコでリベラルな新聞社を経営しています。キャサリン・ヘップバーンが演じる妻のクリスティは、ギャラリーのオーナーを務めています。

 

ドレイトンの一家は、サンフランシスコで著名な白人です。娘のジョーイは、23歳で、ハワイを旅行中に黒人のジョン・ブレンティスと知り合います。ジョンは37歳の医師で、ジョーイは彼を自分の婚約者としてサンフランシスコに連れて帰ります。ジョン役を演じるのは、シドニー・ポワチエです。

 

ジョーイとジョンは、知り合って10日で結婚を誓いあいます。2人はサンフランシスコに行き、ジョーイの両親に自分たちの決意を報告しようとします。しかし、彼らがそのことを明らかにすると、家族全員がショックを受けます。白人のジョーイは母親を説得することに成功しますが、父親は黒人との結婚を受け入れるのをためらいます。

 

母のクリスティとマットの親友のライアン司教は、マットを説得しようとしますが、マットは新聞の中で自由を訴えていたにもかかわらず、白人のジョーイと黒人のジョンが結婚することは、二人のためにもよくないと考え、アメリカの社会で二人が幸せになることはないと考えます。

 

その後、ジョーイのアイデアでジョンの両親もサンフランシスコに招くことが決まります。ジョンの家族はジョーイを見てショックを受け、ジョンの父親は、白人との結婚は愚かなことだと言います。ジョンの両親はダントンの家にやって来て、そこで、ジョーイの母のクリスティーナとライアン司教と知り合います。

 

彼らの間で話し合いが繰り返された後、この結婚に強く反対していたマットとジョンの父親は、ジョーイとジョンの純粋な愛を目にし、二人が幸せになるか確信は持てないものの、この結婚を承諾します。

 

ジョンとジョーイの家族が知り合うシーン

 

映画「招かれざる客」は、アメリカの黒人による公民権運動の頃の白人と黒人の関係や彼らの結婚の問題をよく示しています。この映画は、1960年代末期の、この運動が高まっている頃に公開され、時代の波にうまく乗っていたと言えるでしょう。

 

招かれざる客が公開された頃、アメリカの17の州で、異なる人種同士の結婚は禁止されていたものの、この映画の公開から少しあとに、それらが解除されたと言われています。この法の解除が映画の公開だけによって決定されたとは言えないまでも、アメリカ社会の人種差別の撤廃への影響は否定できません。

 

ジョーイの父とジョン

 

招かれざる客の中で、ジョーイとジョンは、自分たちの結婚の決意をジョーイの両親に話します。27分からのシーンで、マットとクリスティはマットの書斎にいます。マットは椅子に座り、クリスティと娘たちの結婚について話し合っています。ジョンが書斎の扉をたたきます。ジョンは微笑み浮かべながらやって来て、マットの机の傍らに立ち、ジョーイの両親と話を始めます。

 

ジョンは、ジョーイの両親に対し、自分はジョーイの人間性に惹かれたが、もし二人の承諾が得られなければ結婚をあきらめるつもりであり、その決意はジョーイには話していないと言います。するとマットは、ジョーイは二人の承諾がなくても結婚するつもりだと言っていたと言います。しかしジョンは、それは正しくないことだと言います。クリスティは、なぜそのように決めたのかと聞きます。するとジョンは、すべてがあっという間に決まり、自分でも驚いていること、2週間前までは、このようなことは彼自身にとっても受け入れられないことであったこと、自分は肌の色の違いは重要ではないとは思わないが、ジョーイは違いはないと考えており、二人の結婚によってさまざまな問題が起きるのなら、自分にはそのような結婚はできないことを伝えました。

マットは、さまざまな問題とは何かと尋ねます。ジョンは頭を振りながら、あなたたちの行動だと言います。ジョーイは両親が大好きで、自分と結婚することによって、ジョーイと両親の間に深い溝ができてしまうことは自分にとって耐えがたいことだと言います。マットはジョンのそのような高潔な精神に心を打たれます。ジョンは、自分はジョーイを深く愛しており、必ず幸せにするが、両親の承諾のない結婚には意味がないと感じるため、二人の最終的な結論を教えてほしいと言います。マットはジョンに感謝します。ジョンはもし望まないのなら、ノーと言ってくれと言い、話を聞いてくれた礼を述べて部屋を出ます。

 

マットとクリスティのもとにジョンが訪れるシーンでは、マットの書斎に数多くの書籍と数々の賞状やトロフィーが並んでいるのが分かります。

 

このような映像は、マットの学術的、文化的な地位を物語っており、その一方で、彼の表面的な人格と実際の人格の違いを表しています。彼は表面的には人種の平等を訴えていますが、心の内では人種の違いにこだわり、反対しています。

 

ジョーイの両親とジョンの会談

 

興味深いのは、ジョーイが、サンフランシスコに戻る前までは、ジョンに対して、両親はきっとこの結婚に賛成してくれること、もしも反対されても自分の決意は変わらないことを告げていましたが、ジョンはジョーイの両親のもとを一人で訪れ、彼らの承諾を得ようとし、最終的な判断を彼らに任せることです。このことは、ジョンが問題を一人では解決できず、白人に従おうとしていることを物語っています。

 

 

実際、ジョンはクリスティと、特にマットに対し、ジョーイとの結婚について最終的な決断を下すように求めます。このようなジョンの行動は、1960年代にはまだ、黒人と白人の結婚に関する最終的な決定権が白人にあったことを示しています。言い換えれば、白人は、黒人の将来について大きな影響力を持っていたのです。

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